38-4・サトリvsバル~セラフ-i発動
-屋上-
HAバルミィは、手数とフットワークを駆使してサトリに肉弾戦を挑む!右フック、左フック、右ストレート、ローキック、頭突き、様々な攻撃を素早く繰り出すが、全て回避をされてサトリには当たらない!
「攻撃が見切られているばる??いや、違うばる!」
バルミィが肉弾戦に転じた途端に、サトリはバルミィの手足リーチの射程圏に踏み込んでこなくなった。「一つ一つの攻撃」を見切っているのではなく“肉弾戦の意思”を見切っているようだ。
「だったらこれは、どうばるっ!?」
バルミィが距離を空けて気合いを溜める!サトリは行動を読んで妨害の為に襲いかかるが、間に合わずバルミィの数体の分身発生を許してしまう!
「ちぃぃっ!」
各バルミィが宙高く飛び上がって旋回をして、四方から一斉にサトリに襲いかかる!やはりバルミィは“判断”から“行動”までが早い!これでは、サトリが思考を読んでも、対応をする前に攻撃を受けてしまう!
サトリは一足飛びで大きく回避!バルミィは飛び上がって、再びサトリを囲むように旋回して襲いかかる!サトリは着地と同時に、バルミィに囲まれないように走り回る!そして動き回りながら考える!
「何人も居るバルカン人が分身なのは把握した。
心を持っているのは、どれだ!?」
(手強いけど、臆病な敵ばるねっ!)
「見付けたっ!随分と舐めてくれるな!本物は、真後ろから来るオマエだ!!」
「ばるっ!?」
サトリは素早いターンで切り返し、助走を付けて空中のバルミィに飛び掛かる!バルミィは「サトリは逃げ回るだけ」と想定していた為に反応が遅れてしまう!慌てて防御の体勢になるが、サトリの体当たりを喰らった!周囲の分身が消えて、弾き飛ばされたバルミィが屋上に落ちる!
着地と同時に、突進をするサトリ!横から、癪に障る“攻撃意思”が発せられる!バルミィ以外の“心”を察知して踏み止まった直後、光の矢がサトリの眼前を通過した!
(外したっ!?)
「・・・この不愉快な心の声は?」
矢の飛んで来た方向に視線を向けるサトリ。塔屋入口で、黄色い鎧武者が弓を構えて立っていた。この心、この嫌な気配、覚えがある。むしろ、この気配だけは忘れることは無い。
「・・・葛城か!?」
「え!?バレてる!?」
「何故、オマエが、そんな格好を!?」
「ばるばるっ!!?」
サトリが急に隙だらけになった!麻由がセラフだと気付いているくせに、麻由の変化に戸惑っている。バルミィは直ぐさま起き上がって、サトリに向かって光弾を放つ!サトリがバルミィの攻撃意思を察知した時は既に遅く、慌てて防御の姿勢になるが光弾が着弾!バルミィは爆煙の中で悲鳴を上げるサトリに向かってフリーズ光線を放った!
「ぐわぁぁぁっっっっっっっっっっっっっっ!!!」
爆煙が晴れ、サトリの凍結像が出現する。それまでは付け入る隙の無かったサトリが、何故、セラフが出現した途端に棒立ちになったのかは解らない。だけど、強敵と思われた猿妖怪は、これで行動不能になった。セラフがバルミィに寄って労をねぎらい、共にサトリを眺める。
「固まったままでも、お祓い、出来るばるか?」
「はい、可能だと思います」
憑いている妖怪を祓って、依り代の海跳を救出する。海跳には麻由の素行はバレてしまった。救出したあと、どうなるのだろう?救出するのは当然だが、救出をするのが怖い。
「麻由?どうしたばるか?」
「い、いえ、申し訳ありません。・・・少し考え事を・・・」
「お祓いが終わるまでは集中ばるよ」
セラフが九字護身法を唱え、目前の宙に縦に4つ横に5つの格子状の線を書いた。そして、空中に掌を翳して清めの力を宿らせる。この掌でサトリに触れて浄化の力を流し込めば、妖気祓いは完了する。
「それは困るな。僕は消滅をするわけには行かない」
サトリの凍結像から闇が発せられる!動けないはずのサトリが、セラフを睨み付けた!
