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42-2・戦鬼四天王~セラフ&バル敗北

-数分後・市街地付近の採石場の上空-


 空を移動できるバル&麻由コンビが現場の目前に迫っていた。


「近いです。不気味なプレッシャーが、私達を威嚇するように発せられています」

「了解ばるっ!」


 採石場の真上に到着。派手な和装の女性が、腰を抜かした老人に向かって日本刀を振り上げている。女は白塗りの化粧をしており、見た目では人間と人外のどちらなのか解らないが、女の発する雰囲気は、あきらかに「普通の人間」ではない。


「お爺さんを助けなければっ!・・・幻装っ!!」


 麻由が聖幻ファイターセラフに変身をして、バルミィの背から飛び降りる!身軽になったバルミィが両腕をクロスさせた!


「アーマードバルカンばるっ!」


 HAバルミィが、高速で女に接近してジェダイトソード(レーザー剣)を振るった!女は飛び退いて回避!バルミィは急上昇しつつ振り返ってジェダイト弾(光弾)を発射!女は刀で受け止め、巧みに受け流して明後日の方へ飛ばす!光弾は周囲の岩に着弾して木っ端微塵に粉砕した!


「ばるるっ?光弾を弾いたばるっ!」


 その間に、セラフ(麻由)が老人を保護する。


「お爺さんは、逃げてくださいっ!!」

「あ、あわわわ・・・・ひええええええっ!!」


 老人は慌てて逃げて行った。見送ったセラフがHAバルミィに視線を移す。


「ミ、ミーメさん・・・

 私の見間違いでなければ、今、彼女は光弾を弾き飛ばしましたよね?」

「見間違いではないばるよっ!」


 光は回避か相殺しか出来ない。光を弾き返すなんて物理的に不可能。どんな原理で光を弾いたのかは解らない。だけど、ハッキリ言えるのは、和装の女には、不可能を可能にするスキルがあるってことだ。


「あ、貴女は、一体何者ですか?何故、あの老人を!?」

「ばるるっ?麻由、この状況で、その呑気な会話から始めるばるか?」

「あのジジイは、この地の強者を呼び寄せる為の人柱。

 我が目的は強者を倒すこと。オマエ達は私と戦う価値はあるか?」

「ゆ、許せません!たったそれだけの理由で、ご老人を!?」


 セラフがが怒りを露にして構える!


「天の巫女・・・闘争心の着火に時間がかかるスロースターター。

 追い詰められて本領を発揮すると厄介だが、その前は隙だらけ。

 そして・・・想定をしていない攻撃には、対応が出来ない」


 セラフに向けて拳を翳す和装の女。その人差し指~小指の4本指には、鬼の顔が施されたゴツいリングがはめられている。


「出でよ、熊童子!出でよ、星熊童子!天の巫女を排除しなさい!」


 指輪に隠っていた念が押し出され、セラフの眼前で漆黒の煙が上がる!そして煙の中から、筋肉質で赤銅の肌をした巨漢の鬼=熊童子と、透き通るような白肌で細身長身の青年の鬼=星熊童子が出現をした!

 熊童子が背中のホルダから巨大金棒を抜いて振り上げ、セラフ目掛けて振り下ろす!


「グロロロロッ!潰れろっ!!」

「・・・え?」

「麻由っ!ボケッとしてる余裕なんて無いばるよっ!」


 バルミィは横っ飛びでセラフを抱きかかえて、空に飛んで回避をする!直後に、熊童子が振り下ろした巨大金棒が大地を抉る!右手甲の砲門を熊童子に向けて光弾を発射するバルミィ!すると、星熊童子が銃を構えて発砲!妖気を纏った弾丸がバルミィの光弾を相殺する!


「熊童子を接近戦のみの脳筋と判断して、迷わずに飛び道具で牽制か。

 良き判断力だ、宇宙人。・・・ただし“私が居なければ”の話だがな」

「熊君と星熊君は、天の巫女担当。

 勝手に対戦相手を変えてもらっちゃ困るのよね、バルミィちゃん。

 安定したオールラウンドの戦闘能力を有しているが、

 器用貧乏で戦闘目的が曖昧。

 特化した才能が集まるグループ内では、サポートに徹してしまうクセがある」


 和装の女がバルミィに向けて拳を翳して、鬼の顔が施されたリングに念を込める!


