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32-4・バルキリーとハスラーⅢ~麻由の祖父

 その時・・・遠くから、猛々しい排気音が近付いてくるのが聞こえる!

 4人は、同時に排気音の方に視線を向けて驚いた。無人のバイクが、こっちに向かって突っ走ってきて、セラフと死神の間に割って入って停車をする!


「バイクが勝手に走ってきたばる?」

「さっき公園前を走ってたバイクだな。ここに来るつもりだったのか」

「マユユのお爺様と一緒に写真に写っていたバイクではあるまいか?」

「そ、そんなバカな!?・・・で、でも!」


 セラフ(麻由)は感じていた。眼前のスズキ・TS250ハスラーⅢには誰も乗っていないが、懐かしい雰囲気が乗っている。


「なんなの?」


 上空から黒焦げのサマナーホルダが飛んで来て、バイクの50センチくらい上空で停止する。いや、いつの間にか、黒い人影がバイクに跨がっていてキャッチしたのだ。人影がサマナーホルダを翳す。


「変身!」


 人影の全身が乳白色の光に包まれ、朱色を基調としたバッタモチーフのプロテクターが装着される!

 変身プロセスはネメシスと似ているが、ネメシス(美穂)は、こんな姿の異獣サマナーを知らない。


〈おぉ・・・おぉぉぉぉっ・・・オマエは・・・異獣サマナーアポロ〉


 アポロと呼ばれた戦士は、セラフ(麻由)を眺めながらスズキ・TS250ハスラーⅢから降り、死神に対して構える!


「ワルキューレ首領・バルキリー!50年の時を経て、この世に迷い出たか!!」

〈おのれ、忌々しきアポロッ!!〉


 バルキリーと呼ばれた死神が、アポロに向かってデスサイズを振り下ろす!アポロが気合いを発して、手甲でデスサイズを受け止めた!そして、スケルトンと交戦中のネメシス達に指示を出す!


「スケルトンは叩いただけでは倒せんぞ!焼き払え!!」


 指示を聞いたHAバルミィは、スケルトンに向けて光弾を発射!ジャンヌは、黒炎を纏ったフィエルボワソードをスケルトンに叩き込む!スケルトン達は一撃を喰らっただけで粉砕されて崩れ落ち、塵と成って消えた!ネメシスはヴァルカンのカードを翳して、ネメシスVにフォームチェンジ!Vハルバードを装備して先端から発せられる炎を飛ばして、スケルトンを粉砕する!


「攻略法が分ければ楽勝だな」


 それを見たアポロが呟いた。


「この時代のヴァルカンは、あの白い戦士が所有していたのか」


 ようやく紅葉と真奈が現地に到着。堤防斜面を駆け下りて、セラフと並んで戦況を見守る。

 アポロとバルキリーは、しばらくは力の鬩ぎ合いをしていたが、やがてバルキリーが不気味に笑い全身から黒い毒ガスを放出した!


「危険な毒ガスだ!君たちは下がれ!」


 アポロの指示を受けたネメシス&ジャンヌ&バルミィは、紅葉達と合流して一緒に堤防上まで後退しようとする。セラフだけがボケッと突っ立って戦いを見守っていたので、ネメシスとジャンヌが腕を掴んで無理矢理に引っ張って退避をする。


「ボケッとすんな麻由!」

「マユユは、突っ立ったまま毒ガスを浴びるきか!?」

「だ・・・だけど・・・あの声」


 聞き間違いかもしれない。何処にでもある似た声かもしれない。だけど、セラフは、アポロの声と喋るクセに懐かしさを感じていた。


「うはははっ!この毒ガスは全てを腐食させ、生物を数秒で死に至らしめる!」


 発信源で毒ガスを浴びるアポロ!アポロとバルキリーの周りの草木が、瞬く間に枯れて朽ちていく!しかし、アポロには全く効いていない!


〈なに?何故だ?〉

「ふっ!ワシは、腐食する肉体を持っていないからな!」


 アポロが気合いを発すると、全身が炎で包まれて、中からプロテクターと装飾が大きく派手になった姿=アポロ・ヴァルカンが出現した!


「うおぉぉぉっっっっ!!!」


 アポロVの拳から炎を放出!バルキリーの腹に連打を叩き込む!ダメージを受けたバルキリーは、一足飛びで後退して川辺に着地!


