25話 研究?
研究?
春男は、基本的にオレは変わっていると思う。そんなことは、もうとっくにわかっているはずなのに、たまにそれを強く思い知らされるのだ。
そして、どうしてこいつとよく一緒にいるのだろうかと考えてしまう。つい、この間もそうだ。
「見て、見て。」
春男がなにやら両手に持ってやってきた。よく見てみると、トイレ用の大きめな芳香剤だ。それも同じ大きさの、同じ香りのものだ。当然、会社も同じ物だろう。
「なんだ?」
「片方は、地面に置いておいて、もう片方は上に置いておいたんだ。そうしたら、下においてあるほうが先に無くなったんだよ。一緒にあけたのにね。」
なにやら、うれしげに春男は説明した。しかし。
「だから?」
「つまり、においは下から上に移動しているってことだよね?」
そうなるのだろうか?
「そうなのか?下の方が、におうから芳香剤が早くなくなっているだけじゃないのか?」
「……。そうか、そうなのかなぁ。んー?」
オレは、適当に言っただけだったが、春男は真剣に考え出した。それをみて、オレは自分がなにやら、まずいことを言ったような気分になった。
「いや、べつにそんなに、真剣に考えることでもないと思うぞ?」
「そうだね。」
そう、春男は言ったが、どうやら顔を見る限り、考えることはあきらめていないようだ。オレは首を振った。どうもこういうところは、いまだに理解できない。したくないともいえる。
そんなことがあったことさえも、オレはすっかり忘れていた。また、言われるまでは。
「見て、見て。」
そっちのほうをみると、春男は湿気取りを持っていた。やっぱり、同じ製品が二つのようだ。
「なんだ?」
「こっちはね、南側の湿気をとっていたやつ、もう反対側はね、北側の湿気。北側のほうが多いんだよ。同時にあけたんだ。」
「だから?」
「北側のほうが湿気ているってことだよね?」
「ここはな。」
「ほかは違うの?」
「しらん。調べたのか?」
「まだ。」
「じゃ、言い切れないだろう。季節によって変化するかもしれないし、国によって変わることだってあるだろう。」
「……。そうか。」
どうして、こいつはたまに、こんなことを実行しているのか。オレにはまったくわからない。
春男は、またなにやら、考え始めた。よけいなことを考えずに、作品を書くことだけに集中してほしいと願うのは、間違っているだろうか?
正しい答えよりも、これが一体どう結びついて、春男の作品に組み込まれるのか、そのほうがオレには気がかりだ。組み込まれないとはっきりしていれば、安心していられるが、そうとは言い切れないところが春男なのだ。
いつだって、こいつの場合は、油断は禁物だ。




