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41-1・ジジイ妖怪一網打尽~麻由の決意と海跳

-優麗高・放課後の校長室-


「もう私は、先生方に寄り添っていただかなくても大丈夫です!」


 応接用のソファーに座った校長&教頭&2年の学年主任&数学の老講師&古典の老講師&物理の老講師の前で、麻由が深々としたお辞儀と共に、纏めてキッパリと「お別れ」宣言をする。かなり勇気の要る行動だが、紅葉達と約束したからには、覚悟をして貫き通す。


「ま、麻由ちゃん・・・そんなぁ~」 「考え直してくれ」

「君の高校卒業を待って、妻とは別れるつもりなのだが」

「申し訳ありません。それぞれの、あるべき生活に戻りましょう」

「好きな人でも出来たのか?」 「やはり、噂になっている冨久君かね?」

「好きな人がいても、今の関係さえ続けられれば、儂は構わんのだが」

「いえ、好きな人はいません。ただ、自分を見つめ直す機会を得ただけです」


 教師6人がソファーに座ったまま脱力をする。麻由はボーイフレンド達を気の毒に感じてしまうが、ここで情に流されたら今までと同じだ。部屋の隅に不自然に置いてある大きなダンボール箱をチラ見して、「今は間違った過去を清算する為に此処に立っている」と気を強く保つ。


「今まで支えていただいて、本当にありがとうございました!」


 麻由は後ろ髪を引かれる思いを断ち切り、もう一度お礼を言って校長室から退出をした。廊下に出たら、真奈&ジャンヌ&バルミィが待っていてくれたので報告をする。皆は「よく頑張った」と褒めてくれた。

 麻由は次のミッション(海跳との待ち合わせ)の為に仲間達と別れて生徒会室に向かい、真奈&ジャンヌ&バルは校長室に仕込まれた“大きなダンボール箱”をフォローする為に待機をする。


 一方、校長達は、麻由を見送った後、大きな溜息をつく。教師6人から邪気が上がり始めた。


「どうします?」 「どうしましょうかね?」 

「留年させましょうか?」 「名案ですね」

「10年ほど留年させて“我々”という籠に閉じ込めましょう」

「彼女の友人も留年させると脅して、要求を呑んでもらいましょうか?」

「ふっふっふ・・・教師に楯突いたことを思い知らせてやる!」


 麻由を囲う為に、卑劣な策を張り巡らせる教師6人。

 校長室の隅っこに不自然に置いてある大きなダンボール箱には、美穂の指示でボイスレコーダーを持った紅葉が隠れていた。麻由は紅葉が待機してるのは知っていたが、美穂の指示とは報されていない。

 紅葉は、汚い権力で麻由の勇気を踏みにじろうとしてる教師共がムカ付いて仕方がない。我慢して息を潜めていられなくなり、ダンボール箱がガサガサと音を立てる。不穏に思った教頭が箱を空けた。


「うぉっ!?なんだ君は!!?」

「そこで何をしている!?」

「んぁぁぁっっっっっっ!!!すっげームカ付くっっ!!!」

「今の話を聞いていたのか!?」

「あぁっ!それはレコーダーではないか!?

 まさか、今の会話を録音していたのか!?」


 教師6人に囲まれ、箱の中から立ち上がる紅葉!紅葉は、ムカ付きすぎてジジイ×6をぬっ殺したいが、殺人犯には成りたくないので堪える!だが、部屋の隅で6人のジジイに囲まれて逃げ場無し!やはりジジイを5~6人ぬっ殺して突破口を作らねば脱出できないか!?ジジイ共が、紅葉の持つボイスレコーダーを奪う為に掴みかかってくる!


「紅葉っ!こっちに投げろっ!!」


 天井の点検口が開いて、美穂が出現!素早い身のこなしで床に着地をして、紅葉に手の平を向けた!紅葉の投げたボイスレコーダーが美穂の手に収まる!レコーダーを握りしめた美穂は、ジジイ達に囲まれる前に素早く脇の扉を開けて校長室から教務室側に脱出!5人のジジイが美穂を追い掛けてきた!


 廊下で待機をしていた真奈&ジャンヌ&バルが「校長室に動き有り!」と構える!