「ばるるっ!?」 「喋った!?」
慌ててサトリに掌を押し当てようとするセラフ!しかし、サトリの体は闇霧化をしてセラフの清めの力から逃れ、大きく間合いを空けた場所に闇が集まって、再びサトリの姿を出現させる!
「ばるっ!?僕の凍結を自力で解いた!?」
「体を闇に変えて、動かなくなった筋繊維を除外して、
再び実体を組めば、造作も無いことだ」
「バカな!
確かに、妖怪だけならば今の説明で整合が付きますが、
依り代まで消えるなんて有り得ない!
冨久先輩が“凍結”から逃れることは出来ないはずです!」
「なるほどな、妖怪だけなら逃れることが可能。そして僕は逃れることが出来た。
信じがたいことだが、それが事実なら・・・つまり、そういう事なんだな」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
サトリの脳内に流入する麻由の心は、サトリの言っていることが理解出来ずに動揺をしている。対するサトリは「信じがたい」と思いながらも、自分の置かれた状況を分析している。
バルミィに凍結をされた時は、かなり焦った。だが、気持ちを落ち着け、「どうやれば脱出できるか?」を冷静に考えた。そして、冷静に立ち戻ったことで、人間として生きた為に、これまで忘れていた「様々なこと」を思い出した。その記憶は「信じがたい」物だったが、目の前に宇宙人が存在して、麻由が別の形に変化している現状を考えたら、「僕もそっち側」という現実を受け入れることができた。
「感情的になっていた僕を立ち止まらせてくれたバルカン人には、
感謝をするべきなのかな?
尤も、僕からの感謝は、オマエ達にとっては、ただの皮肉なんだろうがな」
-回想-
19年前、酒呑童子に惨敗をしたサトリは、上半身だけにされて、鎮守の森公園に捨てられた。命だけは見逃されたが、神の手下(ヤク○)やハンター(ハーゲン)が放置してくれるとは思えない。
〈何処カニ 小サクナッテ 隠レネバナラン〉
実体を維持する妖力もロクに残っていない。サトリは闇に姿を変え、弱々しく飛翔をして隠れる場所を探す。
「ン?人間ノ ツガイカ?」
身籠もった女と、その夫が、安産祈願の為に亜弥賀神社に参拝に来ていた。サトリ(闇化状態)は、木陰に隠れて眺める。ご苦労なことだ。そして、人間とは無駄なことをする生き物だ。胎児の生命力は異常に弱い。アレは世に出る事なく天に還るだろう。神頼みなど何の意味も無い。
だが、人間のツガイがどうなろうと、サトリには関係ない。人間の無意味な行動を鼻で笑い、再び隠れ家を探そうとする。
その時、女の腹に居た生命が、サトリに話し掛けてきた。
〈こっちにおいでよ〉
〈・・・ン?俺ガ解ルノカ?〉
〈うん、解るよ。君、肉体が消えそうなんでしょ?〉
〈余計ナ オ世話ダ〉
〈僕ね、肉体はあるけど、もうすぐ魂が消えちゃうんだ。
僕に生命を与えてくれた人達に会うことが出来ない〉
〈ソレガ何ダ? 俺ノ知ッタ事デハナイ〉
〈だからさ、僕の肉体を君にあげる。だから、君の生命を僕にちょうだい。
僕ね、僕に生命をくれた人達を悲しませたくないんだ〉
隠れ家として適しているのは、念の籠もった道具の中、もしくは、別の生命の中。腹に居る生命が提示した条件は、サトリにとって悪い話ではなかった。
〈オマエノ 意識ガ残ル 保証ハ 出来ンゾ〉
〈構わないよ。さっきも言っただろ。
僕は、僕に生命をくれた人達を悲しませたくないんだ〉
〈・・・フン!ダッタラ 遠慮ナク 利用サセテモラウ〉
