31話 クラス会
クラス会
その日。めずらしく編集長は悩んでいた。というよりも、悩みを誰かに聞いてもらいたがっていた。なぜ、わかるか。本当に悩んでいる時は、静かに考え込む。しかし、今回は。
「うーん。」
最初はうなっていることに気がつかなかったが、気がつくとものすごく気になってしょうがない。なにがあったのだろう。
「編集長、なんかあったの?さっきから、うなっているけど。」
「さぁ?私も気になってるんですけど、なんでしょうね?」
小声で隣の女の子に聞いても原因はよくわからない。直接聞いてみることにした。
「どうかしたんですか、編集長。」
今日も温かめなお茶を飲みながら、編集長はあっさりと言った。どうやら、ずっと、誰かに聞いてもらいたかったようだ。
「実は今度、高校時代のクラス会があるんだ。」
編集長の高校時代といったら、いつのことやら、だいぶ古めの話になりそうだ。しかし、季節はずれとはいえ、そんなに悩むようなことだろうか?
「秋にですか?でも、いいんじゃないですか?なにをさっきから考えているんですか?」
「いや、みんな、私が出版の仕事をしていることを知っているんだ。それで、毎年、お勧めの本を聞かれるんだよ。」
「お勧めの本……。ああ、それなら、この間、賞を取った双子の本なんてどうですか?」
「あの子達は、賞を取った後だろう?」
編集長は少し顔をしかめてみせた。
「そうですけど。」
「それじゃ、ダメなんだ。あまり注目されていない、それでも、これから注目されそうな作品を選ぶんだ。」
なぜなのか、どうもよくわからない。
「そうすると、どうなるんですか?」
「すると、賞を取った時に、その前から読んでいると周りに自慢ができるそうなんだ。」
……なんて、くだらない理由だ。しかし、上司に口が裂けてもそんなことはいえない。
「それで、誰の作品にしようか考え込んでるんですね?」
「それもあるが、同級生に、もう一人、同じ仕事をしているやつがいるんだ。」
「この会社じゃないわけですか?」
「ないわけだ。そいつと毎年の勝負をしてるんだ。いまのところ、七勝六敗なんだ!今度負けたら、また差が大きく開いてしまう。なにか、ないもんか?」
話を聞いていたのか、オレの隣の女の子が本を持ち出して、言い出した。
「この人のなんか、どうですか?」
話は彼女が引き継いで、オレは席に戻った。引出しを開けると、そのには、クラス会のお知らせがきていた。もちろん、オレのクラス会だ。行く時にポストに入っていたので、そのまま持ってきてしまった。行こうかどうしようか、迷っているところだ。
最初は春男が行くなら、一緒に行こうかと思ったが、春男は言った。
「一緒のクラスになったことなんか、ないじゃないか。」
オレはよく考えてみた。改めて言われると、一緒だった記憶が無い。そういえば、全学生時代に話したことのあるイベントは全部、学年体での行動の時のものばかりだった。
オレは、行こうか、どうしようか迷っていたクラス会に行くことにした。春男の名前は出さないで、本を薦めてみよう。そうしたら、少しはファンがつくかもしれない。
いい案を言い出した編集長に感謝しつつ、行くほうに、印をつけた。




