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28-4・襲われた真奈~もう1人の美穂=エリス

―現在・リバーサイド鎮守―


 真奈と“美穂”はトイレに居た。他には誰も居ない。大きな鏡がある洗面カウンターの前で真奈が手を洗っており、後ろを通過した“美穂”が、鏡に映った真奈を見つめて微笑む。視線に気付いた真奈が、振り返って“美穂”を見た。しかし、真奈の後ろに“美穂”は居ない。真奈は辺りを見回して首を傾げる。


「・・・あれ?」


 だが、鏡の中には“美穂”が居る。不敵な笑みを浮かべ、鏡から上半身を出して、背を向けている真奈に手を伸ばす。


「きゃぁっっ!!」


 背後から掴まれ、鏡の方に引き寄せられる真奈!


「み、美穂さん、どうしたんですか!?」

「真奈を鏡の中に招待してあげたくてね」

「鏡の中ってっ!?」


 様子がおかしい。美穂はS気質でちょっぴり意地悪な時があるが、こんな露骨な嫌がらせはしない。いや、嫌がらせとは思えない。本気で鏡の中に引き摺り込もうとしているようにしか思えない。

 真奈は、本日の“紅葉の弁当事件”は詳しく聞いていないが、昨日の“麻由の宿題事件”で「美穂のフリをした何か」が暗躍しているのを知っている。


「まさか・・・美穂さんの偽物!?」

「偽物なんて失礼だな~。あたしだって美穂だよ!」

「ち、違う!美穂さんじゃないっ!!」


 真奈の体が、徐々に鏡の中に引き摺り込まれていく!真奈は懸命に抵抗をするが振り解くことが出来ない!

 鏡の中に入ったことは無いが、直感的に「ヤバい」と感じる。


「助けてっ!ジャンヌさんっ!!助けてぇぇっっっ!!!」


 真奈は、半身を鏡に取り込まれた状況で、必死になって手を伸ばす!



-山頭野地区の公道-


 紅葉が駆るモトコンポ(速度リミッターカット)と、ジャンヌが駆って麻由がタンデムに乗るユニコーンバイクが、リバサイ鎮守に向けて突っ走る!しかし、真奈の声を感じたジャンヌがフルブレーキで急停止!


「んぁっ?どうしたの、ジャンヌ?」

「すまない!マスターの命令権が発動されたので、先に行きます!」


 ジャンヌが真奈の意思に応じると同時に、ジャンヌの全身が光りに包まれて、紅葉&麻由の眼前から消滅をする!



-リバサイ鎮守のトイレ-


 青い光の出現と共に衝撃波が渦巻き、トイレブース(トイレを囲む壁や扉)が拉げ、洗面カウンターの鏡が粉々に砕け散る!鏡の中に引き込まれかけていた真奈は、解放されて脱力して倒れ、光の中から出現したジャンヌが真奈に寄って介抱をする。


「マスター!無事ですか!?」

「ジャンヌさん・・・ありが・・・とう」


 礼を言って意識を失う真奈。召喚の命令権を何度も重ねて発動をして、体力を使い切ってしまったのだ。割れた鏡の破片で各所に掠り傷が出来て血が滲んでいる。だが、命に別状はなさそうだ。

 ジャンヌは、安堵の表情を浮かべると、真奈を抱きかかえてトイレから出る。


「ちぇっ!あと少しだったのに」


 “美穂”が、邪魔者ジャンヌを睨み付けて舌打ちをして、姿を消す。




-上空-


 美穂とバルミィが、リバーサイド鎮守の上空に到着。フードコートから1番近い出入り口を目指して高度を落とす。


「紅葉のアホ~~っ!!!

