45-1・模擬戦の仕上げ~セラフの秘策
-夜・運動公園-
紅葉、美穂、バルミィ、麻由、ジャンヌ、撮影係の真奈、メンバー全員が集合をする。
「今日の模擬戦は、私と紅葉・・・ですよね?美穂さん」
「えっ?急に?」 「ばるっ?」 「ク~チャンとマユユ?」
「んぁっ?そ~なの、ミホ?」
麻由が今日の特訓内容を告げ、紅葉&バル&ジャンヌ&真奈が一斉に美穂を見る。美穂は麻由の発言に驚くことなく笑みを浮かべた。
「いつ解った!?」
「美穂さんに『光の力禁止』を課せられた日の特訓のあとです。」
「へぇ~・・・道理で昨日の動きに迷いが無かったわけだ。」
「目的は、私と紅葉が真剣勝負をして、
紅葉にウルティマバスターの弱点を克服してもらうため、
ただし、元から備わっている力ではなく、
私は妖力、紅葉は理力で!・・・ですよね」
「そ~ゆ~こと!
麻由は冨久との戦いで、冨久のウルティマバスターを破っている。
紅葉がウルティマバスターの弱点を克服するには、ちょうど良い対戦相手だ。
ただし、麻由が光、紅葉が闇で戦ったら、お互いに致命傷になりかねない。
だから、お互いにダメージが少なくて済む力を使って、ガチで戦ってもらう!」
「その案だと、麻由が妖力が使えないままだったら、
どうするつもりだったばる?」
「そん時は、あたしが紅葉と戦うつもりだったけど、
上手く行けば何とかなるかな~って思ってさ」
美穂は、麻由が特訓に参加をした時点で、この案を思い付いた。麻由は、器用に理力のコントロールが出来るし、敵を倒す心構えは弱いが、仲間をサポートする意志は強い。美穂の課題が「紅葉のため」と気付けば「妖力を会得する可能性は高い」と期待していた。
「紅葉は元々、状況次第で光の力を使うからな。
これで、麻由が闇の力を使えるようになれば、今回に限らず、
いつでも、お互いにダメージ最小限で本気で戦えるようになるってわけさ。
今日の課題は、麻由はウルティマバスターを破ること!
紅葉はウルティマバスター破りを凌ぐこと!」
理解をした紅葉が、挑戦的な笑みを浮かべ、数歩前に進んでYスマホを取り出す。既に臨戦態勢を整えていた麻由が、Hスマホを握りしめて構える。2人が互いの眼を見て頷き合う。
「げ~んそうっ!」 「幻装っ!」
妖幻ファイターゲンジ、聖幻ファイターセラフ登場!美穂&バルミィ&ジャンヌと撮影係の真奈が、並んで見守る。
「なぁ、バルミィ?」
「どうしたばる?」
「どっちが勝つと思う?」
「う~~~~ん・・・紅葉が勝つばるかな。
麻由の潜在力と努力は認めるけど、まだ戦闘経験値に差がありすぎるばる」
「そっか。やっぱ、まだ紅葉か。
だったら、ちょっとばかし、麻由を贔屓すっかな」
美穂の予想も「ゲンジが有利」と答えを出している。僅か1日で妖力変換をクリアしたセラフの才能は大した物だが、まだまだ問題点は多い。ゲンジは常に3割の出力で理力を発揮できるが、セラフは通常時で1割の出力、使役妖怪を変換装置にしてようやく3割の出力になる。つまり、セラフがゲンジと互角の出力を発揮するには、常にエンエンラを装備しなければならず、カマイタチの真空波や絡新婦の糸を使えない。使用可能な闘方は、弓矢と腰の引けた接近戦のみ。接近戦での攻撃性が増したゲンジに対して、セラフの「技の多彩」という長所が機能しないのだ。
「麻由っ!それじゃ、応用力が効かなくなる!
まだ、妖怪で力を変換するタイミングじゃない!
しばらくは、別の方法で、紅葉の接近戦から逃げろ!」
セラフは、エンエンラの妖力変換システムを召喚してゲンジを迎撃するつもりだったが、美穂の指示を受けて慌てて切り替える。数歩後退して間合いを空けながら、Hスマホ画面に“ぬりかべ”と書き込んで、召喚したキーホルダーを左腕プロテクターに取り付けた。
「はぁぁっっ!」
セラフが左掌を正面に翳して理力を集中させると、ヌリカベ型の巨大な盾が打ち出されて、巴薙刀を装備して突進をしてきたゲンジに激突!
