27話 新しい作家
新しい作家
春男にとって、オレが四人目の担当であるように、途中で担当者が変わることもある。逆にこっちにとってみれば、作家が変わるのだ。一番楽だった先生から新人に変わるというのは、なんどやっても慣れるものではないだろう。ましてや、年上ならまだしも、十年という一昔も若い子の相手では。
お母さんに通されて、居間で待っていると、ドアをあけて誰かが入ってきた。
「あなたが、春男さんの担当の方?」
その作家は、にっこりと笑って聞いた。しばらく見ていなかったようなキラキラした笑顔だった。けっして見とれていたわけではないが、オレの返事はワンテンポ遅れていた。
「……。あ、ハイ、そうですけど……。」
オレの目は確実に点になっていただろう。目の前にいた子は女の子だったからだ。天才、少年と言っていたような気がするのだが?
「あの。失礼ですが。尚人さんというのは、あなたですか?」
「ええ。半分ですけど。」
彼女はにっこりと微笑んだ。
「半分?と、いうのは?」
「お待たせしました。」
オレの目はもっと丸くなった。目の前にいる少女と同じような顔がそこにあったのだ。違っていたのは、スカートじゃなかったことだろうか。きれいにそっくりと言うわけではない。しばらくぽかんとしていたようだ。気がつくと、彼は彼女の横に座っていた。
「双子なんですね?」
あたりまえのことを思わず聞いていた。いや、きいたら三つ子なんてこともありうるかもない。しかし、そうではなかったようだ。彼らはにっこりと笑って頷いた。
「じゃ、さっき半分って言ったのは、尚人さんという、作家さんはお二人で構成されているんですね?」
二人の作家が一度にいるというのは、オレには初めてだった。そのせいか、どっちを向いて話していいものやら少々迷う。
「そうです。姉がアイディアを出して、僕が書いているんです。」
やっと納得がいった。半分の意味が早めにわかってよかった。
「担当してもらうのに、混乱がないように最初から伝えておいたほうがいいと思って。だから最初は来ていただいたんです。」
「助かります。」
俺は正直に言った。ついでに一番聞きたかったことを聞いた。
「あの。つまらないことを聞くようですが、春男の、いえ、作家の春男のファンというのは、どちらかが?」
「最初は弟が好きだったんですけど、いまでは私も好きです。」
ファンが二人!それも一気に!これは、帰ったら絶対に春男に話してやろうと思った。
オレは作品のことを聞きながら、反対に向こうからの春男に関する質問を受け付けていた。しかし、これがなかなか、難しい。なんせ、何も知らない人ならなにを言ってもいいだろうが、ファンだというからには、できるだけ逃すわけにはいかない。
春男の、イメージを壊さないように、それでいて、この作家たちが満足するように答えなきゃいけないのである。春男の本には、作品は載っているが、本人もプロフィールも写真さえもない。イメージというものしか資料がない状態なのだ。 悪く言わずに、かといってほめられるほどのところも、そんなにないというものだ。
「これから、先も春男さんはそのままなんでしょうか?」
「あの人が変わることなんて、絶対にないとは言えませんが、少なくとも、私が見始めてから変わったというようなことはありません。」
オレはそう締めくくった。これだけは絶対に言い切れる!




