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第13話


第13話

"脱出の手段"


「へぇ…。やっぱりあなた達だったのね」


茜が楓と凛を見て、ニヤリと笑う。


「おや、何であんたらが居んねん。依頼か?」


「いえ、違うわ。晴香ちゃんって覚えてる?」


「…あぁ、あのお人好しな奴か?そいつがなんやねん」


「行方不明なのよ、3日前からね。だから、私達が探しにきたの」


「ほう、行方不明か…。確かに心配やな」


「この町には居ると思うんだけどねぇ…」


茜、楓、風香、凛の4人は、かつて共に戦った仲間という関係を持っていた。


茜と共にやってきた風香には、凛が話し掛ける。


「久しぶりだね。風香ちゃん」


「ご無沙汰です。…仕事ですか?」


「ん、まぁね…。とりあえず、またよろしく。風香ちゃん」


「…はい」


そして、梨沙と恵美は、彩と真希の元へと向かった。


「あらら、随分と立派な銃を持ってるじゃない。どうしたの?それ」


「あの人の知り合いの人に貰いまして…」


「知り合い?」


「明美さん…と言っていたような気がします」


「へぇ…明美ね…」


一方、真希は恵美がやってくるなり、突然彼女にヘッドロックをかける。


「てめぇコラ。私の言い付けを無視しやがったな」


「痛いから離してくれよ。折れたらどうするんだ」


「何か痛くなさそうだよなぁ?もっときつくしてやるよ」


「痛い痛い痛いッ!」


そこに、美由と恭香もやってくる。


「あれ、あなたは…」


学校では恵美としか殆ど関わらなかった梨沙は、恭香の事がうろ覚えだった。


「峰岸恭香です。陸上部の綾崎さんですよね?」


「えぇ。…よく知ってるわね」


「ふふふ…。陸上部のエースって、校内では有名ですよ?」


「へぇ…」


更に、恭香は恵美の事も知っているらしく、彼女にも話し掛ける。


「あなたは久遠恵美さんでしたよね?記憶では、同じ陸上部だったかと」


「よく覚えてるな…。キミは確か、書道部だったっけ?」


「えぇ、そうですよ。…会った事、ありましたっけ?」


「キミの去年の作品が受賞したじゃないか。それで名前を知ったのさ」


「ふふふ…。光栄です」


すると、恭香の笑い方が気になった、茜と風香と楓の3人が、こちらにやってきた。


「何だか聞いた事がある気がする笑い方ね」


「…誰だっけ」


「峰岸ちゃうか?風貌も似とるやないか」


やってきた3人に、恭香は微笑みかけながらこう言った。


「初めまして。峰岸恭香と申します」


「ほう、妹か。よう似とるわ」


「そっくりだね…」


「妹の方が…大きいわね…」


顔を見る楓と風香と、胸を見る茜。


3人は彼女に他愛も無い事を色々と訊いたが、恭子の事については一切触れなかった。



「さてと…。今後の事を考えましょうか」


一同の会話が一段落ついた所で、彩がそう切り出す。


「とりあえず、この子達を逃がした方が良くねぇか?」


真希はそう言って、大分減ってしまった生存者の少女達を見た。


「確かにそうね。それじゃ、私達はこの子達と一緒に脱出しましょうか。…あなた達はどうするの?」


茜、風香、凛、楓の4人に視線を移す彩。


「私達は晴香ちゃんを探すわ。その為に来たんだから」


と、茜が答える。


「ウチらも用事があるさかい。脱出はできへんな」


楓も、そう言った。


「そう…。なら、ここでお別れね」


「そうね。縁があったら、また会いましょう」


茜と風香は神社を出ていき、左に進んでいく。


楓と凛もその場を離れようとしたが、楓が何かを思い出し、立ち止まって梨沙の方を見た。


「…お前、綾崎梨沙か?」


「え?そうですけど…」


「そうか…。ほな、達者でな」


「…?」


困惑している梨沙を無視して、楓は凛と共に神社を出て右へと進んでいった。


「それじゃ、私達は脱出の方法を考えるとしましょう」


