第八話 辿る道の先
高校三年の冬。
雪の知らせはまだないけれど、ペンを持つ手先が冷たい。
朝霞が目指すT大。
そこは、俺が簡単に「一緒に行く」といえるような場所じゃなかった。
おまけに、地元を離れて暮らす生活への不安はもっと大きかった。
ずっと朝霞の傍にいたかった。
なのに、追いつけない自分にいら立ちと腹立たしさを感じた。
順当にいけば、朝霞は春に東京へ行く。
「俊……」
俺は……。
俺は、この先どうしたいんだろう。
朝霞を追いかけるべきなんだろうか……。
「おい、俊……」
「え? あ、ごめん」
「話し聞いてないし」
「ごめんごめん、何だった?」
「問題全然進んでないよ?」
「ごめん、考え事してた」
「ずっと勉強ばっかりしてるからさ、クリスマスくらい息抜きしようよ」
「あ、あぁ……いいね」
「……俊、最近おかしい」
「え? そうか?」
「進路の話ししてから、ずっと」
「……そう……か?」
「まだ、引きずってるの?」
「朝霞は、どうなんだよ」
「何が?」
「離れて暮らすことだよ」
「平気なわけないじゃん」
「それじゃ」
「俊」
「私だって、俊と離れたくないしずっと一緒にいたい」
「……」
「でも、自分の夢も俊の夢も捨てたくない」
「俺の夢?」
「そうだよ、俊だって私と同じ夢があるでしょ」
「そうだけど……」
「私がいないと、叶えられない夢なの?」
「そんなことない」
「俊が本当に望んでいる夢なら、私がいなくても追いかけられるはずだろ」
「じゃあ、どうしろっていうんだよ」
「私は、私の夢を追いかける。俊は俊の夢を追いかけて」
「その後は?」
「その後のことは、それから決めればいい。まだ、何も始まっていないんだよ?」
「わかってる……」
「私は、離れて暮らしていても同じ夢を追いかけていると信じてる」
「同じ夢……?」
「弁護士になるんでしょ?」
「うん……」
「同じ夢を追いかけているなら、辿る道は繋がるはずだよ」
「そうかな……」
「私は、俊を信じる。だから俊も私を信じて」
俺は、ただ黙って頷くことしか出来なかった。