「この作戦て、美穂さんが天井に隠れて校長達の会話を録音すれば良いわけで、

 紅葉ちゃんが、わざわざ箱に隠れる目的ってなんなんだろう?」

「確かに、マスターの言う通り。

 クーチャンが箱に隠れる意味は全くありませんね」

「多分、紅葉を大きな箱に配置した目的は、

 美穂が、紅葉が校長達に見付かって困惑するのを見たかっただけばるっ!」

「な、なるほど・・・ドエスな美穂さんなら考えそう。

 紅葉ちゃんは『麻由ちゃんの為に体を張って頑張ってる感』があるだけで、

 実は全く意味の無い行動をさせられてるってことか~・・・」


 教務室から美穂が飛び出して、確保したレコーダーを真奈達に見せつつ「作戦開始」の合図をして、真奈達が待機しているのとは別の方向に逃げていく!

 数秒後、今度は校長室から、清めのハリセンを握りしめて「ガルルルルッ」と少し興奮気味の紅葉が飛び出してきた!6人中5人が美穂の確保に動いた為に、紅葉の包囲網が崩れて動けるようになったのだ!

 校長室の中では、既にハリセンで滅多打ちにされて気絶した校長が転がっている!ベトベトさん討伐完了!


 美穂を追う5人の教師から邪気が上がり、全身が闇に包まれていく!アカナメ&天井サガリ&片耳豚&白坊主&笑地蔵が出現!階段を駆け上がっていく美穂を、ジジイ妖怪達が追い掛ける!そして、紅葉&真奈&ジャンヌ&バルが、ジジイ妖怪達を追い掛ける!




-生徒会室-


 待ち合わせ時間には少し余裕があるが、麻由は生徒会室内で待つ事にした。会うのは怖いが、「紅葉達との約束だから逃げるわけにはいかない」と腹を括る。

 しかし、麻由が生徒会室の扉を開けると、室内には既に海跳が居て、散乱した書類を片付けていた。


「これは一体?」

「すまん、昨日、英邦とチョットやり合ってな。

 君が来るまでに処理を終わらせるつもりだったのだが、間に合わなかったか」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「もうしばらく、何処かで時間を潰してもらえないか?」

「あぁ・・・いえ、手伝います」

「そ、そうか?すまんな」


 会って直ぐに本題ではなく、共同作業が発生したので、麻由の緊張が少し和らいだ。どの棚に、どの書類を納めれば良いかは全部把握している。2人は手分けをしてテキパキと所定の位置に戻し始めた。ある程度、片付けの目処が立ったところで、麻由が学校便りが束になったファイルを見付けた。開いていたページは約3年前の4月。入学をしたばかりの海跳の顔写真と「新入生としての意気込み」という題材の文章が掲載されていた。


「あら、これは?」

「ほぉ?懐かしいな」

「先輩、入学した時は、坊主頭だったんですか?」

「ふむ、とんだ思い違いでな、

 当時は、高校球児は丸刈りが必須と思っていたんだ。

 優麗高野球部が坊主指定でない事を知ったのは、丸刈りにした後だった」


 初々しい3年前の海跳を見て微笑む麻由。海跳は麻由の笑顔に見取れつつ、自分がネタになっているのが少し気恥ずかしい。


「確か、そのページの1年後の5月だったな」

「え?」

「君が評議委員として、顔写真と文章を載せたのは」

「そ、そうでしたっけ?」


 ページをめくり、2年前の5月。緊張した面持ちの麻由の顔写真と、生真面目な文章が掲載されていた。


「丸刈りと固い表情の違いはあるが、

 気負っているって意味では同レベルのようだな」

「言えてますね。ふふふっ」


 2人は互いの顔を見て軽く微笑んだあと、片付けを再開する。過去の学校便りのおかげで、2人を隔てていた壁は、だいぶ低くなった。多分、このまま片付けだけをして解散をすれば、いつも通りの麻由と海跳の関係に戻れるのだろう。可能ならば波風を立てずに終わりにしたい。だけど、麻由は全てを正直に打ち明けると決めている。海跳は踏み込んでしまった部分を曖昧には出来ない。2人は「このまま“片付け”という共同作業が永遠に続いて欲しい」と思いながら的確に作業を続ける。




-屋上-


 美穂が逃げる先には端部の手摺りが有り、その先は空中だ。しかし、美穂はお構い無しに手摺りからダイブする。妖怪×5は慌てて立ち止まり「女生徒が飛び降り自殺!?」なんて考えながら手摺りの下を見た。

 美穂は真っ逆さまに落ちながらサマナーホルダを翳して、異獣サマナーネメシスの姿になり、出現した白鳥型モンスター=キグナスターの背に乗って屋上まで飛び上がった!


