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39-1・サトリ進化~バル敗北~セラフ敗北

 セラフ-i(麻由)が、金色のオーラを発しながら突進をする!素早くサトリの懐に飛び込んで腕を弾き、HAバルミィを抱きかかえた!サトリは鋭い爪を振り下ろすが、セラフ-iはサトリの間合いから離れ、バルミィを床に寝かせる!

 突進をしてくるサトリ!バルミィを庇って構えるセラフ-i!2人の拳がぶつかり、サトリがパワー負けをして体勢を崩す!


「チィィィッッッ!!!これが、あの葛城なのかっ!!?」


 サトリ目掛けて拳の連打を放つセラフ-i!しかし、サトリは一足飛びに後退をして間一髪で回避する!


「今の激突は危なかった。あの変化は何だ?

 葛城の闘気(理力)が洗練され、全能力が急激に上がった」


 セラフ-iは、浮き上がったバルミィの魂に手を当て、肉体のある方に向けて生命力を打ち込んだ。バルミィの魂が肉体に戻り、全身が生命力で満たされ、虚ろだった目に光りが戻る。


「間に合って良かった。ミーメさん、もう大丈夫ですね?」


 バルミィが立ち上がり、体に異常が無いことを確認して、セラフ-iに礼を言う。


「うん、無事みたいばるっ!アイツの攻撃・・・いや、口先は危険ばるっ!

 聞いてるだけで意識が朦朧とするばるよ!」

「私は、彼の雄叫びを聞くと目眩に襲われます。気を付けるべきですね」


 サトリはセラフ-iを眺めていた。金色に輝く前とは集中力が違う。丹田に意識を溜め、呼吸法を変えたことで、闘気(理力)を爆発的に高めている。


「葛城には・・・あの様なことが出来るのか?」


 サトリが見る限り、セラフ-iの闘方は、攻撃力&防御力&機動力を大幅に上げる代償に、闘気(理力)の垂れ流し状態になっている。あれでは直ぐにガス欠になる。むしろ、金色になる前の状態にリミッターが掛けられていると見るべきか?だが、無駄な垂れ流しは妖怪も同じ。実体化をする為に妖力を大幅に使っている。


「なるほどな。理屈は理解した。

 僕ならば・・・もっと上手くできる。

 爆発的に高めずとも“リミッター”と“洗練”で充分だろう」


 サトリは、セラフを真似て両の拳を握りしめて空を見上げ、雄叫びを上げた!先ずは、一度目の妖力を発動させ、放出を安定させた状態で気持ちを落ち着け、丹田から両手・両足・胸への力の流れを意識して二度目の妖力を発する!


「え!?」 「ばるっ?」


 異常を察知したセラフ-iとバルミィがサトリを直視する!サトリから莫大な妖気が発せられている!これまで戦ってきた妖怪は、特殊能力は持っていたが、動物的に本能で戦っていた。先程までのサトリも同じで、攻撃意識のみで戦っていた。だけど、今のサトリはあきらかに違う。闘争本能と理性を使って、妖気をコントロールしている。

 サトリの攻撃力と人間の知性を持つ妖怪、それが冨久海跳!サトリの全身から闇が上がってサトリを覆う!闇の中から海跳の顔を浮かび上がり、全身を包んだ闇が両手・両足・胸部に集中していく!

 やがて雄叫びが止んだら、猿型の妖怪だったサトリは、手足が獣で、海跳の姿をした形に変貌をしていた。見た目は今までよりは人間的。だけど、その雰囲気は刃物のように研ぎ澄まされて近寄りがたい。セラフ-iの眼にも、バルミィの眼にも、それが危険だとが解る。


「アイツ・・・どうなったばるかっ!?」

「パワーアップ?妖怪がそんなスキルを!?」


 変化を終えたサトリは、両手足を見つめて成功を確信する。妖気の垂れ流しが止まり、必要なところに必要なだけコントロール出来るようになった。自身の体を満足そうに眺めたあと、ゆっくりと顔を上げる。

 そして、サトリ進化態がセラフ-iとバルミィを睨み付けた直後、居たはずの場所からサトリ進化態は消え、セラフ-iとバルミィの真正面にいた!2人は、それぞれで左右に回避!サトリ進化態は、迷うことなくバルミィを追撃する!


「ミーメさん狙い?」

「オマエは、後ほどジックリと相手をする!先ずは、目障りな宇宙人だ!!」


 蹴撃を放つサトリ進化態!HAバルミィは辛うじて両腕でガードするが、衝撃で押されて弾かれる!セラフ-iは直ぐさま踵を返してサトリ進化態を追う!バルミィは体勢を立て直して、サトリ進化態に向かって光弾を至近距離発射!


