21話 春男のアパート
春男のアパート
春男の家は、実家は一軒やだが、今住んでいるところはアパートだ。しかし、アパートというのは、名前がそうだからであって、外見はともかく、中身がそうかと言うと、そうでもない。
外見は、二階立てで、あまりきれいとはいえないかもしれない。しかし、中は、結構広くてきれいだ。普段作業している隣の部屋に、ベッドを置けるくらいだ。
春男の話によると、ここの大家さんは趣味でこのアパートを経営しているそうだ。昔はもっと学生が大勢で使っていたような場所だったが、学生が減り、いっそのこと、と内装の改装を一気にして、一般的に貸し出したそうだ。
そのせいか、一つ一つの部屋が大きい。もともと、一人で住むような場所ではない。そのせいか、他の部屋は大抵、家族と一緒に住んでいる。春男の場合は、一人で住んでいるというのに、いっぱいいっぱいな感じがするのは、部屋いっぱいに囲んでいる本のせいだとオレは思っている。本棚だけで、三つもあるのだ。食器棚のほかに、机など、茶色尽くしだ。
となりの春男が普段、寝る部屋は壁にたくさんのお守りやら、よくわかないものが飾られている。タンスの上にもいろいろ置いてある。地震が起きたら、真っ先に落ちてくるだろうなぁと、見るたびにオレにはそう思える。
春男は、二階の真ん中に住んでいる。片方は、彩ちゃんと母親が親子二人で住んでいる。もう片方のとなりには夫婦が住んでいる。その夫のほうを春男はこう語る。
「最初、怖い世界の人かと思った。外見が怖いんだもん。」
「最初はって、今は?」
「近くで働いている大工さんだったんだ。挨拶に来てくれたんだよ。なかなか、礼儀正しい人だった。大工に顔は関係ないもんね。」
失礼な話だと思ったが、本当に実際にその人物を見ると、納得できる。普段着なら、絶対に誰もが避けて通るような顔をしていた。春男から聞いていなかったら、オレでも誤解しただろう。
春男の下は、部屋を共有している女子達が住んでいる。その右隣は、大家さんが住んでいる。と、いっても、あまりここに来ることはない。春男の情報によると、お嫁さんと喧嘩した時ようの場所だそうだ。
「なかなか、ユニークだと思うんだよね。」
春男は、その話を笑って聞いたそうだが、オレにはあまり笑えないような気がした。結構、本気でそんな理由なのかもしれない。
最後の一部屋には、近所で店を出している経営者が住んでいるといった。
「店?」
「うん。ハンバーガーやさん。君がよく、ここに来る時に買ってきてくれるだろう?」
「ああ、あそこか。よく、行くなぁ。」
「でもねぇ。こっちは回りのことをある程度知っているけど、僕だけは、部屋にこもってなにしているんだろうって思われているだろうなぁ。」
そのとおりだと思う。
「気にしているんだったら、でかけろよ。」
「だって、出かける用がないんだもん。」
こうである。春男がなぜ、こんなに回りに詳しいのか、それは普段、食べきれないものを近所に配っているからだ。しかし、全部が全部、配れるかというと、そうとは言い切れないところが問題なのだ。今日、俺がここに呼ばれたのも、そのせいだ。
「で?今日はなんだ?」
「団子なんだけど……。中身が辛いんだよ。キムチというか、唐辛子というか。」
オレはため息をついた。やっとこの部屋が、どうしてにおうのかがわかった。春男の母親の料理はかなり独創的だ。たしかに、これでは配れないだろう。オレは胃薬を買うことを決めた。




