8話 春男の特徴
春男の特徴
オレはそんなに気が短い方ではないと自分では思っている。しかし、その日、浮かれていた反動でついムッと来た。
「私、春男さんのファンになったんです。この間、作品をはじめて読んで面白かったんです。」
その女性はいきなり言った。せっかく友人が開催してくれた合コンだというのに、なんでここでも春男の話をされなきゃいけないのか。友人のオレに対する紹介が悪かったのだ。
「彼は人気作家の春男っていう人の担当者なんだよ。」
おそらくだが、彼は春男の本を読んだことなど無いだろう。人気作家?オレは春男のファンを見るのは今までで、たった二回しかない。そして、これが二回目だ。
「ああ、そうなんだ。」
それ以外に何を言えるというのか。それでも笑って見せただけ自分をほめたい。
「あの、それで、春男さんの担当ですよね?春男さんってどんな方なんですか?本の後ろに写真も載ってないし、サイン会も握手会も開催されたこと、ないんですよね。」
「そういえば、そうですね。やっていません。本人がやりたがらないもので。」
「それで、どんな方なんですか?男性なんですよね?」
オレは考え込んだ。普段から会っている人を表現するのは難しいと思う。よっぽど早く聞きたかったのか、彼女は助け舟を出してくれた。
「あの、じゃあ、外見は。」
「そうだな。外見ねぇ。身長は170くらいかな。体重も80くらいで中肉中背だな。最近、ちょっと太ってきているけど。穏やかそうな顔はしているよ。オレと同じ年で、面倒大王。」
オレは言い切った。絶対に間違っていない。
「面倒大王?」
女性はきょとんとして言った。
「そう。なんでも、すぐに面倒って言うんだ。本当は一ヶ月に二回も合わなくてもいいんだけど、春男の場合、家まで取りに行かないと作品を送ってこないんだ。」
さすがに、女性も驚いたようだ。
「あの、それでよく作家がつとまりますね。だって、作品送ってこなかったら、廃業になっちゃうじゃないですか。」
「ああ、春男自身はいつ作家をやめてもいいみたい。」
「そんな!」
オレはこのとき、気がつくべきだった。女性というものは基本的におしゃべりだということに。もうすっかり、そんなことを言ったことさえ、忘れていた頃にオレは編集長から呼び出された。
「佐々木!こい!」
「なんですか?」
編集長は無言で雑誌を机の上に投げた。見てみると、見出しには。
『担当者は語った!人気作家、春男の面倒くさがりぶり!』
ご丁寧に、担当者であるオレのイニシャルまで入っていた。オレが真っ青になったのは言うまでもない。逆に編集長は顔を真っ赤にしていた。
「どういうことなんだ、これは!」
雷が落ちたかのように猛烈にオレは怒られた。ついでに、お詫びに土産を持って春男の家に行った。
春男は普段、読まないはずのその雑誌を読んでいたらしい。それで、怒るどころか、その雑誌の後ろの方に付いている占いコーナーを見てニヤニヤ笑って言った。
「君に、女難のそうが出ているらしいよ!」
こいつはこういう奴だ!




