表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/48

31話 クラス会

クラス会


 その日。めずらしく編集長は悩んでいた。というよりも、悩みを誰かに聞いてもらいたがっていた。なぜ、わかるか。本当に悩んでいる時は、静かに考え込む。しかし、今回は。

「うーん。」

 最初はうなっていることに気がつかなかったが、気がつくとものすごく気になってしょうがない。なにがあったのだろう。

「編集長、なんかあったの?さっきから、うなっているけど。」

「さぁ?私も気になってるんですけど、なんでしょうね?」

小声で隣の女の子に聞いても原因はよくわからない。直接聞いてみることにした。

「どうかしたんですか、編集長。」

 今日も温かめなお茶を飲みながら、編集長はあっさりと言った。どうやら、ずっと、誰かに聞いてもらいたかったようだ。

「実は今度、高校時代のクラス会があるんだ。」

編集長の高校時代といったら、いつのことやら、だいぶ古めの話になりそうだ。しかし、季節はずれとはいえ、そんなに悩むようなことだろうか?

「秋にですか?でも、いいんじゃないですか?なにをさっきから考えているんですか?」

「いや、みんな、私が出版の仕事をしていることを知っているんだ。それで、毎年、お勧めの本を聞かれるんだよ。」

「お勧めの本……。ああ、それなら、この間、賞を取った双子の本なんてどうですか?」

「あの子達は、賞を取った後だろう?」

 編集長は少し顔をしかめてみせた。

「そうですけど。」

「それじゃ、ダメなんだ。あまり注目されていない、それでも、これから注目されそうな作品を選ぶんだ。」

なぜなのか、どうもよくわからない。

「そうすると、どうなるんですか?」

「すると、賞を取った時に、その前から読んでいると周りに自慢ができるそうなんだ。」

……なんて、くだらない理由だ。しかし、上司に口が裂けてもそんなことはいえない。

「それで、誰の作品にしようか考え込んでるんですね?」

「それもあるが、同級生に、もう一人、同じ仕事をしているやつがいるんだ。」

「この会社じゃないわけですか?」

「ないわけだ。そいつと毎年の勝負をしてるんだ。いまのところ、七勝六敗なんだ!今度負けたら、また差が大きく開いてしまう。なにか、ないもんか?」

話を聞いていたのか、オレの隣の女の子が本を持ち出して、言い出した。

「この人のなんか、どうですか?」

話は彼女が引き継いで、オレは席に戻った。引出しを開けると、そのには、クラス会のお知らせがきていた。もちろん、オレのクラス会だ。行く時にポストに入っていたので、そのまま持ってきてしまった。行こうかどうしようか、迷っているところだ。

最初は春男が行くなら、一緒に行こうかと思ったが、春男は言った。

「一緒のクラスになったことなんか、ないじゃないか。」

オレはよく考えてみた。改めて言われると、一緒だった記憶が無い。そういえば、全学生時代に話したことのあるイベントは全部、学年体での行動の時のものばかりだった。

オレは、行こうか、どうしようか迷っていたクラス会に行くことにした。春男の名前は出さないで、本を薦めてみよう。そうしたら、少しはファンがつくかもしれない。

いい案を言い出した編集長に感謝しつつ、行くほうに、印をつけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