23話 カレンダー
カレンダー
春男の家の中にある、一番のメインの時計の下には、おおきなカレンダーが置いてある。たくさんメモができるように空白部分が多い、シンプルな物だ。
「この会社のが気に入っているんだよ。」
春男は、毎年、ここのカレンダーにしているようだ。
日付よりもメモのほうが幅をしめている。
そこには、たくさんのメモがされている。オレが伝えてある、実際よりも三日前の締め切りから、母親から送られた荷物のこと、でかける予定の美術展の始まりの日程などがあれこれ書かれている。
ついでに、どこからもらってきたのか、チケットの割引券も冷蔵庫には貼ってある。イベント関係はすでにカレンダーに書かれている。とにかく、たくさんの文字で埋まっている。春男の文字だけならまだしも、記号もある。赤丸やら、黒丸やら、星形まで。それにしても……。
「春男、お前、これ全部わかって書いているんだろうな?」
「なにが?ああ、カレンダーの記号?最初はきちんと覚えていたんだけどねぇ。最近、わからないのもいくつか交ざっている。」
やっぱり。この多さでは、そう考える方が普通だ。なんせ、基本的には白いカレンダーのはずが、白い部分のほうが見つかりにくい。
「でもねぇ、考えるのが面倒で。」
春男はそう言いきった。自分で書いておきながら。いくら、面倒の大王様でも、考えるのまで面倒になってきたのかと、オレはなんだか力が抜けた。
「困るのは、次の月になったときなんだ。どの記号をそのまま、来月まで持って行ったらいいのか、よくわからなくて。」
「もっていく?」
「そう。黒丸は、生ゴミの日なんだ。それはずっとあるものだから、来月のカレンダーにも書くだろう?でも、赤丸はなんなのか、思い出せないんだ。」
「他のゴミは?」
「星は同じゴミでもリサイクル系。ダイヤはなんかの集金日、うずまきは紙やインクの安売り。でも、赤丸は、なんなのか思い出せないんだよなぁ。」
「なんかのイベントか?」
「出かける日は、文字で書いてあるんだけど。それに誰でも知っているような国民的行事はすでに印刷で書かれているし。締め切りは、赤文字で書いてある。本として出る日は、青の文字で書いてあるし。最近は、結婚式も葬式もないしねぇ。誰かと会う約束なら、文字で書いてあるだろうし。まぁ、記号だから、そんなに重要じゃないんだろうけど。」
たしかに、それはそうかもしれない。
「手帳なんて、ないな?」
「ない。使わないし。一応、もっているけど、白紙のままだよ。」
「じゃ、日記を書いているとか?」
「面倒で。」
聞いたオレがバカだった。そのカレンダーを見ていて、ふと気がついたことがある。
「春男、もしかして、この赤丸、お前の親父さんの来た日付じゃないか?」
「そう?だっけ?」
「だって、この間、三日に来たときに、昨日髪を切ってもらったって、言っていたじゃないか。印が二日に書いてあるぞ。」
「そうか、そういや、そうだなぁ。」
どうやら、春男の記憶と結びついてきたらしい。春男の忘れっぽさからくる、メモ代わりのカレンダーだというのに、こんなことでいいんだろうか。オレの記憶ほうが、カレンダーよりも勝っているようだ。