≪クェェェェェェ~~~~~~~~~~~~!!!≫


 キグナスターが妖怪達に向かって羽ばたく!強風で煽られ、体勢を崩して床を転がる妖怪達!そこに紅葉&真奈&ジャンヌ&バルが駆け付けてくる!ジジイ共の神経を逆撫でして妖怪が出現した状態で、ひとけの無い屋上に誘き出す!此処までは美穂の策略が通り!あとは一網打尽にするのみ!


「幻装っ!!」 「マスクドチェンジ!!」 「アーマードばるっっ!!」 

「いっけぇ~~~~!!」 


 妖幻ファイターゲンジ&マスクドジャンヌ&HAバルミィ登場!一緒に走っていた真奈は、妖怪達を指さして、副部長(?)らしく「行けっ!」と指示した後で、踵を返して素早く塔屋内に避難をする!

 ゲンジは、清めのハリセンで近くに転がってきた笑地蔵を叩いた!笑地蔵から邪気が抜ける!もう3回叩いた!更に笑地蔵から邪気が抜ける!更に5連続で叩いた!笑地蔵の邪気が殆ど消えて、物理の老講師の姿に戻った!だけど、まだ20発ほどブッ叩いた!ただの、物理の老講師が「げほぉ」と悲鳴を上げる!麻由を困らせ続けたジジイを許せないゲンジは、物理の老講師の胸ぐらを掴んで、渾身の力で・・・


「待て待て待て!ジジイが死ぬぞ!!」

「んぁぁぁっっっっっっ!!!

 はなせぇぇっっ!!!コイツ、ブッ殺すぅぅぅぅっっっっっっっっ!!!」

「気持ちは解るけどダメだ!!」


 見かねたネメシスが、ゲンジを羽交い締めにして止める!その間に先行をしたバルミィが、左手甲からフリーズ光線を発射!天井サガリと白坊主の動きを封じ込めた!一方、逃走をしようとするアカナメ&片耳豚の周りを、ジャンヌが発動させた黒炎の小悪魔達が飛び回って妨害をする!




-生徒会室-


 いつも座っている席に麻由と海跳が腰を降ろす。麻由は、先ず「天の巫女に覚醒して変身を出来ること」を話した。海跳は、自身も人間ではない為、麻由が人間ではない事については素直に受け入れる。ただし、同じ種族ではない事は口惜しい。


「神の末裔・・・。なかなか、難儀な立場だな。桐藤や源川も同じなのか?」

「美穂さんは変身アイテムを持った人間ですが、紅葉は私と同じ特殊な出自です。

 本人から明確な発言はありませんが、冨久先輩と同じ根源のようです」


 海跳は「麻由の変身」には興味があったが、海跳が聞きたいことはコレではない。麻由も理解している。天の巫女の話は、あくまでも取っ掛かりだ。麻由は間を少し空けて、過去の自分について話し始める。

 悪いと解ってからも、登り詰めた地位のハシゴが外されるのが怖くて後戻りが出来なかった事。今は後悔をして清算を始めた事。

 全てを海跳に話した。海跳は、出会った頃の麻由が「砂上の楼閣のように儚く見えた理由」を理解した。


  『本気で好きになったなら、生徒会長しゃんば丸ごと好きになれ!!!』


 石松の言葉が海跳の脳内でリフレインされる。麻由に気高い幻想を抱いていた海跳にとっては、聞きたくなかった現実。だけど、麻由との未来を考えたい海跳にとっては、知らなくては成らない現実。大切なのは「これから」だ。聞いている海跳は辛いが、話している麻由はもっと辛いのだろう。海跳は、麻由の過去を全て受け入れる覚悟で、此処に座っている。


