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43-3・真奈の焦り~特訓2日目~麻由と海跳

-鶴辺田荘(美穂のアパート)-


 到着した真奈が美穂の部屋の窓を見上げるが、電気が点いていない。2階に上がって玄関戸をノックするが反応は無い。玄関脇の小窓から覗き込むが、人が動いてる気配は無さそうだ。


「留守?それとも、もう寝ちゃった?」


 駐輪場を眺めたら美穂の原チャが無い。LINE画面を確認したが、まだ既読にはなっていない。


「美穂さん、バイトはしてないはずだけど、どこに行っちゃったんだろう?

 アナザービーストと戦ってる?

 それとも、ヒミツの彼氏ができて、お泊まりに行っちゃった?」


 仕方なく帰ろうとしたら、バイクの排気音が聞こえて美穂の乗る原チャが戻ってきた。真奈に気付かずに駐輪場に行って原チャを止めて降りたので、駆け寄っていく。


「美穂さんっ!」

「・・・ん?真奈か?何でここに?」

「チョット相談があって。」

「悪い、野暮用で疲れた。相談は明日にしてもらえないか?」


 真奈は「紅葉の相談」と言おうとしたが、ヘルメットを脱いだ美穂の表情を見て、言葉を止めた。メチャクチャ疲れた表情をしている。


「あ、あのっ・・・大丈夫ですか?」

「もちろん。

 今日は帰れ。こんな時間に出歩いてちゃ、居候先のオジサンに心配されるぞ」

「・・・は、はい」


 美穂は、背中越しに真奈に手を振って階段を上がり、部屋に入ってしまう。真奈は美穂が何かを隠しているのを勘付いたが、同時に「聞くな」と思っているのが聞こえた気がして、追及ができなかった。美穂への相談を諦めて、自転車に乗って帰宅をする。

 部屋に戻った美穂は、大きな溜息をついて力尽きたようにして座り込んだ。できるだけバレないように取り繕ったが、無理して普通に振る舞ってた事を気付かれたように思う。


「やれやれ。勉強してる余力は、ちょっと無さそう・・・だな」


 エリス(鏡像の美穂)戦で初めてヴァルカンを使った時から倦怠感はあったが、今日はヴァルカンを使いっぱなしだった所為か、消耗が凄まじい。

 再戦でゲンジが負けても「変身アイテムやUFOを取られないかもしれない」と予想はしているが、確証は無い。何よりも、「負けても良いや」というスタンスは性に合わない。紅葉を煽ってしまった責任は感じている。だから、紅葉の戦闘スキルを上げて、どうにか勝たせたい。


「あと6日間(今日を含む)・・・あたしの方がヤバそうだな」


 特訓に集中する為に体力を維持しなきゃ成らない。美穂はふらついた足取りで布団に向かって歩き、つっ伏すようにして眠りに着いた。




-翌日・優麗高2B-


 紅葉が美穂から指示された事は「必殺技は授業中に考えろ」だったので、真面目な紅葉(?)は先生の講義なんて完全に無視して、必殺技ばかり考えていた。ノートに書かれた「ちょうスゲーパンチ」「ものすげーキック」「とてつもない頭突き」「ダイナミックバスター」「地球爆発アタック」「宇宙クラッシュ」等々の文字とニラメッコをしている。


(ん~~~~・・・どうしよっかな~?)


 新必殺技を会得したら、どんなネーミングにするべきか悩ましい。ちなみに、新必殺技へのアプローチは、全く考えていない。




-夜・運動公園-


 紅葉が到着したら、美穂&バルミィが待っていた。早速ポケットからサマナーホルダを取り出して、原チャリのバックミラーに向ける。


「じゃ、始めようか・・・・変身っ」

「ぅんっ・・・・げ~んそうっ!!」


 昨日と同じく、ネメシスVになってヴァルカンレイピアを構える。ゲンジ(紅葉)は巴薙刀を召喚して、昨日のアドバイスを思い出しながら構えた。ネメシスV(美穂)は、その立ち姿を満足そうに眺める。


「へえ~っ、ちゃんと覚えてたじゃん」

「ぁぁぁっ!!バカにしたっ!!そんなに、ぉバカぢゃなぃもんっ!!

