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第31話


第31話

"約束"


それから一同は、最大の脅威であるD-13が消えた事により、難なくその場の兵器達を殲滅する事に成功した。


「奴が引き下がってくれて良かったね…」


「同感…ってね」


一同は歩美を中心に、集合する。


「さて、この罠を仕組んだ命知らずは誰なのかしら?」


「全ての黒幕…でしょう?」


歩美の言葉に、彩が答える。


「やっぱり人為的に集められたって事だよね…?この兵器達…」


「その可能性が高いと思われます。誰かが兵器を集め、私達が建物に入った瞬間、爆弾を爆発させてシャッターを閉め、閉じ込める…。かなり、頭の回る人間の仕業ですね」


亜莉紗の言葉に答えたのは紗也香。


その言葉を聞いて、歩美は怪しい笑みを浮かべた。


「頭の回る人間…ね」


「…何か?」


恐る恐る、紗也香が訊く。


「面白い。それなら会ってみましょうか。その、頭の回る人間とやらに」


「待ってください。居場所もわからないのに、どうやって会うんですか?」


そう訊いてきた梨沙の頭を、歩美は軽く叩いてこう言った。


「この頭には一体何が入ってるの?そんな事、考えればわかるでしょう」


「(叩かなくたって良いじゃん…)」


「良い?まず…」


辺りをうろつき始める歩美。


「さっき紗也香が、"私達が建物に入った瞬間爆弾を起爆した"というような事を言っていたわね」


「確かに言いましたけど…」


「つまり、その人物はこの建物を監視できる場所に居ると言う事よ。その肝心の場所なんだけど…」


「あ、わかった。この建物のどっかにあるモニタールーム的な部屋とか?」


結衣の憶測を、歩美は一瞬で否定した。


「それは無いわね。そうだとしたら、そもそも爆弾を仕掛ける意味なんてないハズ。モニタールームには恐らく、シャッターを操作する装置があるからね」


「ぐぬぬ…」


「じゃあ、一体どこなんですか?」


そう訊いてきた梨沙を、再び叩く歩美。


「考えもせずに質問するのは止めなさい。叩くわよ?」


「(今叩いた…)」


「もしかして、この近くにある建物…ですか?」


そう言ったのは、玲奈だった。


「ご名答。私はそう思ってるわ。例をあげるなら…」


「隣の廃ビル」


「…やっぱりあなたは聡明ね。大神玲奈」


「どうも」


「どうして隣の廃ビルなの?反対側のコンビニでも良いんじゃね?」


そう言った姉の結衣には、露骨に呆れたような溜め息を吐く。


「…やっぱり、あんたはバカね」


「あぁ!?」


「考えてもみなさい。コンビニの中から、どう監視すると言うの?」


「そりゃあ勿論…」


「コンビニからは市役所の隔壁が邪魔で、こっちの様子が見れない。つまり、消去法で考えて、隣の廃ビルしか無いの」


玲奈の説明には、全員が納得した。


「そういう事。黒幕が誰なのかは知らないけれど、そいつは隣の廃ビルに居る可能性が高いわ。行くわよ」


「シャッターのせいで進めないわよ?」


出口を塞いでいる、分厚いシャッターを指差す彩。


「こんなもの、粉砕してしまえば問題ないわ。…紗也香」


「準備は終わってます」


「そう。なら、早くやりなさい」


「わかりました」


紗也香はシャッターの元へ行き、プラスチック爆弾の設置を始める。


「ねぇ明美さん。もしかしてシャッターを爆破するつもり?」


「わかっているなら訊かないで貰える?」


「あのさぁ…」


「皆さん、危険ですので離れていてください」


「え、嘘、本気でやるの…!?」


困惑する彩を引っ張って、シャッターから離れる歩美。


「黙って耳でも塞いでいなさい。…良いわよ、紗也香」


「了解。起爆します」