サトリ(闇化状態)は、女の体に纏わり付き、腹に宿った生命の中に寄生をした。一定の妖力が回復するまで、しばらくは休まなければならない。隠れ場所を提供された礼に、世に生まれるだけの生命力と、幼子として生きる知能があれば良いのだろう。サトリは、胎児に最低限の思考と生命力を宿らせ、残りは眠りに着いた。
数ヶ月後、純粋な妖怪でも、純粋な人間でもない、人間の肉体と魂を妖力で維持した冨久海跳という赤子が誕生をする。
両親は、海跳の成長を愛でてくれた。海跳は、何故、両親が喜ぶのか理解が出来なかったが、悪い気はしなかった。酒呑童子は「『愛』は下らぬものではない」と言った。サトリは、人間が言葉にする「愛」が何なのか解らない。「愛」を知れば、もっと強くなれるのか?数年後には一定の妖力が回復したサトリだったが、「愛」を理解するまでは人間に潜んで学ぶことに決めた。
-回想終わり-
サトリは、流入をしてくるセラフとバルミィの心から、不自然な変化に気付いていた。セラフ(麻由)が到着をした途端に、バルミィの意識は攻撃ではなく「セラフのサポート」に傾いた。そして、セラフは闘争心は高いとは言えず、攻撃の大半をバルミィに依存した意識を持っている。単純な攻撃意識だけに限定すれば、バルミィ1人が戦っていた時の方が強い。戦力が増えたにも係わらず付け入る隙が多いのだ。
「ケーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!」
咆哮で威嚇をするサトリ!セラフはサトリの雄叫びを聞いて、再び意識が肉体から剥がされそうな錯覚に襲われ、初動に遅れてしまう!
セラフは率先して攻撃を仕掛けてくるタイプではない。思考を読むまでもなく、麻由の“攻撃的”とは縁遠い性格は理解している。何よりも、今のセラフ(麻由)は大きく動揺をして、集中して戦える状態ではなさそうだ。
「先ずは、煩わしそうなバルカン人を潰す!」
HAバルミィのレーザー剣と、サトリの爪が数発ほどぶつかり、サトリが数歩後退をする!
先程の激突で、バルミィはロングレンジからの攻撃は軌道を読まれていた。分身をした時はピンポイントで本体を見抜かれた。肉弾戦を仕掛けたらリーチの外側に逃げられた。サシの勝負では決定打を与える事はできなかったが、2対1の戦闘ならば話が変わる。バルミィの肉弾戦の射程圏の一歩外側が、サトリの存在する位置。観察力の高いセラフならば必ず気付いてくれるはず。だから、バルミィは肉弾戦で戦う。
「ふんっ!仕掛けているバルカン人が囮で、攻撃の本命は葛城・・・のつもりか?
オマエ、葛城麻由という人間性が見えていないんだな。
作戦の詳細は知らんが、警戒する必要は無い」
「ばるっ!?」
バルミィは、作戦が読まれていることと「麻由は攻撃できない」と指摘されたことに驚き、セラフに視線を向ける。セラフは弓に矢を番えているものの、狙いを定めてすらいない。動揺した隙を突き、懐に飛び込んだサトリがバルミィの頭を殴る!直撃を喰らったバルミィは、為す術も無く地面に突っ伏してしまった!
「麻由っ!また、いつもの悪いクセがっ!!」
セラフはサトリの指摘通り攻撃を迷っていた。これは、妖怪を倒して海跳を救う戦いではない。先程のサトリの表現が正しければ、海跳はサトリに憑かれているのではなく、サトリ=海跳ということになる。つまり、妖怪を倒せば海跳は死ぬ。これまで2年間、頼りになる先輩として接してきた海跳を殺すことなど出来るわけが無い。
「冨久先輩っ!こんなの、先輩らしくありませんっ!
どうか落ち着いてくださいっ!」
「僕らしくない・・・だと?よくも、そんな偉そうなことを言えたものだな!