〈おのれ・・・忌々しきアポロッ!〉


 アポロを睨み付けるバルキリー。憎しみの言葉を残し、全身を黒い霧に変えて、川面の反射の中に吸い込まれるようにして消える。やがて、反射が消えていつもの山頭野川に戻り、辺りを支配していた邪念は治まった。バルキリーと呼ばれた死神は去ったようだ。


 紅葉達は安堵はしたものの、何が起きているのか全く把握が出来ない。

 突然出現した死神は何者?助けに入ってくれたアポロってサマナーは何者?アポロもヴァルカンフォームになったけど、ヴァルカンのカードって2枚もある?何が何だか解らない。

 特にセラフは「アポロの血族」扱いをされて一方的に狙われ、アポロの声に聞き覚えがあり、頭の中が疑問だらけになっている。


「・・・あ、あの?」


 変身を解除した麻由が、山頭野川を眺めていたアポロに近付いて声を掛ける。アポロは振り返り、無言のまま歩み寄って、麻由を見つめる。敵意は感じられないので、美穂&バルミィ&ジャンヌも、変身を解除する。


「麻由・・・・・大きくなったな」

「・・・その声・・・・・・やっぱり・・・・」

「あぁ、そうだ。」

「お爺ちゃん!?」

「色々と心配でな・・・思い掛けずに、こんな姿で蘇っちまったよ」


 懐かしい声を聴いた麻由が涙を浮かべる。泣く麻由の頭にアポロの大きな掌が置かれる。紅葉達は警戒を解き、ちょっと奇妙な家族の対面を微笑ましく見つめていた。麻由が、アポロを見上げながら訊ねる。


「やっぱり、お爺ちゃんが異獣サマナーだったんですか?」

「いや、違うのだがな。ワシが、何故この姿で蘇ったのかは、ワシにも解らん。

 だが、ワシの事など、どうでも良い。元気そうだな、麻由」

「私なら元気です。お爺ちゃん、何が心配で戻って来たの?」

「それはな・・・」


 言いかけて黙り込み、しばらく空を見上げた後、紅葉&美穂&真奈&バルミィ&ジャンヌを見回す。


「麻由を巻き込むのは止めてくれんか。麻由は争いが出来る子じゃないんだ」

「・・・んぁ?」 「え?」 「ばるっ?」 「はぁ?」 「なに?」

「ちょっと、お爺ちゃん!?いきなり、何を言い出すの?」

「麻由は黙ってなさい」


 抗議しようとした麻由だが、やや強い口調で遮られて黙ってしまった。


「もう1度言う・・・・麻由を危険な事に巻き込まんでくれ」


「いや、そう言われてもなあ・・・・麻由が自分で決めて加わったんだし・・・」

「無理やり一緒に戦わせてるような言い方は心外ばる」

「そぅだょぉ~っ。マュゎ自分でセラフになって戦ぅ事に決めたんだょ~っ」

「マユユは、かけがえのない仲間だ!」

「そうですよ!麻由ちゃんは、愉怪な仲間達の一員だよ!

 今さらそんな事言われたって困りますよ!」


「・・・・孫娘が心配で戻ってきた年寄りの願いを、聞き入れてはもらえんのか?

 君達と争う気は無かったんだが・・仕方ない」


 アポロは麻由と仲間達の間に立ち、愉怪な仲間達を睨み付けた!途端に、アポロの全身から闘気は発せられる!


「お爺ちゃんっ!」

「麻由は下がっていなさい!」


 麻由は、思い掛けない展開の連続に、どう対処するべきか解らずに動揺をする。


「マユのじいちゃん、ヨーカイに憑かれてるっ?」


 ゲンジ、ネメシス、HAバルミィ、マスクドジャンヌ、変身完了!それぞれの武器を手に構えた!

 アポロが突進をしてきた!ゲンジが邪今剣(小刀)を装備して先陣を切る!ジャンヌが剣を握って後に続き、バルミィは宙を飛んでアポロに向かって右手甲の砲門を向ける!

 だが、ゲンジ達は「相手が麻由の祖父」と知っている。本気で退治をすることは出来ないので、無意識に闘志を鈍らせてしまう。

 アポロは、そんな心の隙を見逃さない。ゲンジが突き出した邪今剣の刀身に掌を当てて切っ先をずらし、反発力を利用して片足を軸に一回転をして、ゲンジの後頭部に回し蹴りを叩き込んだ!


「んわっ!」


 軽く悲鳴を上げて前のめりに突っ伏すゲンジ!突進中のジャンヌが、一瞬だけゲンジの方に視線を向ける!その僅かコンマ数秒の隙に、アポロに懐に飛び込まれた!パンチの連打がジャンヌに叩き込まれる!


「ぐぅぅっっっっ!!」


 アポロは体勢を崩したジャンヌを盾にしてバルミィ側に向けた!これでは、バルミィは光弾を放てない!


「おぉぉぉっっっっ!!!」


 いつの間にかアポロは、空中のバルミィの背後に廻っていた!ジャンヌの背後に隠れたのは、盾にしたのではなく、姿を見失わせる為だった!


