31-2・愉怪出動~怜香救出
気持ちを切り替えた美穂は、強い意志を宿した視線で仲間達を眺めた後、手に持っていた封筒を見つめる!
「確かめてやるよ!・・・何が出てきたって、後悔はしない!」
「そのフウトウ、何ばる?」
「昔の知り合いの・・・な」
仲間達から勇気をもらった。美穂は、深呼吸をして覚悟を決めて、封筒を破く。ボールペンとメモ帳とか、スマホとか、出先で送ろうとした絵ハガキとかティッシュとか色々と転がり出てくる。それと一緒に、見憶えあるけど少し違うモノが転がり出てきた。
「・・・これ?」
黒焦げになったサマナーホルダだった。
「真次郎がサマナー? 」
恐る恐る手を伸ばしてホルダを手にして眺め、カードを1枚抜いてみる。ネプトゥーと同質のカードで【VULCAN】と表記されていた。
「地球語で“ヴァルカン”て書いてあるばるよね」
「・・・うん」
「ローマ神話の火の神だな」
「お知り合いもサマナーだったのですか?」
「は、初めて知った」
「これで美穂さんが強くなるの?」
「・・・多分」
「ミホ、ボケッとしちゃってダイジョウブ?」
「ちょっと・・・いや、かなり驚いてる。・・・でも、これで戦える」
‘“ヴァルカン”のカードを自分のサマナーホルダに収納し、他のカードや黒焦げのホルダは封筒に収めた。
「よ~し・・・やるぞっ!今度こそ、あたしの偽物を懲らしめる!」
「んっ!」
「そのつもりで頑張ります!」
「任せて下さい!」
「ばるっ!」
「承知!」
「あたしと紅葉は、インバージョンワールドに入って偽物を探す!
バルミィと麻由はペアで、真奈とジャンヌはいつでも融合できる状態、
こっちの世界で偽物を探してくれ!」
「時間制限の厳しい紅葉が、いきなりインバージョンワールドですか?」
「偽物は、気に入らない奴をインバージョンワールドに引き摺り込んで、
時間いっぱい怖がらせながら消滅するのを眺めて楽しむと思う。
だから、多分、標的にされた人は、インバージョンワールド内にいる」
「なんで、そう思うの?ミホの勘?」
「すげームカ付くヤツが居た場合、あたしだったら、そうするからだ!
・・・まだ、やったことは無いけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」×5
紅葉&真奈&麻由&バルミィ&ジャンヌが絶句する。凄く説得力のある説明だ。
「発見したら、紅葉はこっちの世界に戻って麻由に場所を教えてくれ。
その後は、麻由が、こっちの世界とインバージョンワールドを繋げて、
紅葉かバルミィが、中に入って標的にされた人を救出するんだ」
「なるほど、理に適ってますね!」 「了解ばるっ!」
「ところで、標的にされた人って、だ~れ?」
「多分、Nジョルナーレの葵って記者。
さっき、ちょっとイラッとさせられて、そのあと偽物は私から離れたからさ」
「うへぇっ!あの、バルミィやミホの事をゴチャゴチャと聞いてきた女の人!?」
「そう、あの小煩い女記者
素性がバレるのは避けたいんだけど、だからって見捨てるわけにもいかない。
バレたらバレたで、その時に考えるとして、先ずは全力で救わなきゃ!」
救わずに後悔をするより、救ってから後悔するかどうか決める。美穂の考えに異議を唱える者は無し。
先ずは、美穂と紅葉が変身をして、ゲンジが雲外鏡の能力を付加して、ネメシスと共に窓ガラスからインバージョンワールドに飛び込む!