 『あたしと真奈が一緒にリバサイ行く』って聞いたのに、

 あたしが教室に来たの疑問に思わんのか~~っ!!!」

「八つ当たりしても仕方ないばる。とりあえず行ってみようばるっ」


 屋上駐車場に着地して、塔屋に飛び込み、階段を駆け下りる美穂とバルミィ。フードコートを目指そうとするが、途中のトイレで人集りに気付いて足を止める。野次馬に聞いてみると、トイレ内で謎の爆発が発生して、高校生らしい女の子が巻き込まれ、友人に伴われて、従業員用の医務室に運ばれたらしい。


「おいおい、それって!」

「嫌な予感しかしないばるっ!」


 美穂とバルミィは、近くに居た従業員に場所を聞いて、医務室に駆けていく。




-数分後・医務室-


 嫌な予感は的中していた。医務室のベッドで、掠り傷だらけで意識を失った真奈が寝かされ、ジャンヌが付き添っていた。今は、応急的な止血をして、救急車を待っているところだ。


「何がどうなったばるっ?」

「マナが命令権を発動して、私を呼びました。

 私が召喚された時、マナは鏡の中に引き摺り込まれかけており、

 かなり危機的状況だったようです」

「ちぃぃっ!誰が真奈を、そんな目に!」

「確認は出来なかったばる?」

「申し訳ありません。

 マナの救出を最優先にしたので、確認は出来ませんでした。・・・ですが」

「なんだよ?」

「命令権発動と共に、マナの意識が流入した際に、

 『ミポリンに騙された』という絶望を感じました。

 おそらく、マナを鏡の中に引き摺り込もうとした者は・・・」

「美穂のフリをした奴・・・ばるね」


 美穂は怒りに震える。真奈は、少し恩着せがましくて鬱陶しいところが有るが、誰よりも“愉怪な仲間達”を大切にしているし、美穂を慕う心は本物だ。「美穂のフリをした何か」は、その信頼を利用して最低な事したのだ。


「くそっ!」


 間もなく救急隊員が訪れ、真奈をストレッチャーに乗せて運び、美穂とバルミィとジャンヌは一緒に救急車に乗って最寄りの救急病院に向かう。




-文架大橋東詰の交差点-


 紅葉のイメージによって召喚された“車長の2人乗り使用になったモトコンポ”に跨がった紅葉と麻由が、信号待ちをしていたら、ジャンヌからのメールが入ってきた。

 後部席の麻由が確認をすると、「真奈が負傷 救急車で病院に向かっている」と表示されている。直後に、サイレン音が聞こえて、リバサイ鎮守側から走ってきた救急車が交差点を右折して東に向かった。


「あの救急車かもしれません。追いましょう」


 信号が青に変わったので、紅葉と麻由を乗せた変形モトコンポは、直進をしてスピードを上げる。




-救急車-


 美穂が、真奈に付き添いながら、悔しそうに窓ガラスを見つめる。先程とは違い、美穂の姿はガラスに映っている。


「あたしのフリをしたヤツは出現していないって事か?目的は何だ?」


 直接的には仕掛けず、麻由、紅葉に続いて、真奈までが追い込まれた。その手段は、それぞれの最も脆い部分を的確に突く手段。美穂は、彼女達が仲間だからやらないが、その手段を思い付くことは出来る。もし美穂が、手段を選ばずに彼女達を潰す気になれば、同じような手段を使う可能性は高い。つまり、「美穂のフリをした何か」の思考は、美穂にソックリだ。


「・・・くっ!ムカ付く!」


 バルミィから宥められて幾分かは落ち着いたが、腹の虫が治まらない。美穂のいない場所にしか出現しないのが気にくわない。美穂は、凄んだ表情で窓ガラスに映る自分を睨み続ける。


「いつ、どんなタイミングで、ヤツは出現する?