残った一同は彩の元に集まり、脱出についての話し合いを始める。


「(私、名乗ったっけ…?)」


梨沙は先程の自分を見ていた楓の鋭い目つきを、しばらく忘れる事ができなかった。



「車が必要だよな。どうする?学校に取りに行くか?」


真希の提案を、彩が否定する。


「いえ、全員が乗れるような車が欲しいわね」


「…と言うと?」


「まぁ、バス辺りが最適かしら」


「バス…ねぇ…」


辺りを見渡す真希。


当然、バスなど見当たらなかった。


「駅前に無かったっけな。さっき見た気がするよ」


「そういえば、あったわね」


明美から銃を貰った時に行った、駅前の事を思い出す恵美と梨沙。


「駅前…そう遠くはないわね」


「誰が取りに行くのですか?」


「そうね…」


恭香に訊かれ、メンバーを考える彩。


「(運転するのは私で良いとして、戦闘要員が欲しいわね。でも、分散しすぎたら、生存者達を守る人が居なくなっちゃうから…)」


悩みに悩んだ結果、彩は2人の人物を選抜した。


「梨沙ちゃんと恭香ちゃん。一緒に来て貰ってもいいかしら?」


「私…ですか?」


「私に限っては銃を持っていないのですが…」


当然、困惑する2人。


「大丈夫よ。2人は良いコンビになると思うわ」


「はぁ…」


「そうですか…」


彩の意図が全くわからない2人は、困惑しながらお互いの顔を見合った。



「さてと、早速行きましょうか。早い所脱出したいからね」


「あ、そういえば…」


思い出したように、何かを取り出す真希。


「…返すの忘れちまった」


それは、楓から借りた拳銃だった。


「良いんじゃないの?借りてても」


「そうか…?」


「彼女、良い武器を持ってたじゃない。きっと大丈夫よ」


「…んじゃ、借りとくか」


真希はその銃を、再びポケットにしまった。


「ボク達はここで待機してれば良いんですよね?」


恵美が彩に確認する。


「えぇ。…万が一の場合は、よろしく頼むわ」


「…はい」


力強く頷く恵美。


「真希も頼むわよ。戦えるのはあなた達姉妹だけなんだからね?」


「プレッシャーかけんなよ…。…まぁ、最善は尽くすさ」


「うふふ…。それじゃあね」


「おう」


お互いの腕をぶつけ合う2人。


一同は、2つのチームに分かれた。



「梨沙ちゃん。駅前はどんな様子だったの?」


「捕食者は見えませんでしたよ。…死んだ跡ならありましたけど」


「あらら…」


彩はそう遠くないと言ったものの、神社から駅前までは約30分程度かかる距離。


どちらかと言えば、遠い距離である。


「…にしても驚いたな。書道部の峰岸が、空手を習っていたなんて」


「ふふふ…。姉様に勧められたものでして。護身術は大切ですからね」


「ふーん…。何年くらいやってるの?」


「3年程…ですね」


「3年か…。ま、何か起きたらよろしく頼むわ」


「ふふふ…。勿論です」


歩き出してしばらく経つと、早速2体の患者と1体の捕食者が現れた。


「仲間割れを期待するのは…あまり良い作戦ではないわね。というワケで、やっちゃいなさい。あなた達」


「かしこまりました」


「(何か良いように使われてる気がするなぁ…)」


快諾する恭香と、少しぎこちなく銃を構える梨沙。


先に襲い掛かってきたのは、2体の患者だった。


「(ここは迎え撃った方が得策ですね…)」


恭香は身を構えて、敵の接近を静かに待つ。


先に掴み掛かろうとした患者は、恭香に首を蹴りつけられてその場に倒れた。


遅れて襲い掛かってきた患者にも、同じように首元に蹴りを入れる。


しかし、蹴り方は先程と異なり、驚く程に綺麗な後ろ回し蹴りだった。


「今の…凄いわね」


「後ろ回し蹴りは、一番練習してた技なんです」


可愛らしい笑みを浮かべながら、彩の方に振り返る恭香。


「うふふ…。なるほどね…」


その笑顔に釣られて、彩もまた笑みを浮かべた。