「ばるっっ!!!?」


 アポロは、バルミィの首にカニばさみをかけて空中で1回転!突然の攻撃に対応できないバルミィは、為す術も無く地面に叩き付けられてしまう!


「こんにゃろぉぉぉっっっ!!」


 その間に体勢を立て直したゲンジが、アポロに向かって突進!小刀の斬撃と徒手空拳を交えて攻撃をするが、アポロは「素人の攻撃」など全てを見切って楽々と回避!


「その様な考え無しの力押し・・・ワシには当たらん!」


 アポロはローキックでゲンジの体勢を崩し、炎を纏った拳をゲンジに叩き込んだ!弾き飛ばされて地面を転がるゲンジ!素早く立ち上がって、闘争心を露わにして構える!

 一方、少し離れて、冷静に一連の戦闘を眺めていたネメシスは、マスクの下で冷や汗を流した。


「・・・幽霊・・・か?」


 アポロは、目で追えないくらい素早く動いているわけではない。攻撃をした後、一度消えて、次の標的の懐に出現をしている。だから、ジャンヌの懐や、バルミィの背後を制することが出来たのだ。物理的な“移動”をしない相手を、どう捕らえれば良い?


「ジャンヌ、バルミィ!オマエ等は、倒すことは考えなくて良い!

 お互いをフォローして、2人でソイツ(アポロ)の動きを止めろ!」

「ばるっ!」 「承知した!」

「紅葉!ソイツ(アポロ)の動きが止まったら、渾身の一撃をくれてやれっ!

 解ってるだろうけど、手を抜いてどうにかなる相手じゃないぞっ!」

「んっ!」


 この作戦が有効かどうかは解らないが、動きが読めない敵を、どうにか止めて大技を叩き込む以外の手段は思い付かない。相手が幽霊の類いなら、ゲンジの神鳥が掠っただけでも確実にダメージを受けるはずだ。

 ホントは、紅葉と同等の浄化能力を持つ麻由の力も借りたいが、「身内にトドメを刺せ」とは言えないので、あえて作戦からは外した。


 ジャンヌがアポロに向かって突進!同時に、バルミィがジェダイト弾(光弾)を発射!消えて回避したアポロは、ジャンヌの眼前に出現!しかし、動きを予想していたジャンヌは、素早く突進にブレーキをかけて後退してアポロとの距離を空ける!そして、バルミィが次の光弾を放った!アポロは再び消えて、今度はバルミィの目の前に出現!


「おぉぉぉっっっっっっっ!!!!

 ノイエ・ペティ・ディアブル(黒炎の小悪魔達)!!!」


 ジャンヌが投げた6本のナイフが、不規則に飛び回りながらアポロに襲いかかる!アポロは、辛うじて体を捻って3本のナイフを回避して、残る3本を拳で叩き落とした!


「んぁぁっっっっっっっっっ!!!」

「ぬぅぅっっ!!!」


 ナイフの迎撃の為にアポロの動きが止まった!次の瞬間、白炎の神鳥が翼を大きく広げてアポロに向かって飛ぶ!


「ウルティマバスタァァァッッッッッ!!!!!」


 さすがのアポロも「軽く受け流せる技ではない」と判断して構える!ジャンヌ&バルミィ、少し離れて状況を見ていたネメシス、そして発動者のゲンジは、「相手アポロが死者ならば、神鳥の一撃は確実に有効」と考えていた!

 神鳥の体当たりで弾き飛ばされるアポロ!


「ぬぉぉぉぉっ!!!」


 しかし、空中で体を捻って着地!地面に足裏を滑らせながら体勢を立て直して、神鳥に向かって突進をする!弾き飛ばされたのではなく、神鳥の突進力を利用して距離を開けたのだ!アポロには神鳥の浄化の力は届いていなかった!


「んぁぁっっっっっ!!!」 


 神鳥がアポロに向かって突っ込んでいく!一方のアポロは力強く地面を蹴って、跳び蹴りの体勢になった!


「うおぉぉっっっっっ!!サイクロンキックッッ!!!」


 大技同士の正面衝突!アポロは打撃点から少し押し戻されて地面に着地!強烈な跳び蹴りを食らったゲンジは、纏っていた白炎を撒き散らしながら十数m弾き飛ばされて地面に墜落した!


「マジで!?」 「ばるるっ!?」 「なにっ!?」 「ウソでしょ!?」 

「お爺ちゃんっっ!!紅葉っっ!!!」


 ネメシス&バルミィ&ジャンヌ、そして真奈と麻由が、生唾を飲んで状況を眺める。一撃必殺オーバーキルのウルティマバスターが押し負けて弾き返される光景なんて、今まで見たことが無い。

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