28話 春男と温暖化
春男と温暖化
基本的に春男は物事に影響されやすい。それは他の人の本などの内容だけに留まらず、音楽やテレビのニュースにも影響されることがある。
オレがいるときは基本的には、それらの機械は動いていない。ところが、たまに春男の家に行くと、影響に気がつくときがある。その影響は、春男が書いてある作品にだけ、起こらなければいいと思っていた。作品に起きると手直しをする必要が出てくるからだ。急に主人公の標準語が方言交じりになったら、作品としては問題だ。しかし、実際には作品だけではなく、オレも影響を受けることがある。
「な、なんだぁ?」
春男の部屋に行き、俺は素っ頓狂な声を上げた。部屋に入ったのに、寒すぎる。コートは要らないが、もう一枚脱ぐまでに暖かくなっていなかった。暖かいことを期待しすぎていたせいか、よけいにそう思ったようだ。
「やぁ、ひさしぶり。」
オレにそういった春男自身も、パソコンの前に座っているのはいつもと同じだが、格好は変わっていた。だいぶ着込んでいる。膨れ具合がいつもと違うのだ。スリッパまで足首まである保温タイプのようなものを履いていた。
「どうしたんだ?暖房機の故障か?」
思わず見上げてみた。
「いや、そうじゃないんだけど、僕だけで暖房を使うのは温暖化の影響に拍車をかけているような気がしてね。洗濯物でもあれば別なんだけど。」
洗濯物があれば、それを乾かすためだと理由をつけて、暖房機を入れている。
オレはため息をついた。どうやら、今回はニュースに影響されたようだ。たまにこんな現象が春男には起きる。そんなに長くは続かないが、なにもこんなに寒い日に実行しなくてもいいんじゃないかとオレは思う。
「じゃ、オレが来たから暖房入れてくれ。」
「いいよ。」
すぐにスイッチを入れても、そんなに早くは暖かくならないというものだ。
「それで?温暖化のニュースでも見たのか?」
「よくわかったねぇ。」
春男は本当に感心したように言ったが、これだけ長い間、話していればそれなりにわかるというものだ。話す息までうっすら白い。今度からはひさしぶりに春男の家に来る前にはメールをして暖房機を入れておいて貰おうと思った。
「ま、いいことではあるがな。」
オレは勝手にお茶を暖めて飲んでいた。レンジは便利だ。問題は、この試みがあまり長く続かないことだ。これくらいじゃ、温暖化の防止には程遠いというものだ。まぁ、寒い冬の間はともかく、夏じゃなくてよかったとは思う。
「ただねぇ。」
春男は渋そうに言った。
「なんだ?」
「寒くて指が思ったように動かないのが問題でね、ちょっと作品の進むペースが遅れているんだけど。」
「なんだと!」
オレは慌てて、暖房機のリモコンを手にとると最大にまで上げた。同時に、ぬらしたタオルを軽くレンジに入れておしぼりのようにして、渡しながら言った。
「これで、暖めろ。絶対に期限にまでに書け!」
正直なところ、いまのオレには、地球規模の温暖化の問題よりも、この天気の寒さより、締め切りが守られることの方が大事なのだ。