「ふんっ!愚かな宇宙人だ!」


 バルミィの光弾発射を読んでいたサトリ進化態は素早く回避!バルミィをサポートする為に、サトリ進化態の真後ろを走っていたセラフ-iにバルミィの光弾が炸裂してしまう!


「し、しまったばるっ!!」


 セラフ-iが弾き飛ばされて地面を転がる。バルミィは、サトリ進化態の後ろにセラフ-iがいる事に気付けなかった。いや、サトリ進化態は、セラフ-iを引き付けた上で、バルミィの攻撃を誘ったのだ。更なる動揺で隙を突かれたバルミィは、腹をサトリ進化態に掴まれてしまう!


「ケーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!」


 サトリ進化態から雄叫びが発せられ、体勢を立て直そうとしていたセラフ-iは目眩に襲われる!サトリ進化態は、バルミィを掴んだまま一足飛びに塔屋の屋根に飛び上がった!バルミィは、右手甲をサトリ進化態に押し当てて光弾を放つが、心を読んでいたサトリ進化態バルミィの腹から手を離して楽々と回避!バルミィの後ろに回り込んで、今度は背中を掴む!

 ゼロ距離発射すら回避する相手なんて、どんな攻撃をしてもヒットさせることが出来ない。敗北感に包まれるバルミィ。


「さぁ、バルカン人。先程の続きだ」

「・・・ば、ばるぅっ!?」

「オマエは、桐藤ほど上手く仲間達を采配できない。

 葛城も源川も、桐藤の命令違反ばかりする。

 だが、オマエだけは、桐藤の命令に忠実に従う。

 オマエは、桐藤のサポートこそが、自分の任務と判断している。

 ・・・それは、何故か?」

「そ、それ以上、言うなばるっ!!」

「桐藤美穂が沈黙をしたら、チームは烏合の衆と化すからだ!」

「や、やめるばるぅぅっっっっっ!!」

「なるほど、了解した!

 真っ先に最も弱い桐藤を潰せば、オマエ達のチームは機能しなくなるのだな!」

「ばるぅぅぅぅぅっっっっっっっっっ!!!!!」


ドォンッッ!!

 サトリ進化態はバルミィの背中を掴んだまま、妖気をゼロ距離発射!バルミィの魂のみが弾き飛ばされ、抜け殻になったバルミィが白目を剥き脱力をする。抜け殻から手を離すサトリ進化態。バルミィのアーマードが強制解除され、真っ逆さまに屋上床に落ちる。

 バルミィの魂は宙に浮かんでいる。今度は、ちょっと押し込めば肉体に戻るような離れ方ではない。


「うわぁぁっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!ミーメさんっっ!!」


 逆上をしたセラフ-iが、サトリ進化態に飛び掛かる!サトリ進化態は後退で回避!

 セラフ-iの動きが先程より速くなった。だがそれだけだ。冷静さを欠いている分、闘気(理力)の無駄な垂れ流しも増している。何よりも、先程は読めなかったセラフ-iの焦りと怒りの心が丸々流入してくる。これは、サトリ進化態の妖怪の格が、セラフ-iの神性と同等のレベルまで上がった事を意味していた。


「ふんっ!・・・実にオマエらしいな!

 初手では、僕への攻撃を躊躇って、バルカン人と足並みが揃わず、

 金色に変化した直後は、僕を圧倒する戦力差がありながら、

 バルカン人の救出を優先して2度も決定的チャンスを棒に振ったあげく、

 今は逆上して見境無し!

 何もかもが矛盾だらけだ!

 外面の良い優等生と、ジジイ共に溺れた一面というアンバランスと同様にな!」


 このまま攻撃から逃げ続けても、セラフ-iはガス欠で動けなくなるだろう。だが、サトリ進化態は、あえて、その選択はしない。力でネジ伏せて、2度と逆らう気力が起きないほどの決定的敗北をさせる。


「それが、僕を裏切ったオマエへの代償!」


 宙高く飛び上がって逃げるサトリ進化態!飛び上がってサトリ進化態を追うセラフ-i!2人が空中で激突する!セラフ-iは幾重もの拳や蹴りを繰り出すが、サトリ進化態は全て回避して一発も当てられない!

