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47話 夢から覚めて

夢から覚めて


 めずらしく、オレは外を当てもなく歩いていた。そんなことはめったにないと言っても過言ではない。いや、社会人男性が当てもなく、ふらふら歩いていては問題だろう。

あまり自分のために本屋に行くことはない。普段から文字を読んでばかりいるせいだろうか。それでもそこに足を運んだのは、あたらしい本屋が出来ていたからだった。ついでに、その前にはここに何の店が建っていたかを思い出そうとしたが、思い出せないでいた。

大きな二階建ての本屋。別に、なにかほしいものがあったわけはなかったが、とりあえず、足は新刊のコーナーに向かっていた。

 春男の言葉を急に思い出したのは、夢ということについて書かれた本のタイトルをそこで見かけたせいだろう。オレは、また本は増えるなぁと思いつつも、その本を購入し、帰ってから、その本を広げた。

「夢には、起きている時に見るものと、寝ているときに見るものがあって、寝ているときの夢にはいろんな種類があるらしいんだよ。記憶の整頓とか、おつげとか、思い込みとか。なかなか興味深い部分だと思うんだよねぇ。」

 そう、春男は言っていた。そのときも、オレは今度の作品に出てくるのかどうかが気になっていた。それを読み取ったのか、春男が先回りをして言った。

「いや、まだ解明されてないことのほうが多そうだから、作品には使わないよ。解明されたらわからないけどね。でも、実際に自分が見ているときにはこれが夢だなんて自覚、ほとんどないよねぇ。やっぱり夢が保存できればいいのに。」

 春男はにこやかに笑った。

「お前、前もそれを言ったぞ。」

 オレは、そう答えた自分の声で目が覚めた。

無意識に顔が微笑んでいたせいか、まるで、なにかに急に気がついたかのように、現実に戻っていった。目の前にあったものは、見慣れた自分の家の天井だった。どうやら、部屋の片隅にあるのソファで寝ていたようだ。

「そうか……いつのまにか、寝ていたのか。夢だったのか……。」

 思わず、自分に言い聞かせるように言っていた。

 手元には、たしかに自分が買った本があった。本のタイトルは、『夢の解読法』。どうやら、これを読みながら寝ていたようだ。それもまだ、少ししか読んでいない。ぱらぱらめくってみたが、どうも頭に入ってこないようだ。

「これのせいで、あんな夢を見たのかなぁ……。」

 一体、どこからが夢だったのかさえも思いだせない。なんだか、やけに長い夢を見ていたようだ。首を左右に揺らしてみた。だんだん、頭がはっきりしてきた。

「なんで、こんなもの、買ったのやら。」

しばらくぼんやりと本を見つめていると、聞いたことのある声がした。 

「あら、お目覚めでしたの?」

 振り返ると、そこには。

「ああ、春子。」

「どんな夢を見ていましたの?」

 そこに、妻の春子がお茶を持ってやってきた。オレも起き上がって、飲む。目を覚ますためか、氷が入っていて冷たい。

 オレはにっこりと笑って、言った。

「いや、君に会ったときの事を思い出していたんだ。ちょっと幸せな夢だったよ。やっと、原稿も書きあがったしね。もうすぐ、担当者が来るんだろう?」

「ええ。先ほど電話があって、もうすぐ受け取りに来るみたいですよ。よかったですね。どうにか間に合って。」


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