「出でよ、虎熊童子!出でよ、金熊童子!バルカン人を沈黙させなさい!」


 指輪に隠っていた念が押し出されて漆黒の煙が上がる!そして煙の中から、帯刀をして目を布で覆った銀髪の少年の鬼=虎熊童子と、ナックルダスターを装備して上半身は裸で生意気そうな金髪の少年の鬼=金熊童子が出現をした!


「虎熊君と金熊君には、バルミィちゃんの担当をしてもらうわ」


 熊童子と星熊童子が寄ってきて、和装の女が中心に4人の鬼が並んでバルミィとセラフ(麻由)を見つめる。


「グロロロロッ!久しぶりに大暴れしてやる!」

「天の巫女・・・90秒で戦闘不能にしてご覧に入れましょう」

「にゃははっ!バルミィって子、可愛いなぁ。

 叩き伏せるのが、チョッピリ可哀想っ!」

「熊、星、金、奥方に良いところを見せようとして、イキリ過ぎんじゃね~ぞ!」

「あくまでも“排除”が目的だから、ほどほどに」


 構えるバルミィとセラフ!和装女の号令を受けた四童子が一斉に動き出した!指示をされた通りに、巨漢の熊童子と銃使いの星熊童子がセラフを狙い、徒手空拳の金熊童子と剣使いの虎熊童子がバルミィを標的にする!


「・・・くっ!」


 セラフは、典型的パワーファイターの熊童子との接触を警戒して、ひたすら間合いを空ける!長距離戦に持ち込んで弓矢を装備したいのだが、星熊童子が銃撃で牽制をしてくるので武器を召喚する余裕が無い!苦し紛れに腰に装備した小太刀を抜刀するが、大金棒を受け止めるワケにはいかないので結局は逃げるのみ!


「あと60秒だぞ、熊童子。悠長にいたぶっている余裕は無い」

「グロロロ!久しぶりの戦闘なんだ!少しは楽しませい!」

「生憎だが、子女を嬲るのは、私の趣味ではない」


 HAバルミィはセラフを援護したいのだが、金髪銀髪の少年コンビが息の合った波状攻撃を繰り返すので、隙を与えてもらえない!空に逃げて間合いを空けようとするが、身軽な金熊が跳躍でバルミィに追い付き、拳の連打を打ち込む!


「ばるっ!」


 バルミィがバリアを張って凌ぐと、跳躍の頂点を迎えた金熊は落下をしていく。だが、入れ替わるように虎熊が跳躍をしてバルミィの背後を取り、神速の剣閃を叩き込んだ!そして、虎熊が落下を始めると、金熊が再び跳躍をしてバルミィの正面を塞ぐ!


「すばしっこいばるっ!」


 バルミィは金銀少年コンビの跳躍で届かないところまで逃げることは可能だが、それではセラフの援護が出来なくなる。バルミィが空高く逃げたら、少年コンビまでセラフに狙いを変更するので、これ以上の上昇は出来ない。


「麻由っっ!!直ぐに紅葉達も来るはずばるっ!!頑張って凌ぐばるっ!!」

「にゃははっ!他人を気にしてる余裕なんてあるのかな、カワイ子ちゃん!

 オイラが勝ったらデートしてよっ!」

「オイ、金!戦うか口説くか、どっちかにしろよ!」

「う~~~ん・・・なら、『口説く』でもいいか、虎さん!?」

「良いわけね~だろっ!アホっ!」


 セラフ(麻由)は星熊童子が放った弾丸を小太刀で叩き落としつつ、熊童子が振り回す金棒を回避する!攻撃に転ずる余裕が全く無い!


「75秒経過・・・頃合いだな」


 星熊童子が左袖を捲りって腕時計を眺め、鷹揚の無い声でと呟く。


「機会があれば弓比べを所望したいが、今はその時ではない」


 弓を召喚して構え、鬼の顔を模した鏃が付いた矢を素早く引いて、セラフに向けて射た!矢はセラフの周りを飛び回り、鬼顔の鏃の口から無数の小さい矢を吐き出し、それらの小矢がセラフに降り注ぐ!


