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18話 器の大きさ

器の大きさ


 オレは最近、自分のこのメールが春男の外出を今まで以上に制限させているのではないかと思う。確実に春男の体調には悪影響を及ぼしているような気はする。しかし、何もせずに春男の家にほとんど毎日入り浸るには気が引けるのだ。そんないいわけをたくさんしながら、メールを送信した。

『なにか、買っていくものあるか?』

これで、オレが買っていくから、春男は買い物にでかけさえしなくなってきているのだ。

『消毒液、でっかい絆創膏がほしい』

……なんで、絆創膏なんだ?普段、春男が言ってくるのは大抵、肉や魚などの生ものだ。オレは慌てて、近くの薬局によって頼まれた物を買ってから春男の家に向かった。なんで、絆創膏?

「春男―」

ドアを開けようとすると、カギがかかっている。おかしいな、いつもは開いているのに……。疑問に思っていると、中からあいた。春男の隣に住んでいる小学生の彩ちゃんだ。

「あれ、どうしたの?」

「あの、消毒液買ってきてくれましたか?」

「ああ、これ?」

彩はそれを受取ると、急いで、部屋の中へと走っていった。何事かと、オレも早足で入っていくと、春男が足を出して床に座り込んでいた。

「なんだ?なにかあったのか?」

「んー、犬に噛まれたんだ。」

春男はあっさりと言った。しかし、消毒液がしみたのか顔はしかめている。

「噛まれた?」

「うん。今日珍しく、外に出たら、これだよ。」

春男はため息をついた。みてみると、しっかり歯形が付いている。ちょうど、ふくらはぎの横くらいだ。おおきな犬ではなかったようだ。歯形はそんなに大きくないが、すっかり肌の色は変わっている。

「なんで、噛まれたんだよ?」

「それが、よくわからないんだ。ただ、横を通り過ぎただけなのに、いきなり、がぶっと。で、そこに、学校帰りの彩ちゃんが通りかかって。怪我をすることなんてめったにないもんだから、なんにもなくて。」

 ピンポーン。インターホンがなった。

「あ、出て。」

 オレが玄関に出ると、おばさんが立っていた。見たことのない顔だ。誰だろう。

「あ。おばちゃん。」

 奥から出てきた、彩ちゃんが言った。おばさんはちょっとほっとしたように聞いた。

「彩ちゃん、どうだい?傷は。」

「あー、大丈夫ですよー。」

 声を聞きつけて春男がやってきた。痛くても、どうやら、歩くのには問題はないようだ。

「本当に、申し訳ありませんでした。いま、厳しく怒っておきましたので、どうか、保健所だけは……。」

 頭が床に着くのではないかというほど、そのおばさんは頭を深く下げた。

「いやいやいや、大丈夫ですから。心配しないでください。」

「あの、これ。おわびです。受取ってください。」

 オレには誰だか分らないおばちゃんがペコペコ頭を下げながら帰って行った。

「犬の飼い主か?」

「うん。あ、お菓子だ。」

 もらった包みを開けながらお菓子に目をキラキラさせている春男を見て、オレは思った。こいつはバカなのか、人としての器が大きいのだろうか。よくわからん、と。


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