-インバージョンワールド-
ゲンジ(紅葉)が召喚する☆マシン綺羅綺羅☆(モトコンポ)は、ゲンジの意思に応じて車長を変化させられる。座席シートを2人乗りにした☆マシン綺羅綺羅☆をゲンジが駆り、ネメシス(美穂)が後に乗って、捜索をする。優麗高前を通過したゲンジが、違和感を感じて文架大橋の方向を見つめた。
「んぁっ!?あっちになんかあるっ!」
「行ってみよう!」
先日、初めてインバージョンワールドに入った時、ゲンジの索敵力は「まるで生命力を感じない冷たいだけの世界」と感じた。それは今も同じで「冷たいだけで、あまり長居をしたくない空間」と感じている。
だけど、後に1つ(ネメシス)と、文架大橋の方向にもう1つ、暖かい物を感じる。ゲンジは、インバージョンワールド内に存在する生命力を「冷たい世界にある暖かい物」と認識できるようだ。「もう一つ」が葵怜香かどうかは解らないが、インバージョンワールドに存在しないはずの生命力という事は解る。
ゲンジがインバージョンワールドに滞在できる時間は、とても短い。だが、マシンの速度を上げれば、文架大橋まで行って確認する事は出来そうだ。ゲンジとネメシスを乗せた☆マシン綺羅綺羅☆改が文架大橋に向かって突っ走る。
-インバージョンワールド・文架大橋-
文架大橋の上に、車が停車しており、直ぐ脇の歩道に、自身の体の異変に気付いて動揺をしている怜香と、狼狽える女記者を楽しそうに眺める鏡像の美穂の姿がある。
「いたっ!やっぱり、女記者さんだっ!」
☆マシン綺羅綺羅☆を道路の真ん中に駐めて、鏡像の美穂に駆け寄って身構えるゲンジとネメシス!
「白い騎士と謎の鎧戦士?あなた達は一体!?」
「やれやれ、あとで誤魔化すのが苦労しそうだな。
助ける前に、『助ける代わりに何も聞かない』とかって取引したいくらいだ」
怜香を眺めて愉悦に浸っていた鏡像の美穂が、振り返ってゲンジとネメシスを確認して、不敵な笑みを浮かべる。
「気付くの早いね。さすがは本物のあたしだ。
へぇ・・・紅葉も一緒に来たんだ?」
「来ちゃ悪ぃかっ!
今回ゎ、ァタシも一緒なんだから、ミホをボロボロになんてさせないぞっ!
今度ゎ、ァタシがオマエのことをボッコボコにしてや・・・・ぶぅっ!」
ゲンジが突っ掛かっろうとしたので、横に居たネメシスが、手でゲンジの顔面を押さえ付けて止める。
「役割を忘れるな、アホンダラッ!」
「んぁっ!?」
「オマエが真っ先にすることは、外部との連絡だろうに!
このまま放置してたら、女記者が死ぬぞっ!」
「あぁ!そうだったっ!」
ゲンジは、ネメシスに言われた通り、車のサイドガラスに飛び込んで、リアルワールドに戻っていく。
残されたネメシスが、鏡像の美穂を睨み付けた。鏡像の美穂は不敵な笑みを浮かべ、サマナーホルダを翳して異獣サマナーエリスに変身する。
「ふふふ!第2ラウンドの開始だな!」
「狙うなら、周りを巻き込まず、あたしだけを狙え!このクソがっ!」
「じゃ、いくぞ!・・・と言いたいところだけど、
本物のあたしなら、あたしの考える事が解るよな?
正々堂々なんて言葉が似合わない事を・・・さ」
「・・・なに?」
「さっき、あのまま、紅葉が飛び掛かってきてたら、どうしてたと思う?
あたしが、時間稼ぎすれば自滅する紅葉と正面から戦っていたと思う?
そんなわけ無いよね?あたしはアンタなんだからさ。」
「オッグッグ」 「オッグッグ」 「オッグッグ」 「オッグッグ」
斧を持った身長2m越えの筋肉質なモンスター6体が出現してネメシスを囲む!
「ふふふ、あたしの友達のオーク君達!
アンタは仲間が居るのに、あたしは1人ってのは不公平だから、
暇な時に手懐けておいたんだ。
アンタとの再戦で使って、アンタを苦しめる為にね!」
「・・・チィィ!さすがはあたしの偽物。超ムカ付く!」
ネメシスは、四方を囲むアナザービースト・オーク×6に対して構える!
-リアルワールド・文架大橋-
怜香の車の窓から飛び出したゲンジは、現在地を伝える為に、Yスマホで麻由に連絡をする。
「マユ!早く来て!文架大橋の上!!」
〈やはり『この辺』だったのですね。紅葉こそ、こちらに来られませんか?〉
「んぁっ?近くに居るの?」
〈歳埜河原運動場(文架大橋西側の河川敷)にいます!
女記者さんの車を発見して、戦場の予想が付いたので、
人目に付かない場所で待機していました!〉
「んっ!リョーカイっ!」
ゲンジは、急いで西に向かって走り、真下の風景が川から地面に変わったところで、橋から飛び降りて着地!周囲を見回して、橋の下で麻由&バル&真奈&ジャンヌを見付けて駆け寄る。
「ここで、インバージョンワールドの出入口を開きます!」
「ボクたちは先に行くばるっ!」
「紅葉ちゃん、お疲れ様。
オニギリ買ってあるから食べてねっ!」
「ありがとっ!マナ!」
「マユユ、お願いします!」
麻由がHスマホを翳し、真奈とジャンヌは融合をして、一定のポーズを決めて変身!聖幻ファイターセラフ、マスクドウォーリアラピュセル登場!