一方で、捕食者に銃を向けている梨沙の表情には、笑っている様子など一切見えない。


彼女の表情には、緊張が見え隠れしていた。


「(捕食者…。動きは素早いけど、真っ直ぐ走ってくるだけ。大丈夫…大丈夫よ…)」


手の震えを必死に抑えながら、捕食者の胸部に狙いを付ける。


捕食者は幾度と無く狙いからは外れたが、梨沙は一度も最初に定めた位置から狙いを逸らさない。


そして、捕食者の胸部と狙いが合わさった瞬間、梨沙は引き金を引いた。


発射された銃弾は心臓を貫き、捕食者を絶命させる。


「当たった…」


梨沙は銃弾が当たった事よりも、心臓を撃ち抜けた事に驚いた。


「お見事よ、梨沙ちゃん。その調子で頼むわね」


笑顔でそう言った彩を、梨沙は細目で見る。


「あの…」


「なーに?」


「雪平さんは…何もしないんですか?」


「私は司令兼偵察係よ。辺りの状況を観察して判断し、あなた達に司令を与える重要な係。残念だけど、戦闘には加われないわ。残念だけどね」


「そ、そうですか…」


上手く言いくるめたな。


梨沙は、そう思った。



その後、一同は中間地点となる商店街まで、敵と遭遇する事なく到着する。


しかしその商店街には、大量の捕食者が潜んでいた。


「あちこち居るわね…」


「肉屋の辺りが一番多い…?」


「幼体のエサは人間だけではない…という事でしょうか」


恭香の推測通り、肉屋に並んでいる商品は、ほとんどが幼体に喰い荒らされていた。


「…しばらく、肉は食べたくなくなったわ」


「ふふふ…。きっと、いいダイエットになりますよ?」


「笑えもしないわ…」


その時、徘徊していた捕食者の1体が、3人に気付く。


それと同時に、辺りの捕食者もこちらを見た。


「あらら…」


「に、逃げた方が良くないですか…?」


「そうしましょうかね…」


回れ右をして、その場を離れようとする3人。


しかし、背後からはいつの間にか、患者の集団が迫ってきていた。


「あらら…」


「あらら…じゃないですよ!どうするんですか!?」


「どうしましょう…」


「司令係でしたよね!?しっかりしてくださいよ!」


「緊急時の判断はあなたの役目よ」


「はぁ!?」


「あの…」


遠慮気味に、2人に呼び掛ける恭香。


「とりあえず逃げた方がよろしいのでは…?あの建物の階段から、屋根の上に行けそうですけど…」


「良い発見ね、恭香ちゃん。行くわよ!」


早速、その建物に向かって走り出す彩。


「…他に道は無さそうね」


「迎え撃つという選択も、無いワケではありませんよ?」


「勘弁してよ…」


「ふふふ…。行きましょう?」


「そうね…」


2人も彩を追って、その建物に走っていった。



「あらら…。結構高いわね」


階段を登りきった所で、屋根までの高さが自分の身長の倍はあるという事に気付く。


「ま、この手すりに足を掛ければ、登れるわね」


「そんな事しなくても、登れるじゃないですか」


「え?」


驚いてこちらに振り向いた彩を無視して、梨沙は屋根に向かって高く跳躍する。


そのまま屋根の一角に手を掛けて、彼女は自分の身長の倍はあると思われる高さを、いとも容易く登ってしまった。


「こんな感じで」


「さ、流石は陸上部のエースね…」


「高跳び、幅跳び、長距離、短距離…。彼女の記録を越せた人は、今も昔も榊原高校には居ないそうです…」


「ハイスペックすぎるわよ…」


彩と恭香は階段の手すりに足を掛け、普通によじ登る。


「…これぐらいも飛べないんですか?」


「自分の身長と同じ高さを飛べる方が、おかしいと思うけど…」


「…本当に?」


「素で驚かれても困るわね…」


一同は屋根の上から、睨み合っている捕食者達と患者達を見下ろした。


第13話 終




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