紗也香は自分を含めた全員がシャッターから離れた事を確認すると、手に持っている起爆スイッチを押した。


耳をつんざく程の轟音が鳴り響き、シャッターの辺りが硝煙で見えなくなる。


その硝煙が消え、視界が良くなると、破壊されたシャッターと外への出口が見えた。


「急ぐわよ。逃げられたりしたらたまったもんじゃないわ」


「乱暴な王女様だこと…」


ぼそっとそう呟いた彩を、きつい目つきで睨み付ける歩美。


「何か言ったかしら?」


「何も言っておりませんわよ~」


一同は市役所から脱出し、隣にある廃ビルへと向かった。




その頃…


白波町にある優子の自宅に、突然押し掛けた真希達一同。


疲労が限界まで溜まっていた一同はすぐに眠りについたが、3時間経過した現在午前5時。


ソファーで寝ていた久遠姉妹の2人が、不意に目を覚ました。


「…今何時だ?」


「5時…ちょっと過ぎ」


眠たそうに目をこすりながら、恵美が自分の携帯で時刻を確認する。


「5時か…。2度寝はキャンセルだな」


「へぇ、珍しいな。基本3度寝の姉貴が1発で起きるなんて」


「うっせー」


真希は自分の肩もたれ掛かっている愛美を起こさないようにソファーに寄りかからせた後、立ち上がって体を精一杯伸ばした。


「ふぃー…っと…。状況が状況でなけりゃ、最高の目覚めなんだがな」


「それは良かったわね」


声が聞こえた方に顔を向ける真希。


そこには、大量の食料が入っているビニール袋を両手に持っている優子が居た。


「差し入れか?悪ぃじゃねぇか」


「渋々よ。この子達に何も食べさせないワケにはいかないでしょう?」


「何でも良い。ありがとな」


「どういたしまして…」


優子はビニール袋を机の上に置き、ソファーに腰掛けた。


「…話の続きをしましょうか」


「頭の霧は晴れた…ってな面だな」


「まぁね…」


ビニール袋の中から缶コーヒーを2本取り出して、真希と恵美に渡す。


ついでに自分の分も取り出し、それを開けて一口で飲み干して、2人の方を見た。


「ふぅ…。それで、何がどうしたって?」


「昨晩の話聞いてなかったのか?お前」


「…眠かったし」


「そうかい…」


咳払いをして、話の流れを戻す真希。


「あー…どこから話しゃ良いんだ…?」


「榊原町にて異常事態発生…という所までは覚えてるわ」


「何だ、それなら話は早ぇや。そう言う事さ」


「…どういう事?」


「あ?」


「いや、どういう事よ?」


「あー面倒臭ぇ…。マジで面倒臭ぇ…」


「…ボクが説明しますね」


完全に説明する気が失せた真希に代わって、恵美が説明を始めた。


「今榊原町は、何者かが放った捕食者と呼ばれる生体兵器によって崩壊している最中なんです」


「捕食者…」


「はい。奴らの詳細はわかりませんが、ボク達が見ただけでも、繁殖能力や集団能力などは確認できました」


「………」


恵美の話を聞き、黙り込む優子。


「…どうしました?」


「いえ…。…ちょっとごめんなさい」


優子はそう言ってソファーから立ち上がり、ごちゃごちゃしている別の机の中から携帯電話を取り出し、誰かに電話を掛け始めた。


「どうしたんだ?あいつ…」


「さぁ…」


その様子を、呆然と見ているだけの久遠姉妹。


しばらくすると、優子の携帯から、女性の声が聞こえてきた。

『こんな時間に何なの…?』


「悪いわね。突然だけど、捕食者ってわかるわよね?」


『捕食者…あぁ、今部隊で話題のキーワードね』


「その捕食者が、榊原町に出現してるってのは知ってる?」


『えぇ。既にウチの人間が向かったわ。…でも』


「?」


『音沙汰無しなのよ』


「…え?」


『第4分隊が昨晩9時に作戦開始の連絡を入れた以降、応答しなくなったのよ』


「他には投入したの?』


『緊急編成された偵察部隊が出撃したわよ』