セラフが、ゲンジから借りた雲外鏡をキーホルダー化して静薙刀に取り付け、手で印を結んで曼荼羅を出現させ、理力を込めた薙刀の切っ先を曼荼羅を通して川面に突き立てた!薙刀の切っ先側半分が水面を通して向こう側の世界に入り、川面が歪んで乳白色化をしてインバージョンワールドの入口が出現する!
「入口を形成していられる時間は限られていますから、気を付けてくださいね!」
食糧補給中の紅葉を残し、バルミィとラピュセルが、セラフが開けた入口に飛び込んだ!
-インバージョンワールド・文架大橋-
「オッグッグ」 「オッグッグ」 「オッグッグ」 「オッグッグ」
ネメシスがオーク①の拳を回避!しかし、背後に回り込んだオーク②の蹴りがネメシス(美穂)の体勢を崩し、オーク③の体当たりで弾き飛ばされる!地面を転がるネメシスに、オーク④が覆い被さってきた!ネメシスは足をバタ付かせて、どうにか脱出するが、オーク④はしつこく絡んできて、ネメシスを羽交い締めにする!他のオーク達が寄ってきた!
「くっ!群がるな、筋肉ダルマ共っ!」
仰向けに倒されて全身を押さえ付けられるネメシス!
「はぁぁぁっっっっっ!!!テュエ・ディユ・セルパン!!!」
上空から、蛇のように伸びる光が降りてきて、オーク達を弾き飛ばした!マスクドライダーラピュセル(ジャンヌ+真奈)が、馬に跨がって空から駆け下りてくる!光の蛇は軌道を変えて、後方で高みの見物をしていたエリスに襲いかかった!
「ふふっ!ようやく来たか!」
エリスは葵怜香から離れ、飛び上がって回避するが、光蛇は追尾する!エリスは黒鳥モンスター=ジャークスワンを呼び出し、羽ばたきで黒羽を舞い上がらせて姿を隠す!標的を見失った光蛇は上空に伸びて消えた!エリスの姿は、照明灯の上に出現!ネメシスを見下ろして「この程度の不意打ちなど予想していた」とせせら笑う。
・・・だが!
「ばるばるっ!ハナっから、オマエに当てるつもりなんてないばるっ!
攻撃の目的は、オマエやモンスター共を遠ざける事ばるよっ!」
上空からバルミィが急降下!フリーになった怜香を抱きかかえて上空に飛び上がり、山頭野川に向かって更に急下降!川に突っ込む行為に対して怜香が悲鳴を上げるが、バルミィはお構い無しに“白く歪んだ水面”に飛び込んだ!
怜香のリアルワールドへの救出は成功をする!
一方、ラピュセルは、ネメシスの隣に着地!ネメシスと背中合わせになり、照明灯の上に立つエリスの姿を確認してから、オーク達に対して構える!更に、怜香をリアルワールドに送り届けてトンボ返りをしてきたバルミィが、アーマードを装着して、ネメシス&ラピュセルの隣に立った!息を合わせて、一斉に飛び掛かる!
ネメシスは、オーク①&②と交戦しながら、照明灯の上で高みの見物中のエリス(鏡像の美穂)をチラ見した。叩き潰したい本命が戦いに参加をする気配が無いのが面白くない。
オークは警戒するほどの難敵ではないが、オーク戦だけで時間が消耗するのはマズい。バルミィとラピュセルが此処で戦える時間(セラフがインバージョンワールドに干渉できる時間)は限られているのだ。
「時間稼ぎが前提の作戦か。
こうなりゃ、ちょっと早いけど切り札を投入するしかない!」
ネメシスはオーク①&②を退け、手摺りから身を乗り出すようにして山頭野川を眺め、大声で叫んだ。
-リアルワールド・歳埜河原運動場-
〈来い!紅葉!!〉
美穂の声が、インバージョンワールドからセラフの作った出入口を伝って、紅葉の耳に届く。幾分かは体力を回復させた紅葉が立ち上がり、セラフの横に立って水面を見つめ、Yスマホを正面に翳してゲンジに変身をする!