「ふんげぇぇぇっっっ!!!」
「・・・・・あっ!」
猛スピードで迫ってきた巨大盾に弾き飛ばされたゲンジが、空高く飛んで地面に落ちた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×たくさん
「麻由ちゃん、強すぎ。もう決着?」
「はい、マスター。ただし、マユユの反則負けです」
「早速、テンパって、普通に光の力を放出しちゃったばる。
せっかく絶好調って感じだったのに、長続きしないばるね~」
「こ~ゆ~ところが、アイツ(麻由)のダメなところなんだよな」
今のが攻撃技ではなく防御技で良かった。理力100%出力で攻撃技を放っていたら、ゲンジが大ダメージを受けて明日の再戦に影響が出ていただろう。
「接近戦に自信を持ちすぎて、バカ正直に突っ込んでいった紅葉も、
マヌケすぎるんだけどな。
アレじゃ、明日の再戦でも瞬殺されんぞ。」
ゲンジ&セラフ共に、良い感じに成長したと思ってたのに、なんてザマだ。
-15分後-
模擬戦リスタート。突発的に指示を出すとテンパるので、美穂は休憩時間のうちに「ゲンジの攻略法」を麻由に伝授しておいた。
「げ~んそうっ!」 「幻装っ!」
ゲンジ&セラフ登場!ゲンジは巴薙刀を構え、飛び道具に警戒をしつつセラフに突進をする!一方のセラフは、出力1割の妖力では巨大な盾を出現させて高速で飛ばす荒技なんて出来ず、1mくらいの盾を手元で維持したまま、防御に専念してゲンジの突きを凌ぐ!ゲンジにネメシスや刃吾幻のようなスキルがあれば、セラフの盾の隙を突けるのだろう。だが今のゲンジの薙刀スキルでは、防御に徹したセラフの盾を抜くことが出来ない!
攻撃が思うように届かずに苛立ってきたゲンジは、力任せの攻撃が目立つようになる!すると、セラフは数歩後退して間合いを空け、小太刀にカマイタチの能力を付加した真空波を放った!「間近ではひたすら防御」「少し離れたら真空波で牽制」は、美穂が伝授した作戦だ!ゲンジは一発目の真空波は理力を纏った薙刀の切っ先で相殺するが、振り回しに無駄が多い為に2発目を喰らって弾き飛ばされる!
「んぁぁっ!マユばっかりヒントもらってズルぃっ!」
セラフに接近するには、パワーで盾を破壊するか、スピードで間隙を突くかのどちらかになる。
「よぉし、こっちだっ!」
パワー重視でスピードが落ちたら、間合いを空けられてしまう!ならば、スピードで撹乱する!
ゲンジは化け猫を召喚して合体!ゲンジねこフォームにチェンジして「にゃんにゃん」と叫び、素早く左右に飛び回りながらセラフに接近をする!・・・が、セラフが弓に絡新婦を付加した蜘蛛の糸を射て張り巡らせたので、ねこゲンジは糸に絡まってしまう。もちろん、美穂の入れ知恵だ。くまフォームの場合は「足が遅いから逃げ回れ」とアドバイスされている。
「ふにゃ~~~・・・動けないにゃ~~~」
相手を倒すのが目的ではないので、セラフはゲンジが絡まった糸を外すまでは何もせずに待つ。糸から脱出したゲンジは「美穂に入れ知恵された麻由は接近戦に応じない」と判断した。
「だったら、ミホの予想してない攻撃で、接近できるチャンスを作るっ!」
6本のステーキナイフを召喚して念を込め、セラフに向かって投擲した!ゲンジの唯一の牽制技・子供が落書きをしたステーキナイフ発動!理力を纏った6本のナイフが、高速で不規則だけど、全部並んで同じ軌道でセラフに向かって飛んで来た!セラフは横飛びで回避するが、6本のナイフは旋回して軌道を変えて、再びセラフに向かって飛んでくる!
「今だっ!とぇぇぇっっっ!!」
さらに、薙刀を構えたゲンジがセラフに向かって突進をする!ナイフを迎撃すれば、その隙にゲンジに懐に飛び込まれる!ゲンジに対応すれば、死角から来るナイフに防御を崩される!この展開の対処法は、美穂からは入れ知恵されていない!
「ハァァァッッッッッ!!」
セラフは、ゲンジと6本のナイフとの距離を視認しながら大きく距離を空け、エンエンラのキーホルダーを召喚してプロテクターの丹田部にセット!セラフの妖気出力量が3倍に跳ね上がり、雰囲気が変わる!
「麻由が動いたばるっ!」
「アイツ(麻由)、勝負に出るつもりだな!」
弓を構えて妖力を高め、闇色の矢を番えて弦を目一杯に引きしぼり、向かってくるナイフに向けて射た!セラフの意思通りに飛ぶ念糸の矢が発動!並んで飛ぶ6本のナイフを弾き、大きく旋回をして方向を変え、突進中のゲンジ目掛けて飛んでいく!