 今日ゎ、ミホから1本取るからねっ!!」

「上等・・・・その意気で、かかってきな!」


 ゲンジが気合い(奇声)を発して突っかかり、ネメシスVが受ける。正しい持ち方で攻撃に重みが増し、力任せではない振り方で攻撃がしなやかになる。「アウトレンジからの攻撃」を意識しているので、ネメシスは昨日ほど簡単には接近できない。

 だが、昨日の今日では、まだまだ「付け焼刃」にすらなってない。2分3分と過ぎるうちにボロが出て力任せな攻撃に戻ってしまい、柄を弾かれて懐に飛び込まれ、レイピアのポイントを鳩尾で寸止めされた。


「はい、1回死亡・・・・昨日よりはマシだけど、まだまだだな」

「・・・・ぬぇぇぇ~っ」

「少し考えて動け。

 『突きを多用しろ』って言ったら、今度は突きしか出さないじゃん。

 斬撃も混ぜなきゃ」

「ぁ、そっか」

「攻撃も単調だ。相手が『どう攻撃されたら嫌か?』を考えてみな」

「相手がイヤなこと・・・」

「相手への“嫌がらせ”は美穂の得意分野ばる!」

「そうなんだけど、一言多い!」


 特訓再開。上段、上段、上段、籠手、足払い、下段、中段、下段、横薙ぎ、下段連発からの逆袈裟切り。アドバイスを意識して、色々な角度や高さで突きや斬撃を繰り出す。


「ミホみたく動く!華麗にっ!考えるっ!色々やるっ!嫌がらせっ!」

「いちいち喋るな!」


 ネメシスVは薙刀が振られた直後に、踏み込んだ足を軸にして一回転しながら、レイピアのブレードをゲンジの側頭部に叩き込んだ!


「はい、本日2度目の死亡っ」

「・・・・・ぃってぇ~~~~~~~~~~~っ」

「闇雲に攻撃すりゃ良いってもんじゃない。あたしの挙動にも気を配れ!」

「ん~~~~~~~・・・難しいなぁ~~。」

「弱音を吐くな!」


 突っぱねたものの、今の手合わせでネメシスVは「撮影を見せるべきではなかったかも」「この特訓アプローチはミスったかも」と感じていた。確かに“競技なぎなた”の型は様になっている。だが、同時に「華麗な動き」を意識するあまり、「想定外の動き」というゲンジの持ち味が失せている。

 ゲンジは本能と瞬発力で相手の隙を突いたり懐に飛び込む戦闘スタイルだ。間違いなく薙刀より徒手空拳の方が強い。だけど、「天性の打たれ強さ依存で防御がまるで成ってないスタンス」が露骨すぎる弱点で、敵にも突かれてしまう。両腕にシールドを装備させて、相手に突っ込んでブン殴ったら有効だろうか?でも、それではシールドの広い面積が風圧を受けて、紅葉の瞬発力が活きないだろう。

 そもそも、再戦まで、あと5日しか無いのに武器を変えるなんて無謀だ。今回は、薙刀で刃吾幻の攻撃を凌ぐスキルを身に付けてもらうしかない。




-優麗高グラウンド-


 海跳が、特に目的も無く(?)自転車で優麗高の近くを走り、偶然(?)グラウンドで、何かはよく解らない(?)けど喧騒を発見した。不審に感じた(?)海跳は、自転車を止めてグラウンドに入る。


 上京まで、あと2週間程度。勉強からは解放され、友人の石松は一足先に上京したので、今は教習所に行く以外は結構ヒマだ。毎日のように、田村環奈から「ヒマ?」とか「遊びに行こうよ」とメールが来るが、「教習で忙しい」と返信して処理している。先日は「一緒に、上京後の台所用品や食器を買いに行こう」とメッセージが来た。たかが台所用品や食器の買い物に一緒に行くなんて意味不明だし、上京先ではなく文架市で買う理由が全く理解出来ない。もちろん「教習で忙しい」と返信して断った。


※環奈は、遠回しに「海跳君が私の部屋に遊びに来た時の為に、お揃いを買いに行きたい」と伝えているが、海跳は気付いていない。


「そこで何をやっている!?

 ・・・んっ!?君達は葛城とジャンヌダルクか!?」


 驚いた(?)事に、グラウンドで騒いでいたのは、変身をした麻由とジャンヌだった。海跳に大声を掛けられたセラフとマスクドジャンヌの動きが止まる。


「冨久先輩・・・ですか?」

「おぉっ!サトリではないか!こんな所で何をやっている!?」


 海跳は、気障ったらしく前髪を整えて、指でメガネを上げるルーティンをやった後、早足で麻由に近付く。


「たまたま、優高前を通過したら、グラウンドで喧騒が聞こえたので、

 何事かと確認に来たのだ。

 心無い部外者が我が母校で騒いでいたのなら嘆かわしいが、

 君達だったので安心をしたぞ。

 だが、君達こそ一体何をやっているのだ?

