第五話 夏の思い出
高校一年の一学期の時は、一日がとてつもなく長く感じていた。
あんなに苦しかったハズの毎日……。
なのに、気が付けば日は瞬く間に過ぎ去り、俺たちは二年生になっていた。
俺と朝霞は、別々のクラスになった。
それでも、朝霞との登下校はつづき学校の帰りには一緒に勉強をしている。
それが、いつの間にか当たり前になっていた。
夏休み前のある日、朝霞と家で勉強をしていた。
「ここの問題なんで、間違えた?」
「あぁ、うっかりミスだ……」
「答えはわかってる?」
「ここがこうなって、こうだろ?」
「なんだ、ちゃんと解ってるじゃん。問題きちんと読まないと……それじゃ、こっちやってみろ」
「わかった」
「ところで、今年の夏休みどうするの?」
「え? 俺?」
「そう、俊しかいないでしょ」
「別に……課題とバイトくらいかな」
「え!? 俊バイトしてたの?」
「バイトって言っても、朝の新聞配達だけどな」
「マジで?」
「朝霞が朝に迎えに来る前に、終わらせてるからな」
「え? いつからやってたんだ?」
「一年の秋からかな」
「へぇ~知らなかった。だから最近、ガタイが良くなってきたのか」
「そうか? 気のせいだろ」
恰好つけたくて、こんなこと言ったが本当は体力も筋力もそれなりについてきた。
朝霞と一緒にいるのに、いつまでもヘタレでいたくなかったから……。
「そうかなぁ?」
俺は、勉強のつづきをやりはじめる。
朝霞は、俺が問題を解いている間、スマホを取り出しイヤホンを耳につけた。
「なに、聞いてるの?」
「え? あぁ、音楽。 このバンド好きでさ」
「へぇ~」
「聞いてみるか?」
朝霞は、片方のイヤホンを俺の耳にそっとつけた。
「え?」
「ほら、聞いてみろっ」
俺はつけられたイヤホンをつけなおすようにして、カッと熱くなった耳を隠す。
イヤホンの音楽より、胸の鼓動のほうが大きく聞こえる。
だけど二人だけで共有したその曲は、軽快だけど愛おしく感じた。
「な? いいだろ?」
「このギターの音色、カッコイイな」
「今年、夏フェスで出るんだ」
「夏フェス?」
「いろんなバンドが集まって演奏するイベント。キッチンカーとかもいっぱい来るんだ」
「へぇ~」
「そうだ! 俊、夏休みに夏フェス一緒にいこうぜ!」
「ええ!?」
「いいじゃん! 絶対楽しいって! それから、夏休みはお祭りも行きたいし……」
こうして夏休みの計画は、朝霞がどんどん決めてしまい、結局夏休みは、ほぼ一緒に過ごすことになった。




