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39-3・神鳥自滅~崇&良太達の緊急行動

-公園前通り-


 スーツ&コート姿の源川崇(紅葉の父)が、歩道に立ってショッピングモール屋上を眺めていた。いつもは娘と仲間達の活動のストーキングは妻に任せきりだが、今回は過去に関与をしたサトリが相手なので放置を出来ない。

 19年前のサトリならば、セラフ&バルミィのタッグに苦戦をして、ゲンジ&ネメシスの合流で敗北をしただろう。だが、今のサトリは、戦いながら凄まじい勢いで成長をしている。これが、人間社会で育った妖怪の伸び代なのだろう。


「大したもんだなぁ。紅葉の能力を超えちゃったよ。

 アレは紅葉単独じゃ勝てない。

 こりゃ、僕でも、以前ほど簡単には勝てない・・・な」


 愛娘のことも、サトリのことも心配だが、今は手を出す気は無い。崇が動くのは、退治屋からの「酒呑童子の能力開放」の許可が出た場合のみ。

 19年前、勝手にサトリを瞬殺した時は、あとで粉木とママにスッゲ~怒られた。




-階段室-


 亜美&石松&良太&咲輝が塔屋に到着。既に美穂&麻由&バルミィが倒れており、荒々しい姿の海跳が、ピンクの鎧武者と戦っている。


「良くん、一体、アレはどうなってるの?

 あの怪物みたいなの、東中だった冨久さんだよね?」

「落ち着いて咲輝。俺が妖怪の力を借りて戦ってたって、前に言っただろ?

 アレは、ソレを同じ状況なんだ」

「え?ソレって良君の妄想話じゃ無かったの?」

「うん。事実なんだ」


 不安そうに良太の腕を握る咲輝。亜美も石松も咲輝も、そして良太も、自分達が場違いなことは直ぐに理解した。美穂達は生きているのか?駆け寄って安否を確かめたいが、本能が「これ以上、近付くのは危険」と告げる。




-屋上-


 ゲンジ(紅葉)とサトリ進化態の乱打がぶつかる!怒りでゲンジのパワーが上昇したらしく、一つ一つのパンチが重い!このまま乱打戦を続けたら、連戦で疲労が溜まっているサトリが押し負けるだろう!


「だが、直線的すぎる!恐るるに足らず!」


 サトリ進化態は、ゲンジのストレートを掌で2発ほど脇に弾き、素早く身を低くしてガラ空きの下半身に足払いをかける!しかし、ゲンジは本能的に動いてジャンプで回避!頭上で両拳を合わせて、サトリの脳天にダブルスレッジハンマー喰らわせる!更に、前のめりになったサトリの顔面に膝蹴り、仰け反ったサトリにアッパーが叩き込まれる!弾き飛ばされたサトリはバク転でゲンジから距離を空けるが、逃がすつもりの無いゲンジは一足飛びにサトリとの間合いを詰める!

 判断から行動までにタイムロスが全く無い。いや、判断をせずに、瞬発的に行動に移っていると言うべきか?小賢しいネメシスとは別の意味で強敵だ。だが、付け入る隙はある!


「僕に怒りの矛先を向けるのは、見当違いだな!」

「んぁっっ!!?」

「桐藤を敗北に導いたのは、オマエ自身の身勝手な行動だ!!」

「ち、ちがうっ!!」

「ほぉ?思い当たるのは今回だけではないんだな。

 人目を憚らない戦闘、作戦無視、考え無しの体力消耗、

 オマエの独断は、度々、仲間を窮地に陥れている」


 ゲンジに動揺が生じた!これまでのように、本能的でしなやかな動きが出来なくなった!サトリ進化態はゲンジの大振りの一撃を回避して、すかさず蹴り上げた!

 弾き飛ばされたゲンジは、直ぐさま「迷いは禁物」と気を引き締め、再び闘争心に着火をする!そして、しなやかな動きで体勢を立て直し、着地と同時に飛び退いてサトリの追撃を回避して、空高く跳躍をする!


「んぁぁぁっっっっっっっっっっっ!!!!」

「動揺が消えた!?」


 空高く上がるゲンジを睨み付けるサトリ進化態。ゲンジの心が聞こえなくなった。闘争心で動揺を押さえ付けたか?