「・・・そうか。解った。だが、これまでの全てをクリアにするのだな」

「はい、全て清算します。

 先程、先生方とは別れてきました。他の方も、早急に別れます」

「ならば、僕からは、過去については何も言うまい。だがな、葛城・・・」

「・・・はい」

「君はどう思っているんだ?」


 海跳は、前髪を整えて、メガネを上げ、組んでた長い足を戻すルーティンで、どうにか気持ちを落ち着け、麻由を見つめた。


「君に、生徒会長を続ける資格はあるのか?」

「!!!!!」

「今までが、間違った縁に守られた状態で、それら縁の全てを取り払って、

 しかも、天の巫女という常人には理解不能な重荷を背負って、

 そんな君に、生徒会長が務まるのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「あえて言おう。君は、優麗高の汚点になる。即刻、生徒会長を辞職するべきだ」

「・・・・・・えっ!?」


 海跳には「これまで、麻由が生徒会を維持出来たのは、自分がサポートを続けたから」という自負がある。海跳が卒業をして、老教師達との縁を切った今、麻由を守る盾は何も無い。麻由は、必ず生徒会長の重圧に押し潰されて傷付くことになる。

 自分が知らないところで麻由が落ち込むなんてイヤだ。何かの巡り合わせで、別の男が麻由をサポートをして、麻由に頼られるのもイヤだ。麻由の盾になるのは自分でありたい。種族は違うが、同じように人間ではないのだから麻由を支えられる。


 麻由は頭ごなしの否定に脆い。それを知った上で麻由を否定している。麻由が閉息したところで「君のことは僕が守りたい」って言葉を続ける為に。


 しかし、麻由はしばらく黙って俯いた後、決意を秘めた眼で海跳を見つめる。麻由を口撃で押さえ付けようとしていた海跳の方が怯んでしまう。


「確かに、冨久先輩の言い分は尤もですが・・・その提案は拒否をします」

「・・・なに?」

「来年度の私には、先生方の後ろ盾は見込めないかもしれません。

 私の提案は、先生方には通らなくなるかもしれません。

 それに、これまでサポートをして下さった冨久先輩も卒業をしてしまいました」

「それが解っていて、何故、拒否をする!?」

「2年間で培ってきた経験が、無駄では無かったことを確かめたいからです!

 たくさん落ち込むかもしれません!たくさん泣くかもしれません!

 それでも私は、生徒会長の職務を全うしたいんです!

 私は、冨久先輩に託された生徒会を、私の努力で次の学年に引き継ぎます!」

「僕は、君に託したのが失敗だったと言っているんだがな!

 僕が、君の罪状を告発しても同じ事が言い切れるのか!?」

「告発はさせません!」

「それは、どういう意味だ!!

 ・・・・いや、それ以上は言うまい。質問を変える。

 君は僕に、その決意を示せるのか!?」

「はい、示せます!!」


 互いに「会話だけで終わらせたい」と思っていたが、心の何処かでは「戦いは避けて通れない」と感じていた。

 退治屋から紅葉に「サトリの討伐指令」が発せられている。麻由は「サトリが覚醒したのは自分の所為」と自覚している。美穂からは「手を引く」と言われた。だから、仲間に尻ぬぐいをしてもらうつもりは無い。自分のミスは自分で処理をする。


「昨日は手も足も出ずに惨敗をしたが、それでも覚悟は出来ているのか!?」

「はい、できています!」

「戦いになれば手は抜かない!僕は君の心を読むぞ!」

「はい、それも承知しています!」


 海跳は立ち上がって麻由を見つめる。麻由の表情からは強い決意が伝わってくる。




-校長室-


 美穂が偉そうな態度で校長の席にふんぞり返って机に脚を投げ出し、簀巻きにされて床に正座させられた老教師共を眺める。ちなみに、老教師共は6人で計1700発くらい紅葉にハリセンで叩かれて、邪気を浄化された。黙認したら全員が紅葉に撲殺されそうだったので、美穂&バル&真奈&ジャンヌで、凶暴化した紅葉を止めた。

 老教師共に憑いていた妖怪は、「マユをいぢめた妖怪なんて要らん!」て理由で一匹も封印せずに、全て瀕死の状態で地獄に帰っていただいた。


 今は、拘束された老教師共の前で、美穂がボイスレコーダーの再生をして“動かぬ証拠”を披露しつつ和平交渉(?)の真っ最中だ。


  〈麻由ちゃんに呼び出されたって事は、ようやくデート解禁て事ですかね〉

  〈うっへっへっへ、久しぶりで燃えますな〉

  〈しかし、6人纏めて呼び出しとは、どういう事でしょか?〉

  〈にっひっひっひ、日替わりで順番を決めるのでしょうな〉

  トントン(ノック音)

  〈葛城です〉

  〈入りたまえ〉


ピッ!