 前に向かって打つだけの単純な攻撃。腰の入っていない軽く捌ける攻撃。スペックが同等になった今、思考を読んで攻撃に対応する必要すら無い。野球で動体視力を鍛えたサトリ進化態からすれば、素人女子高生の繰り出す攻撃などスローボールにしか見えない。2人の跳躍が頂点まで達して、落下を開始する。


「チーム内の足手まとい・・・か?」

「!!!!!!!!!!!!」

「それが、オマエが焦り続ける理由。

 そして、自分を引っ張ってくれる仲間達に汚れた顔を見せるのが怖い」

「う、うわぁっっっっっっっっっ!!!!」


 心の最も痛いところを突かれたセラフ-iは、忘我して腰に帯刀してある小太刀を抜いて振り上げた!サトリ進化態は素早く日本刀を召喚して、セラフ-iが振り上げた小太刀の刀身に、自分の日本刀の刀身をぶつける!セラフ-iの手から小太刀が弾き飛ばされ、セラフ-iの体勢が崩れる!


「これで、終わりだ!」


 サトリ進化態は尾から妖気を推進力のように放出させて、セラフ-iに密着して顔面を掴んだ!サトリ進化態が掌から発した妖力がセラフ-iを凍てつかせる! サトリ進化態はセラフ-iに妖力を浴びせ続け、セラフ-iは悲鳴を上げる!ゲンジが光りの攻撃に弱いように、セラフは闇の攻撃を防げない!やがてセラフ-iの脱力を感じたサトリ進化態は、自由落下をしながらセラフ-iの頭を地上に向け、再び尾から妖気を放出して落下速度を上げる!猛スピードで降下をするセラフ-iとサトリ進化態!

 セラフ-iの頭と背中が屋上床に叩き付けられ、コンクリートに大きな亀裂が入る!


「うぅっ!」


 妖気を浴びて朦朧としていたセラフ-iは意識を失い、変身が強制解除をされて麻由の姿に戻った。仰向け倒れた麻由を見つめるサトリ進化態。

 海跳の理性でサトリの本能を抑えていた時、サトリは海跳に「力尽クデ 手ニ入レロ」と語りかけてきた。今にして思えば海跳の本心だったのだ。麻由のことを「触れたら壊れる清らかな物」だと思っていたが違った。どうせ既に汚く壊れているなら、更に汚れても価値は変わらない。いや、2度と立ち上がれぬほどブッ壊してやるのも一興か。サトリ進化態は麻由に跨がり、麻由の上着の襟の左右を両手で握り、引き千切ろうと力を込める。


※サトリのモデルは、中国のカクという妖怪。カクは雄しかいない為、人間の女性を捕らえて子供を産ませる。


「・・・ん?」


 上空から、何かが猛スピードで風を切って向かってくる!思考を読むことが出来ない何が来た!?サトリ進化態は、引き裂く寸前だった麻由の上着から手を離し、空を見上げる!メカニカルな白鳥が翼を広げて急降下してきた!


〈クェェェェッッッッッッッ!!〉


 白鳥型モンスター=キグナスターは、急降下からの低空飛行でサトリ進化態に体当たり!弾き飛ばされたサトリ進化態は麻由から十数mほど遠ざけられる!続けて塔屋の窓が歪み、中からチビ鎧武者と白い騎士が乗った車長モトコンポが出現!

 妖幻ファイターゲンジと異獣サマナーネメシスは、倒れている麻由を庇うようにして構える!


「お楽しみのところ、邪魔して悪いな!変態副会長っ!!」

「ふんっ!援軍か!」

「援軍じゃね~よ!今までのが前座で、あたし達が本体だ!」


 ネメシス(美穂)は、大見得は切ったものの、状況が切迫していることは把握している。バルミィに「麻由と妖怪発見」の連絡を受けてから、現地に到着するまで10分弱。その間に、麻由とバルミィが敗北をした。妖怪が強いのは確実だ。ゲンジをチラ見すると、ゲンジ(紅葉)が緊張しているのが解る。紅葉も、目の前の妖怪の「ヤバさ」を察しているのだ。


「ミホ、ぁのヨーカイ・・・海跳センパイだょ」

「見れば解る!顔が、まんま冨久だからな!」

「そーぢゃなくて、海跳センパイがヨーカイなの」

「なに?」

「ぁのヨーカイに依り代ゎいないの!海跳センパイゎ依り代ぢゃないの!