「だがまだ甘い!」


 飛行能力が無ければ空中では身動きが出来ない。空中戦になれば、尾から推進力を発して移動できるサトリの方が有利だ!

 サトリが上空のゲンジに向かって飛び上がろうとしたその時!


「かいとぉぉぉっっっっっっ!!!!おまえ、どぎゃんつもりとっっ!!!」


 聞き覚えのある怒鳴り声に動きを止める。振り向くと、塔屋入口で、石松が亜美&良太&咲輝と共にサトリを見つめていた!

 上空のゲンジは、サトリが動きを止めたことを見逃さない!すかさず、左手甲にセットしてあるYスマホに、指で「神鳥」と書いて左掌から八卦先天図を出現させる!


「はぁぁぁぁぁっっっっっ!!!ウルティマバスタァァァッッーーーー!!!!」


 ゲンジが八卦先天図を通過して光りの鳥に変化!翼を大きく広げ、屋上に立つサトリ進化態に向かって、真っ逆さまに落ちてくる!


「しまったっ!」


 サトリ進化態は「これがネメシスが温存をしたゲンジの奥義」と直ぐに理解をした。妖怪が嫌う光の力。受け止めて凌げる可能性は五分五分。凌いでも体を灼かれダメージは必至。


「・・・いや、待てよ」


 何故、ネメシスは、神鳥を「隙を作って不意打ち」に使おうとしていた?これほど攻撃力と突進力に特化した奥義なら、温存せずに普通に使ってもサトリへのダメージは確実のはずだ。小賢しい策士ネメシスは、どんな理由で神鳥の使い処を厳選していた?


「・・・そういう事か」


 サトリ進化態は、迫ってくる神鳥を眺めてほくそ笑む。ネメシスが、ゲンジの奥義を出し惜しんだ理由は、当たれば一撃必殺だが、軌道が直線的で小回りが利かず、回避が容易だから。つまり、目一杯引き付けて、空か地上に逃げれば、光の鳥は直ぐには追って来ない。ましてや、急降下をしている状況では、屋上床に激突をする。破壊されるのはサトリではなく、この建物の屋上だ。

 そこまで考え、「ゲンジ恐るるに足らず」と判断した直後、サトリ進化態は息を飲んで周囲を見回した。


「あのバカめっ!!じょ、冗談では無いっ!!!」


 サトリ進化態は「引き付けて逃げる」と決めたにもかかわらず、まだ距離があるうちから屋上を駆けて、上空高く飛び上がった!


「源川っ!僕はこっちだっ!!」

「んぁぁぁっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!」


 サトリ進化態の移動を察知したゲンジが、ウルティマバスターの軌道を変更!屋上に激突する寸前まで落ちたところで辛うじて軌道が変わり、大きく旋回をしながら上空のサトリ目掛けて猛スピードで突っ込んでいく!


「ぐおぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!」


 ウルティマバスター炸裂!サトリ進化態の全身が光に焼かれる!サトリは「ネメシスほどの切れ者が、この奥義を切り札として温存しただけのことはある」と実感する!このままではマズい!体だけでなく命も焼かれる!


「・・・・ならばっ!!」


 サトリ進化態は尾から放つ妖気を推進力を全開にして、ウルティマバスターの中に突っ込んできた!凌ぐ事ばかりを考えるから一方的に焼かれる!無尽蔵と思えるほどに放出される光を、受け止め続ける事は出来ない!ならばコアを直接叩いて放出を止める!どのみちダメージを受けるなら、一方的に受けるのではなく相打ちを狙う!


「んぁっ!そんな、ムチャクチャなっ!!」

「デタラメなのは、オマエの方だっ!!」


 サトリ進化態は焼かれながら片手でゲンジを掴み、もう片方の手でゲンジの顔面を思い切り殴った!ゲンジはこれまで、ウルティマバスター発動中に攻撃を受けた経験は無い!ウルティマバスター発動時、ゲンジは妖力を変換した理力に覆われているが、中に入られてしまえば完全に無防備だ!為す術も無くサトリの打撃を受けてしまう!