「はぁぁっっ!!」


 セラフは足を止め、光の渦を出現させて矢を弾いて防御する!


「85秒経過・・・予定通りだ」


 星熊の攻撃は、セラフを倒す為ではなく足を止める為の作戦だった。強引に光の渦の中に踏み込んできた熊童子が、真っ赤な妖気で染まった大金棒を振り上げる!


「し、しまったっ!」

「グロロロッ!儂の必殺技・壱!極限打撃っっっ!!」


 足を止めてしまったセラフ目掛けて、熊童子が渾身の力を込めた大金棒を振り下ろす!




-市街地から採石場に続く未舗装道-


 ゲンジ(紅葉)の駆る☆マシン綺羅綺羅☆と、マスクドジャンヌが駆って真奈が後ろに乗るユニコーンバイクが、土埃を舞上げながら目的地に向かって突っ走る。ようやく進行方向が開けてきた。


「んぁっっっっっ!!!」 「なにぃっっ!?」 「バルちゃんっっ!!!」


 到着をした3人は目を疑った。

 熊童子の強打を喰らって、宙高く放り出されるHAバルミィ!少年コンビが素早く追って挟み撃ちにする!


「秘技・炎獅子!」

「秘剣・揺籃ようらん!・・・打音を子守歌にして眠れ!」


 金熊童子が炎を纏った拳でバルミィに連打を叩き込み、虎熊童子が刀の峰でバルミィを滅多打ちにする!為す術も無く打ちのめされて倒れるバルミィ!


「ば・・・るぅぅぅ・・・」


 辛うじて立ち上がるが、力尽きて両膝を落とし、アーマードが強制解除されて俯せに倒れた。


「うわっ!鎧が消えたら、思ってた以上に可愛いじゃん!

 ゴメンね、カワイ子ちゃん。次に会ったらデートしようね!

 あぁっ!でも、熊さんに倒された長髪の子も可愛いんだよな~。

 どっちとデートしよう?迷うなぁ~」

「いい加減にしろよ、金!

 オマエみたいなアホなんて、どっちにも相手にされねーよ!」


 倒されたのはバルミィだけではない。少し離れたところでは既に麻由が意識を失っている。


「マユっ!バルミィっ!」

「バカなっ!それほど遅れたつもりは無いのにっ!」

「そ、そんなにヤバい敵なの?」


 ゲンジは☆マシン綺羅綺羅☆から降りて、麻由とバルミィに駆け寄る。2人とも大きな外傷や命に別状は無さそうだ。ゲンジは安堵をして立ち上がる。一方のジャンヌは、真奈の盾になるようにして構える。


「ふふっ・・・本命の登場ね」

「我々の任務は?」

「すんすん・・・決まってんだろ。本命以外だよ」

「青銀の西洋騎士と、その後ろのデカ尻(真奈)だな」


 和装の女は悠然と立って笑みを浮かべた。顔は白塗りで表情が解りにくいが、居振る舞いは優雅で大人の色気を醸している。見た目では、周りに居る男達(四童子)の方が危険に見える。だがゲンジは、和装の女から底知れぬ不気味さを感じた。


「うわっ!うわっ!やっべー!あの子(真奈)可愛いじゃん!

