34話 本のカバー
本のカバー
春男の家の本は半端無く多い。というよりも、紙が多い。新聞の切り抜きもファイルにすれば、かなりかさばっていくというものだ。
その本たちのほとんどが資料のためのものだが、みごとに崩れないように積み上げてあるものを、たまにやってくる春男の父親がきれいにしまっていくのが大抵の場合だ。分類は春男の父親によって決められていく。しかし、それに反対することはめったになかった。
それにしても、本にカバーがかけっぱなしなのがオレは気になってしょうがない。せっかく、きれいなシリーズの本でも、カバーの色が違うとどうも気になる。しかも、すぐにタイトルが見えない。
春男も自分でそのことを不便に思ったのか、カバーの上から本のタイトルを書いていた。
春男の父親も、それがに気になり出したらしく、カバーをはずして、うすい白いセロハンのようなもので、巻きだした。
「なんか、最近、これが多くなってないか?」
セロハンを巻いた本を見てオレが言った。うっすらとタイトルが見えるようになっていた。
「そうなんだ、カバーをはずすのは嫌だといったら、妥協案としてこれになったんだ。まぁ、全部がこうなるわけじゃないけど。」
「なんで、嫌なんだ?タイトルが見えないじゃないか。」
「だから、自筆で書いてあるんじゃないか。カバーはずしたら、本が汚れるだろう。」
どうやら、春男のこだわりというものらしい。一冊を手にとって、春男が言った。
「この店のカバーが好きなんだ。しっかり巻いてくれるから、取れにくいんだよ。ただ、ここの本屋が遠くてね。ひいきにしていたところがつぶれて、もっと奥に大きくなって新登場したんだけど、行くのが面倒になって。」
そんなことで、好きだったカバーをあきらめたのだろうか。はっきりいって、オレは本のカバーなど、気にした覚えがほとんど無い。巻いてくれるならそれでもいいし、なければないで気にしない。そんなに本を買わないからだろうか。これを全部はずしたら、ものすごい紙ゴミが出るだろうなと、俺はまったく関係ないことを考えていた。
「カバーなら、本用のがあるだろう?紙じゃなくて。」
「あるけど、あれはいま、読んでいる本のためだよ。どっかにでかけて、本を持って歩くわけじゃないんだから、いらないよ。」
そう春男はいった。そんなに本のカバーに愛着があったとは知らなかった。こんなに色も種類もバラバラだというのに。まったく統一感というものが無い。
「いろいろあったほうが面白いじゃないか。」
春男はそう言った。しかし、なかには、かかっていないものもある。
「かかってないのも、あるな。」
「ああ、それは、カバーはどうしますか?って、お店の人に聞かれなかったんだ。」
オレはあきれた。
「そんなもん、自分から言えばいいじゃないか、カバー、お願いしますって。」
「面倒で。してくれなかった本屋には行かないんだ。」
本当に、そんなにカバーが気に入っているのかわからなくなったオレだった。
そして、春男の本棚には、本が増えつづけている。本棚に入りきらないものは、本を入れるケースに入れられて積み上げられていく。くずれないように、ストッパーがついている。しかし、それが自分の身長並に高くなると、すぐ下に座るのが怖いというものだ。なにやら圧迫感を感じる。
使わなくなった資料は、ダンボール箱に詰められていくものもあるが、この際に絶対に使わないとは限らないわけで、捨てられもせずに積み上げられていくのだ。
オレはだんだん、家の床が抜けるのではないかと心配になってきている。倉庫に運ぶのは面倒だが、床が抜けるよりはましだ。今日も少しずつ、運び出している。