 この様なところで君達が戦っているなど尋常では無いな。

 何があったのだ?宜しければ話してくれないか?」


 海跳は色恋が絡まないトークならば、非情に雄弁で理路整然と話す。「何があったのか話せ」などと質問をしているが、昨日のうちに崇から聞いているので全部知っている。そして、昨日の時点で偶然を装って優麗高まで来たけど、麻由達が特訓を終えて去った後だった。


「僕で良ければ力になるぞ」


 麻由は「部外者に話すべきではない」と困惑するが、2人だけでの特訓に限界を感じていたジャンヌは「信用できる相手と判断するなら話して力になってもらうべき」と耳打ちをする。ジャンヌの評価では、サトリは戦鬼四天王1人と互角の戦闘力を持っている。ジャンヌとサトリが組んでセラフに仕掛ければ、より実戦に近い形で「武器を召喚する余裕や、得意な間合いを許されない」状況を作れる。

 あと、ゲンジの必殺技の弱点露呈のキッカケになった海跳コイツには、少しくらいは責任を取って欲しい。


「わ、解りました。説明します」


 変身を解除した麻由の説明を、海跳は「そんな大変な事があったのか?」と驚いた様子で聞く・・・が、もちろんハナから全部知ってる。


「なるほど、源川の技が破られた上で再戦をする事になったが、

 肝心の源川に焦燥が無いから、君達が代理で戦うつもりで特訓をしていたのか」

「はい、このままでは敗北が目に見えていますからね。

 それに、私が真っ先に倒された所為で、仲間達が窮地に陥ったのも事実です」

「ふっ、実に君らしい考え方だな。

 肝心なポイントが抜けている詰めの甘さも含めてな」

「・・・えっ!?」

「君が責任を感じて特訓をするのは尤もな事かもしれんが、

 それよりも先に、源川が不在でも、源川の為に君に出来る事はあるぞ」

「それは一体?」

「何故、源川の技が破れたのか?どうやれば破られないか?それを考える事だ。

 僕が模倣した“彼女の技”を破った君になら出来るはずだろう?」

「冥鳥の背中・・・ですか?」

「そう言う事だ。ここから先は、机上の会話よりも実戦をする方が早かろう。

 僕が源川の技を模倣するから、君とジャンヌで僕の技を破る事と、

 どうやれば破られなくなるかを考えてみたまえ」


 足を軽く開いて構え、丹田に力を込める海跳。


「そ、そんなっ!冨久先輩にそこまで手伝っていただくわけにはっ!」

「ふっ!偶然、母校の前を通過したら君達が特訓をしていた。これも何かの縁だ。

 少しくらいはサポートをさせてもらうさ。・・・覚醒!」


 サトリ進化態登場!素早く麻由&ジャンヌから間合いを開けて刀を構え、切っ先から八卦先天図を発生させる!麻由とジャンヌは「問答無用で模擬戦が始まる」と把握して、変身をして構える!八卦先天図を駆け抜けたサトリが神鳥に変化をして、翼を広げて突っ込んできた!


「・・・くっ!」

「マユユ、落ち着いて!引き付けて回避です!

 ウルティマバスターは、軌道変更の為に大きく旋回をしなければならない!

 その際に、必ず背中が無防備になります!」

「は、はいっ!」


 ジャンヌのアドバイスを受けたセラフは、深呼吸で気持ちを落ち着け、突進してくる神鳥を睨み付ける!そして、目一杯引き付けたところで、セラフとジャンヌで別々の方向へ回避!神鳥は翼を傾け、セラフを追って大きく旋回をする!


「見えた!弱点の背中っ!」


 セラフは小太刀を装備してカマイタチのキーホルダーをセット!刀身にカマイタチの妖気を充填する!


「フンッ!甘い!狙われると解っていれば、こういう回避方法もある!」

「えっ!?」


 神鳥は、嘴から八卦先天図を発射して通過!小回りの利く炎獣に変化をして、素早く体の向きを変え、四つ足で大地を蹴ってセラフに飛び掛かった!


「・・・くっ!」


 動揺で体を硬直させるセラフ!炎獣は体当たりの直前で再び大地を蹴り、セラフを飛び越えて背後に着地!技を解除してサトリの姿に戻った!


「技の弱点をカバーするだけなら、僕にもこの程度の事は出来る。

 だが、君達の話を聞く限り、

 源川は小回りの利く炎獣に変化しても一撃を入れられたワケだ。

 つまり、幽姫とやらは、炎獣の瞬発力よりも速く動ける」


 セラフとジャンヌは、マスクの下で呆然とした表情を浮かべて、サトリ進化態を眺める。先日の一騎打ちでは運良く勝てただけ。やはり、この男のスキルは高い。


「そもそも、幽姫は、弱点を狙いやすい“旋回時”ではなく、

 最もスピードのある突進時を狙ったのだろう?

 最低限“旋回時”以外の冥鳥を阻止できなければ、幽姫には遠く及ばない。

 先ずは、この事実をキチンと把握するところからスタートさせねばなるまい。

 その上で、源川に、その事実を突き付け、

 『どうすれば破られないか?』を考えるんだ。」


 色恋が絡まない時のサトリ(海跳)は、とても雄弁で優秀だ。もしこの場に美穂が居たら、「その調子で麻由を口説けば絶対に落とせるぞ」とアドバイスしただろう。


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