 海跳センパイがサトリの本体なのっ!」

「マジかよ?」

「それからね、バルミィゎあのまんまぢゃヤバい。

 魂が肉体に戻れなくなって死んぢゃう!」


 美穂は、紅葉が戸惑っている理由を理解した。妖怪を倒せば海跳が救われるわけではない。妖怪を倒せば海跳が死ぬ。麻由とバルミィが倒された現状を考えれば、友好的に話し合いが出来る相手ではない。麻由を容赦なく叩き伏せた事実が、サトリの冷酷さを象徴している。つまり、目の前にいる妖怪が何者かなんて関係ない。倒すべき敵以外の何者でもない。ネメシスがサトリ進化態を睨み付ける。


「ちょっと意外だったな。

 融通の利かない頭でっかちか、お調子者ばかりの優麗高で、

 アンタは話の解るマシな部類だと思っていたんだけどな。

 校内トップの優等生は化けの皮で、中身は一番クソだったって事か!」

「ふんっ、どうとでも言え」

「ずっと、あたし達を騙して優等生を演じていたってか?

 いや、あたし達はどうでも良い!

 ずっと、麻由を騙して偉そうな先輩様を演じていたってか?

 アンタは、麻由の信頼を裏切ったんだな!

 すげームカ付く!

 そんな卑怯なカスに、クソ真面目な麻由が勝てるわけがない!」

「その雰囲気、その口調、2年の桐藤だな。もう片方は源川か。

 何も知らんクセに息巻くなっ!」

「んぁっ!正体バレてる?なんでっ!?」


 優麗祭で不穏分子の中枢にいたのが源川紅葉と桐藤美穂。麻由のペースを崩し、友人の思い人(亜美)を巻き込んで、2人の経歴に泥を塗った不良共。手心を加える理由は1つもない。サトリ進化態に流入してくるネメシスの心は、明確な攻撃意思だ。これまで対峙した連中の中で、最も気持ちを強く割り切っており、その心に迷いは見えない。


「なるほど見事な決断力。

 バルカン人が『リーダーは桐藤』と言ったのが理解出来る。

 つまり、真っ先に戦闘不能に追い込むのはオマエと言うことだ」


 ネメシスは、サトリ進化態の未知の能力と冷酷さ、そしてバルミィの危機的状況を総合して、「小手先の様子見抜き」「いきなり全力で行く」とゲンジに指示を出す!


「ケーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!」


 咆哮を上げ、ゲンジとネメシスを威嚇するサトリ進化態!ゲンジは目眩がして片膝を付く!


「どうした紅葉?」

「アイツの鳴き声聞いて、チョット気持ち悪くなった」

「そっか。なら、あたしが隙を作る!オマエは奥義発動状態のまま待機してろ!」

「んぇっ?」

「鳴き声を聞く度にフラフラされたら戦いになんねーからな!」


 ゲンジはネメシスを見て、マスクの下で青ざめた。ネメシスの体から美穂の魂が外れかけている。

 魂への干渉能力があり、一定の魂防御が出来るゲンジ(セラフも同様)だから「意識が肉体から剥がされそうになる」事に気付いたが、ネメシスは気付いていない!この咆哮はマズい!ネメシスは、いきなり「バルミィと同じ状態」にリーチをかけられている!


「ミホぉぉぉっっっ!!!」


 ネメシスは、ヴァルカンのカードでネメシスヴァルカン(以後、ネメシスV)にチェンジして、サトリ進化態に襲いかかる!

 ゲンジは逸る気持ちを抑える。戦いたいが、咆吼だけで動けなくなるのでは、足手まといにしかならない。それならば、ネメシスが提案した「大技で隙に突っ込む」方がマシ。ネメシスが隙を作ってくれることを期待して待機をする。




-地上駐車場-


 ようやく到着をしたジャンヌが地面に片膝を付く。妙な雄叫びが聞こえた途端に力が奪われ、体が僅かに粒子化&蒸発をした。ジャンヌは魔力で編んだ体に魂が込めてある状態なので、魂への攻撃には敏感だ。ジャンヌの体のままでは、雄叫びを浴びただけで体が崩れてしまう。


「くっ!マスターと融合しなければ、これ以上先には進めない!」


 ジャンヌは、戦場と思われる屋上を見上げ、スマホを取り出して真奈への連絡を入れる。


 その後方、美穂からの連絡を受けたトレーラーと数台のパトカーが、サイレンを鳴らしながら駐車場に乗り込んできた。偉そうな刑事の指示で警官達が建物周辺に規制線を張り、雛子の指示でザックトルーパーが出動をする。指示を終えた雛子が美穂に連絡を入れるが応答はない。恐らく戦闘中なのだろう。雛子は、「今は客が避難できる為の時間を稼げば良い」「ザック隊も美穂達も無理はするな」と案じる。

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