 光の力は妖怪討伐には必要な力だが、闇属性のゲンジでは本来は使えない。ゲンジが神鳥を発動させた場合、Yスマホのリミッター機能が働いて、発揮した妖力の3割を光の力に変換して、3割を紅葉では扱えない光の力の維持に使い、2割が各変換時のロスとして失われ、残る2割は光の力とゲンジの間に通してゲンジ自身がダメージを受けないようしている。


「んわぁぁぁっっっっっ!!!」 「ぐおぉぉぉぉっっっっっっっっ!!!」


 ゲンジが攻撃を受けた為、ウルティマバスターを維持していた繊細な妖力バランスが崩れる!ゲンジ自身を光から保護していた力が消滅して神鳥の浄化の光がゲンジに逆流!発動者のゲンジを焼く!


「クレハっ!」 「源川っ!」 「海跳っ!」


 石松&亜美&良太&咲輝は、光の鳥がサトリを飲み込む様を見上げていた。光の鳥が歪に崩れながら、亜弥賀神社の方角に落ちていく。光の鳥が降ってきた時は焦った。特に、ウルティマバスターを見たことがある亜美と、喰らったことがある良太は、「あの時より大きい」「巻き込まれて死ぬんじゃね?」と思った。


「なぁ、石松先輩?」

「ぶひぃ?」

「冨久先輩、怪物みたいな姿してたけど、今、俺達を庇いましたよね?」

「・・・多分な」

「亜弥賀神社の方に行ったみたいですが、追いますか?」

「もちろん!」


 石松と良太は互いの顔を見て頷き合うと、互いの恋人に「来るな」と言って駆け足で階段を降りていく。亜美と咲輝は、「どうしよう?」と困惑して顔を見合わせる。気になるから行きたいんだけど、倒れている美穂&麻由&バルを放置するわけにもいかない。

 亜美が介抱に向かおうとしたら、背後から声を掛けられる。振り返ると、階段を上がる足音や人が近付く気配は無かったのに、いつの間にか紅葉の父親が立っていた。


「おや?亜美ちゃん?こんな所でどうしたんだい?」

「あっ!クレハのお父さん!・・・ちょっと、友達が」

「心配しなくて良いから、君たちは、安全なところに避難しなさい」

「・・・で、でもっ」

「下には警察が来ている。こんな所をウロチョロしていたら職質されちゃうよ。

 それに、桐藤さん達のことは僕に任せてもらって大丈夫。

 職業柄、こ~ゆ~のは馴れているんだよね。」

「え?おじさんて、なんのお仕事をしているんですか?」

「ん?それはちょっと言えないね。」


 穏やかに微笑む崇。確かに、警察が上がってきてアレコレ聞かれるのも煩わしいし、互いに恋人のことが気になる。亜美と咲輝は、崇に一礼をして階段を駆け下りていった。


「やれやれ・・・

 紅葉もサトリも、好き放題暴れちゃって、こりゃ後処理が大変だなぁ。

 まぁ、魂を食わなかっただけでもマシな方か?

 だけど、粉木さん、お気の毒に。また、報告書の山に沈むぞ」


 崇は屋上に出て、倒れているバルミィの脇に腰を降ろし、溜息をついて頭をかく。失神しているだけの麻由はともかく、魂を抜かれた美穂とバルミィは魂寄せの呪術が必要だ。そんな怪しい術を施しているところを亜美達に見られたくないから、体よく追い払った。


「あ~ぁ・・・僕は、魂寄せは、あんまり得意じゃないんだよな~」


 崇は、片手をバルミィに充て、もう片手を空に浮かんだバルミィの魂に向け、小声で呪文を呟きながら指で空に呪印を描く。




-地上駐車場-


 待機中のジャンヌと雛子の目にも、屋上から飛び出した光の塊が公園の方に落ちていくのが見えた。戦場が公園に変わったようだ。雛子は上司に「鎮守の森公園にも規制線が必要」と報告をする。

 一方、ジャンヌのところに、息を切らせた真奈が合流をする。バルミィから「麻由発見」の連絡が来るまでは美穂達と一緒に学校にいたのだが、美穂と紅葉が先行したので1人だけ遅れて到着したのだ。


「ごめん、ジャンヌさん、お待たせ!」

「戦いの場は公園の中です!」

「うん、私も、紅葉ちゃんが公園に落ちていくのを見た!」


 真奈とジャンヌは、鎮守の森公園に向かって駆け出す!そして、公園に入って人目が無くなったのを確認して融合&ラピュセルへの変身をする!

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