「んぁぁぁっっっ!!」
ゲンジはギリギリまで矢を引き付け、理力で満たされた巴薙刀を振るった!しかし、矢はセラフの意思に従ってゲンジの眼前で急に下向きに軌道を変え、巴薙刀の切っ先を回避してゲンジの足元の地面に突き刺さる!
「その矢は紅葉を狙ったわけではありません!地の曼荼羅っ!蓮華っっ!!!」
ゲンジの足元に曼荼羅が出現して、闇の花弁が舞う嵐がゲンジを包んだ!慌てて両腕をクロスさせてガードするゲンジ!舞い散る花弁が刃となってゲンジにダメージを与え、吹き荒れる嵐がゲンジの動きを止めてジワジワと空中に押し上げる!
しかし、それだけでは終わらず、セラフは、もう1本の矢をゲンジの頭上に向かって打ち出した!
「はぁぁっっっっ!!天の曼荼羅っ!法雨っっ!!!」
「や、やばいっっ!!」
放たれた闇の矢はゲンジの頭上高くで停止して、曼荼羅を形作って無数の闇の雨を降らせる!天からの闇の雨と、地からの闇の嵐、全方向ゆえに防御不能で脱出不能な刃が、ゲンジの全身にダメージを与える!
嵐に阻まれて自力では満足に動くことも出来ない!このままダメージを受け続けたら、ゲンジの敗北は確実!体を嵐の中から押し出す推進力が必要!暴風に抗いながらYスマホを取り出して、画面を指でなぞる!
「んぁぁっっっっ!!!ウルティマバスタァァッッッ!!!!」
ゲンジの正面に八卦先天図が出現!身を低くして飛び込んだ!理力を推進力にした神鳥が出現をして、闇の雨と花弁を掻き分けながら嵐の中から脱出をする!
美穂達は、必殺技を脱出の為に使用したゲンジの発想に驚く。だが、同時に、セラフの狙いにも気付いた。
「勝負あり・・・ばるね。」
「・・・だな。スゲー技。アイツ(麻由)、案外えげつね~な!」
「マユユの天と地の曼荼羅は、次の為の布石だったんだな」
今回の模擬戦でのセラフ(麻由)の課題は、ウルティマバスターを破ること。いくら弱点が判明した奥義でも、いつ発動するか解らなければ破るのは難しい。至近距離で発動されれば弱点に廻り込むことは不可能。ならば、距離に余裕のある状態で、発動に追い込めば良い。天地の曼荼羅は、空を飛べるバルミィの動きすら止めたのだから、ゲンジを脱出不能に追い込む自信はあった。そして、脱出不能から脱出する方法は、1つしか無いと確信していた。
「掛かりましたね、紅葉っ!!」
「げげっ!!しまったぁっっ!!」
神鳥が曼荼羅の雨と嵐から飛び出した時、セラフは跳び蹴りの体勢で宙を飛んでいた!妖力を纏ったセラフの蹴りが、神鳥のガラ空きの背中を狙って突っ込んでくる!旋回時の神鳥ではなく、通常飛行の神鳥の背中を狙う!これが、サトリとの特訓で得た技の発展型だ!
「はぁぁぁぁっっっっっっ!!!ダークネスキィィィッッッッック!!!!!」
「んぁぁぁっっっ!!!!・・・負けるっ!!!」
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怒ると怖いけど実は優しい美穂。いつも完璧で頼もしいバルミィ。シッカリ者だけど泣き虫の麻由。ピンチになると必ず駆け付けてくるジャンヌ。頑張り屋の真奈。皆、紅葉にとっては大切な友達。強さや学力による差異は考えたことが無い。皆と一緒に、笑ったり泣いたり、紅葉は、それが嬉しい。
だけど、心の何処かで不安があった。美穂とジャンヌとバルミィは、紅葉が戦いの世界に踏み込む前から戦いの世界に居た経験者達だ。だけど麻由は違う。紅葉よりも、5ヶ月も遅く戦いの世界に足を踏み入れた。最初は何も出来なかったのに、急成長をしている。直ぐに泣くクセに、立ち上がる度に強くなる。いつか、追い越されてしまうのではないか?紅葉は「麻由スゲー」と口にしながら、漠然とした焦りを感じていた。
紅葉は、仲間達と一緒にいることが、一番楽しい。優劣なんて関係無く、皆、大切な仲間だ。
「でもっ!」
今、初めて思った。麻由はかけがえのない仲間。だけど・・・。
光と闇とか相克なんて関係無い。
大切な仲間だけど、ただ純粋に・・・負けたくない。
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