ふざけるなっ!だったら、真実のオマエはなんだ!?
優麗高の生徒達がイメージをしたオマエらしい姿だと言えるのかっ!?
その薄汚れた性根は、優麗高に最も相応しくないだろうにっ!」
「そっ・・・それはっ!」
「僕を・・・優麗高の生徒達を裏切ったオマエに、他人を語る資格は無いっ!!」
サトリは苛立ち、起き上がろうとするバルミィの腹に鋭い爪を突き立てる!そして、貫いたままバルミィを持ち上げ、思い切り屋上床に叩き付けた!更に、爪に力を込めて、バルミィの腹に空いた傷口を痛めつける!
「ばるぅぅぅぅっっっっっっ!!!」
「ふんっ!動揺すればするほど解るぞ!
宇宙人の生態とは不思議なものだな!
オマエ(バルミィ)は、脳さえ破壊されなければ復活が出来る!
だが、肉体が傷付けば痛みを感じる!
そして、痛みを感じるほどに動揺して、心が無防備になる!」
「ミ、ミーメさんっ!」
また、仲間の足を引っ張ってしまった。自責の念に駆られるセラフ。弓矢を構えるが、バルミィを盾にされてしまう。動揺をしたセラフは、薙刀を召喚してサトリに突進をするが、腰の引けた慣れない接近戦なんて当てられるわけがない。アッサリと薙刀の柄を掴まれ、力任せに引き寄せられて、突き飛ばされてしまう。盾にされたバルミィは藻掻いて抵抗をするが、再び地面に叩き付けられる。バルミィの動揺が、サトリに“心”を読まれやすくする。
「なるほどな、葛城を上手くフォロー出来ない苛立ちが感じられるぞ!」
「ばるっ!?」
「ん?桐藤美穂に対する劣等感?
宇宙人が、あの退学寸前だった生徒への劣等?少々以外だな」
「ばるるっ!?・・・なんでそれを!?」
「源川紅葉の強さに勝つ自信も有る、葛城麻由の頭脳に勝つ自信も有る。
ジャンヌダルクよりも器用に戦う自信も有る。
だが、桐藤美穂の機転には、どうしても勝てない」
「オ、オマエっ!!」
「地球人を凌駕する戦闘力と知能と文明を自負しているのに、
仲間達を桐藤ほど上手く扱えない!
そうか・・・オマエ達のトップは、あの劣等生だったのか!?」
「ばっ、ばるるぅぅ・・・」
サトリに心を見透かされて1つも反論できない。この妖怪は心を読めるようだ。こんな奴に、どうやって勝てば良い?バルミィがそう考えた直後から、意識が朦朧として、瞳が光沢を失い、徐々に体が動かなくなる。
バルミィの体から、バルミィの魂が浮き上がっている。物理的な攻撃ではなく、無防備な魂に対する攻撃では防御の手段が無い。バルミィは肉体を破壊されても再生を出来るが、肉体から魂を抜かれたら再生は出来ない。
「・・・くっ!このままでは、ミーメさんがっ!!」
魂が肉体から離れていられる時間は限られている。長時間、離れたままでいると肉体が朽ち始めて、魂が戻れなくなる。それに、魂は防御力が無いので、攻撃をされたら簡単に潰されてしまう。
「先輩とは戦いたくない・・・。
でも、このまま勝手をさせておくワケにもいかない!」
意を決したセラフは、両の拳を握りしめて空を見上げ、雄叫びを上げた!先ずは“一度目の理力”を発動させ、放出を安定させた状態で気持ちを落ち着けて“二度目の理力”を発する!
「・・・ん?」
サトリはセラフの変化を感じ取った。これまでの受動的な理力とは違い、超攻撃的な理力を放出している。注視して構えるサトリ。
金色のセラフインドリア(セラフi)発動!神性が上昇し、サトリに思考が読めなくなる!経験値が上がって以前より内在理力が増えたが、それでもガス欠までのタイムリミットは80秒!