 麻由が校長室に入ってきたところで再生をストップする。真奈&ジャンヌは汚物を見るような目で、校長達を眺めている。地球人の男女関係に疎いバルミィでさえ「これは酷い」と呆れる。なるほど、この会話を聞けば、紅葉が校長達を撲殺しようとした理由が納得できる。


「さ~て、先生方。この会話、教育委員会にリークしても良いですか?

 いや、待てよ、マスコミに売った方が金になるかな?」

「か、勘弁してくれ!」

「そんな事をされたら、儂等の人生は台無しだ!」

「そのボイスレコーダー、いくら出せば売ってくれる?」


 自己弁護をする老教師共。美穂は跳ねるようにして立ち上がり、机を思いっ切りブッ叩いた!老教師全員が、ビクッと体を反応させて怯える!


「だったら、麻由の人生を、これ以上、台無しにするなっっ!!

 『麻由を留年させる』とか随分とふざけたことを言ってたな!!」

「ひぃぃぃぃっっっっっ!!」×6

「わ、解った!彼女はキチンと進級も卒業もさせる!

 もちろん、君たちを取引材料にもしない!」

「言ってる意味は理解出来てんのか!?

 台無しにすんなってのは、それだけじゃない!!

 権力を盾にして、麻由に纏わり付くなって言ってんだっっ!!」

「ひぃぃぃぃっっっっっ!!」×6

「解った!約束する!だからリークだけは勘弁してくれ!」

「あたし達を逆恨みして、内申で不等に低い評価をしてもリークすっからな!」

「はい、解りましたっ!」

「あと、私の成績はオール5にしろ!」

「りょ、了解です!」

「んぁぁぁっっ!ミホ、ズルい!ァタシもオール5にしてっ!!」


「いやいや、美穂さん、紅葉ちゃん、ズルはダメだよ。」

「途中までは、マユユの為に体を張ってる良い感じだったのですが・・・」

「急にセコくなったばるっ!」


 こうして、校長達との和平交渉と麻由の解放は、とても意義のある意見交換によって穏やかに成立をした。美穂を先頭にして校長室から退室する。校長達は納得をしてくれた(心をへし折られた)ので、追ってくる気は無さそうだ。

 バルミィが先頭の美穂に追い付いて話し掛ける。


「美穂、相変わらず、優しいばるね?」

「はぁ?今の脅しが甘かったって事?」

「違うばるよっ!

 麻由には『手伝わない』って言ったのに、シッカリと手伝ってるばるっ!」

「あぁ、それ?あたしは、校長達の件から手を引くと言ってない。

 サトリの件から手を引くって言っただけだ」

「そ~ゆ~ところが美穂の優しいところばるっ!」

「は、恥ずかしいことを言うなっ!」


 美穂はバルミィに見透かされて照れてしまう。ただし、サトリの件で手を貸すつもりが無いのは事実だ。紅葉の父親は「サトリは神の血族の麻由にしか倒せない」と言っていた。チームの全員が完敗したことと「光と闇は相克」を考えると、紅葉の父が言ったのは事実だろう。

 だけど、普段の他人依存な麻由では勝てない。昨日、冷たい態度で麻由を追い込んだのは、誰にも頼らずに底力を発揮させる為でもあった。美穂の見立てでは、潜在的な能力を発揮しても勝敗は五分五分。麻由をフィニッシャーに配置して総掛かりをすれば、サトリに勝てるだろうけど、今回は麻由1人でどこまでやれるのか見守りたい。


「んぁっ!ミホ、そろそろ時間だよっ!」

「もう、そんな時間か。」


 部活終了~全生徒退校時刻まで、あと15分。紅葉は麻由から「戦闘になるなら、ひとけが無くなったグラウンドで行う」と聞いている。

 昨日、「サトリの討伐指令」が発せられた時、麻由は困惑する紅葉に「私の任せてもらえないか?」と言った。麻由にどんな作戦があるのか解らない。倒すつもりなのか、倒さずに済む方法があるのかも見当が付かない。だけど、紅葉は海跳を殺したくはない。だから今回は「いつも不殺」の麻由に託すことにした。

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