48話 第二回最終回
第二回の最終回
「ふぅ。」
オレは自分の担当者に原稿を渡して、ため息をついた。やっと一仕事が終わって、ちょっとほっとしているところだ。外を見ると、同じような景色が見えていた。
なんで、自分が担当者だった夢を見ていたのか。なんで、春子が男になって、しかも彼女の方が作家になっている夢を見たのか。よくわからない。しかし、きっと、本の中に出てくる登場人物のせいだろう。春子と出会って、結婚して、それから書き出した作品の主人公が、春男だ。
「まったく。これのせいだな。」
コンコン。ドアがノックされた。妻が顔を出す。いや、妻以外に顔を出されても困るというものだ。
「あなた。ちょっといいかしら?」
ためらいがちに、妻が言う。作品を書いているときはほとんど、この部屋に入ってくることはなかった。
「いいよ、なんだい?」
「あのね、いいことがあったの。」
「なんだい?」
「……。」
春子は顔を赤く染めて、しばらくもじもじしていたが、そっとオレの耳元でささやいた。オレはそれを聞いて目を丸くした。そして、無意識のうちに笑顔になっていた。
「子供?本当に?」
「ええ。今日、見てもらったの。」
「春子。」
なんて言ったらいいのか、何も思い浮かばずに、オレは春子をそっと抱きしめた。幸せだった。作品も出来上がったし、新婚だし、子供もできたし。
「よし、次の作品も頑張るぞー。」
オレは高く手をかかげた。
完
「……お前な……。」
オレは自然に握りこぶしを作っていた。
「なに?」
目の前で春男がにっこり笑っていた。
「オレを勝手にモデルにするなって言っているだろうが!あ?作品だけじゃ、飽きたらずに、こんなもんチョコチョコ、まだ書いていたのか!あきもせず!隣の住人まで持ち出して!」
「うん。なかなか暇つぶしにいいかなと思って。それに、彩ちゃんのほうは僕が作家だって知っていたけど、もう反対側の人は知らないんだよ?こう思っていても不思議はないじゃないか。」
「そういう問題じゃないんだ!誰が読むんだ、こんなもん!それに、読者が本気にしたらどうするんだ!ただでさえ、お前の読者には熱狂的なファンが多いんだぞ。ゴーストライター疑惑だって囁かれたことがあっただろうが!」
「最後か、最初にフィクションですって書いておけば大丈夫なんじゃない?」
こいつが死ぬ前に絶対に担当を辞めてやると再び、心底思った。
「それになんだ、この妻っていうのは!お前、いつから女になったんだ!オレはまだ独身だ。」
「えー。不満かぁ。じゃ、最終回だけ書き直そうかなぁ……。」
こいつの場合は、結構、本気で言っているところが怖い。
「そんなことより、次の作品、書け!」
今日もオレは春男を怒鳴りつけていた。