「結果は?」


『消息不明』


「………」


『あんた、今家に居るのよね?』


「えぇ。…それが?」


『いえ…。まさか、榊原町に居るとか言い出したりはしないかと思ってね』


「まさか。私は今、治療の為に休みを取ってるのよ?」


『冗談はよして頂戴。とっくに治ってるハズよ。どうせズル休みなんでしょう?』


「な、何を言っているのやら…。と、ところで、あんたの方こそどうなのよ?」


『まぁ、こうして電話ぐらいならできるようになったわ。順調に回復してる所よ』


「そう…良かったわ。それじゃあ、私はちょっと用事があるから、これで切るわね」


『用事?怪我人なのに?』


「びょ、病院に…ね?」


『…ふん。まぁ何でも良いわ。とにかく、くれぐれも変な気は起こさないで頂戴。じゃあね』


「えぇ。それじゃ…」


優子は電話を切ると、ソファーの所まで戻ってきた。


「どうやらウチの隊員が榊原町に居たらしいんだけど…見た?」


「…見てねぇな。私達が見た生きた人間は、ここに居る全員と榊原町に戻ってった数人、あとは銃持った知らねぇ連中が何人か居ただけだったな」


「銃を…?」


「えーと…。1人覚えてる。朝霧楓…っつってたな」


それを聞いた優子は、思わず真希を二度見する。


「…朝霧楓?」


「な、何だ…?」


「一緒に、これくらいの小銃を持った女の子も居なかった?」


「…あぁ、居たな。名前は忘れたが」


「そう…。彼女達も居るってワケね…」


「…?」


「こっちの話よ。…さて、これからどうするつもり?」


「ん、あぁ…。そうだな…」


真希はまだ寝ている少女達を見ながら、優子にこう言った。


「この子達を任せても良いか?」


「あんたはどうするの?」


「榊原町に戻る」


「…何ですって?」


「まだ仲間が残ってんだ。…やっぱり、放っておくワケにはいかねぇよ」


「丸腰で行くつもり?」


「私は問題ねぇ。それに、恵美が銃を持ってる」


歩美から譲ってもらった銃、HK417を、優子に見せる恵美。


優子はそれを見ただけで、恵美がその銃を誰から貰ったのかがわかった。


「…沢村明美に会ったのね?」


「何故それを?」


「この近辺でそんな銃を取り扱ってる人物は、彼女しか居ないもの」


「なるほどな」


相槌を打って立ち上がる真希と、それに倣って立ち上がる恵美。


「もう行くの?」


「あぁ。のんびりしてる時間はねぇんだ」


「そう…。ちょっと待ってて。時間は取らせないから」


「お、おう…」


優子は自分の寝室へ行き、1丁のハンドガンを持って戻ってきた。


「貸してあげるわ。流石に丸腰じゃどうにもならないでしょう?」


「おいおい。私は一般市民だぜ?そんな人間に銃貸したりして大丈夫なのかよ?」


「バレなきゃ良いのよ。…バレたらまずいけど」


「へっ…。まぁ、ありがたく拝借させて頂くよ」


「そうすると良いわ」


必要最低限の荷物だけ持ち、玄関に向かう久遠姉妹。


「本当にまずくなったら連絡して。何とか部隊に応援を要請してみるわ」


「それこそ懲戒処分になるんじゃねぇのか?」


「友人を亡くすよりはマシよ。…そっちも結構徹えるけどね」


「そりゃそうだよな…」


小さく笑って、玄関の扉に手を掛ける真希。


「久遠」


外に出る寸前で、優子が呼び止めた。


「何だ?」


「…その銃、絶対返しなさいよ?」


「わぁってるよ。心配すんな」


ぶっきらぼうに返事を返す真希であったが、優子の言葉の本当の意味を理解し、立ち止まる。


「…必ず、返しに来るよ」


「…えぇ」


久遠姉妹の2人は、昨晩乗り捨てたバスが置いてある場所へと歩き出した。


第31話 終




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