15話 春男の目玉の中
春男の目玉の中
ときどき、付き合わされて、というよりも、作品を仕上げるための情報収集というような理由をつけて、春男は出かける。一人ででかければいいものを、なぜか、オレを誘う。断ると、脅す。
「あー、作品できないかもなぁー。」
最近、春男はすっかり知能犯的になっている。それも、オレに本当に用事があればいいが、ないのだからしょうがない。オレは春男とでかけるのだ。
「それで?今日はどこに行くんだ?」
「デパートでやっている沖縄フェア。美味しそうなものでも売っているかもしれないし。」
それが、どう作品に結びつくのかはあえて、聞かないことにした。聞くだけ無駄になりそうな気がするからだ。
しかし、春男と何度か出かけて、気がついたことがある。春男は人とたまに見ているところが違う、というより、おかしい部分がある。
服屋を除いて、服を見ているのかと思えば、マネキンがつけていたアクセサリーを見ていた。帽子屋を除いて、帽子を見ているのかと思ったら、飾ってあるディスプレイの背景を見ていた。普通に、鞄を売っている店で、鞄を見ていることもあるが、そっちのほうが少ないくらいだ。まったくもって、春男の目はどこを見ているのかわからない。それでいて、見たものを覚えているかというと、そんなことは全然ないところも疑問だ。むしろ、一緒に歩いていたオレの方が覚えているくらいだ。
「あれ?」
急に春男が言い出した。春男の見つめるほうには女性の二人組みがいた。
「知りあいか?」
「うん。泉。」
春男が呼びかけると、女性たちは振り向いた。片方の女性も気がついたらしい。
「あー、おひさしぶりー。」
女性達の二人組みの片方が言った。
「なに、しているんだ?」
「沖縄フェアからの帰り。」
「ああ、泉も行ったのか。僕達はこれからいくところだ。面白かった?」
「うん。お面とかあったよ。」
お面?今回の沖縄関係の飲食フェアだったような気がするのはオレだけだろうか?
「お、そうか、わかった。じゃ、またな。」
「またねぇ。」
オレは無言のもまま、会釈だけをした。彼女達が去ってから聞いてみた。
「知りあいか?」
「うん。同じ大学だったんだ。」
「そうか。」
それじゃ、オレが知らないのもおかしくはない。沖縄フェアは間違いなく、飲食関係のものばかりだった。
「あ、ホントだ。」
春男がなにやら、上の方を見ている。オレも同じ方向を見てみた。
「なにが?あー、お面だな。」
「ねー。」
確かに、ずらりと並んだ店の一つの隅にお面がおかれていた。特徴的といえばそうかもしれない。しかし、通常はおかしやら、足元やらを見ているもので、気がつかないだろう。オレも春男に言われるまで気がつかなかった。
そして思った。よくあの女性は気がついたものだと。こんなところを見ているのは、春男くらいなものだと信じていたが、そうでもないようだ。
さて、春男はオレの倍はなにやら、いろいろ買い込んだ。すっかり両手がふさがっている。
「買いすぎだ。」
「もってー。」
オレため息をついた。見ただけで重そうだ。
「もっと、考えて買えよ!」