 宇宙人と髪の長い子(麻由)も当たりだし、

 変身してる子達(ゲンジ&ジャンヌ)も可愛いのかな!?」

「金!オマエ、戦うのと、女を漁るのと、どっちが目的なんだよ!?」

「もちろん、カワイコちゃんの物色っ!皆は、どの子が好み!?」

「金熊童子、1人は姫君だと言う事を忘れるなよ」

「グロロロ・・・儂はデカ尻推しだな!」

「えぇっ!?」×4


 熊童子がそ~ゆ~事を言うとは思わなかったので、和装女&星熊&虎熊&金熊は一斉に熊童子に驚きの眼を向けた。

 一方、仲間達を倒されて腹を立てていたゲンジは、和装女&四童子の緊張感の無い会話が我慢ができない。


「無駄話してるなぁっっ!何者だぁっ!?名ぉ名乗れっっ!!」


 本命は「安い挑発」に乗ってきた。和装女が笑みを浮かべてゲンジを見つめる。


「礼儀がまるでなっていないな。

 相手の名を尋ねる時は、まず自分から名乗るのが礼儀であろう」

  「おぉっ!戦姫の口調が、いきなり変わったぞ!」

  「口調を変えねば“本命”に正体が気付かれてしまうからな」

「んぁ、そっか、ごめんなさぃ。

 ・・・・・みなが・・・ぢゃなかった、

 ァタシゎ妖幻ファイターゲンジだぁっ!!」


 ペコっと会釈して素直に名乗ったら、真奈が「敵に謝っちゃダメでしょ」「この状況で名乗るとか、意味ワカンナイ」とツッコミを入れる。


「私の名は、ジャンヌ・ダルク!」

「・・・・・・・・・ジャンヌさんまで」


 真奈のツッコミも虚しく、直後に騎士道を重んじるジャンヌまで名乗ってしまう。


「わらわの名は幽鬼ゆうき・・・武者修行の旅をしている」

「ムシャしゅぎょう?自分の強さを試すためにマユとバルミィをやっつけたの?」

「その通りじゃ。わらわは強い者と戦って己を磨いておる」

「ふざけんなぁ~~~っ!!!」

「おや?強い者と戦って勝つ喜び・・・そなたは身に覚えが無いと?」

「・・・ふぬぅぅぅっ!」


 幽姫は、手っ取り早く問答を終わらせる為に、あえてゲンジの闘争心を煽る言葉を喋っている。身に覚えが有るゲンジは反論ができない。だけど、論破されるのは気に入らないので、相手をギャフンと言わせる言葉を考える。


「オマエって、もしかして、すっげー歳上なんじゃねっ!?」

「・・・なに?」

「だってそうぢゃん!

 喋り方がジジ臭いし、顔が真っ白でママより厚化粧だしっ!!」

「・・・・・・・ふぬうっ!」

「何十歳だっ!?正直に言ぇっ!!」

「ぷっっっっっちぃぃぃぃ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!」


 周りに立っていた熊&星熊&虎熊&金熊が青ざめる!ゲンジが「触れちゃいけない領域」に土足で踏み込んでしまった!


「ヤ、ヤバいな」 

「ヤバいぞ」 

「誰か、奥方を止めろ」 

「無理だ、例え御館様でも止められん」

「姫様に理由を説明して謝罪をしていただこう!」 

「どうやって説明するんだ?」 

「見て見ぬフリをするか?」 

「それしかあるまい」


 熊&星熊&虎熊&金熊は冷や汗を垂らしながら外方を向いて、今のゲンジの暴言が聞こえなかったフリをする。


「こぉぉぉの、こわっぱがっっっっ!!!!!!」

「・・・・・んぇっ!?」


 叫ぶや否や、幽姫は電光石火のスピードで踏み込んで、ゲンジの下顎を拳で突き上げた!派手に弾き飛ばされて崖の中腹へ激突するゲンジ!轟音と共に崖崩れが起こって土埃が舞い上がる!


「舐めんなっ!!

 人間換算だったら10代後半の思春期真っ盛りで、

 同族の中じゃ半人前な末っ子!!

 優秀な姉上達を見返すべく武者修行の旅してる最中っ!!

 そ~ゆ~設定なのっ!!」


 埃まみれになって起き上がるゲンジ。痛かったがプロテクター越しなので、大きなダメージは受けていない。


「半人前!?・・・・んぁ?でも『設定』って、ど~ゅ~事ぉ~?」

「問答無用じゃ!」


 幽鬼はゲンジを睨み付け、懐から2つ折りガラケーを取り出して開いて数字キーとエンターを押し、畳んで頭上に翳した。


「わらわを年増扱いするとは良い度胸じゃ!

 全身全霊で叩きのめしてくれよう!・・・幻装っ!!」


 幽姫の全身が発光して、中世日本の鎧兜のようなプロテクターを纏った戦士へと姿を変えた!翳していたガラケーを左手甲のホルダーに収納をしたら、全身が青基調に変化!


「んぇぇぇっっっ!!?なんでぇっっ!!?」


 その行程と姿はゲンジと似ている!

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