 ヤツが出てくると、あたしは鏡に映らなくなるから、

 鏡の中の自分を監視していれば、必ず出現するタイミングは解るはずだ」

 

 やがて、救急車は文架総合病院に到着。ストレッチャーに乗せられた真奈が運ばれ、美穂とバルミィとジャンヌが付き添う為に後に続く。


「!!!!!!?」


 美穂は、搬入口のガラス扉に映った自分が、別の動きをしたような気がした。立ち止まり、ガラスを見つめる。

 次の瞬間、美穂は、怒りで全身の毛穴が開き、髪の毛が逆立つような感覚に覆い尽くされた。ガラスに映る自分が、美穂と違う動きをしてニヤニヤと笑っている。


〈ふふふふふっ!麻由の宿題を私の名前で提出して評価を上げて・・・

 紅葉の美味しいお弁当を亜美に提供して喜んでもらって・・・

 あたしに憧れてる真奈を、あたししか入れない世界に招待してあげる・・・

 良い事しかしていないのに、なんでそんなに睨むんだ?〉

「ふざけるな!どこが『良い事』だ!」

「あっそう、『良い事』だと思ってくれないんだ?だったら、言い方を変える。

 腰抜け、単純馬鹿、自己顕示欲の塊・・・

 どいつもこいつも、あたしがその気になれば簡単に潰せる。

 そんなふうに考えたこと・・・あるよね?あたしはアンタだから解るよ」

「・・・くっ!オマエの目的は何だっ!」


 鏡の中の美穂は、美穂の質問には答えずにケタケタと笑うだけ。その行動が、美穂の神経を逆撫でする。

 言動が癪に障る。指摘された通り、紅葉や麻由や真奈が隙だらけと考えたとは何度もある。確かに、徹底的に隙を突けば、簡単に潰せるかもしれない。だが、友達を潰そうと思ったことはない。ただでさえ、真奈を殺されかけてカッカしていた美穂は、鏡の中の美穂の言動で我慢の限界を超えた!


「オマエだけは、絶対ブッ潰す!!」


 奴の魂胆なんてどうだって良い!最優先で叩いて二度と口をきけなくしてやる!美穂は、真奈をジャンヌに任せて搬入口から外に飛び出し、ひとけが無いことを確認してから窓ガラスにサマナーホルダを向けた!奴が鏡の中に居る為、今度はサマナーホルダが美穂の姿に反応をして、窓ガラスが乳白色に濁る!


「ばるっ!美穂っ!冷静になるばるっ!!

 挑発に乗せられちゃダメばるよ!」


 事態を察知したバルミィが、美穂と窓ガラスに間に飛び込んできた!制止された美穂が我に返る!しかし、次の瞬間、窓ガラスの中から手が伸びてきて、バルミィの腕を掴んで、インバージョンワールドに引き摺り込んだ!


「ばっ、ばるぅぅっっ!!?」

〈真奈を引っ張り込むつもりだったけど、予定変更。

 この際だから誰でも良いや。・・・ふふふっ!〉

「ばるみぃっっ!!」


 美穂は、慌てて手を伸ばすが空を切り、バルミィは為す術も無く窓ガラスの中に消える。


「うわぁぁっっっっっっっ!!!ばるみぃっっっ!!!!」


 美穂は、再び、乳白色に濁った窓ガラスに飛び込んで、異獣サマナーネメシスへと姿を変える!




-インバージョンワールド-


 全てが反転された世界で、苦しそうに蹲っているバルミィに近付いて介抱をする。この世界では、生身の人間は元の世界には帰還できず、数分も持たず光の粒子になって消滅してしまう。おそらく、宇宙人の場合も、生物ならば差異はないだろう。

 バルミィを生還させる術を思い付かず、途方に暮れるネメシス。背後に、神経を逆撫でする気配を感じる。


「ふふふふふっ!」


 確認をしなくても解る。奴は、美穂本人には手を出さず、仲間達をボロボロにしやがった。ムカ付いて仕方がない。ネメシス(美穂)は、「振り返って‘奴’を見た瞬間に、ブチ切れて自分をコントロール出来なくなる」ことがハッキリと解る。


「インバージョンワールドで活動できるのは“選ばれし者”だけ。

 サマナー以外の生命力は、決して受け入れない。

 バルミィは、これで終わったね」

「・・・おまえっっ!!!」


 ネメシスは振り返りざまにレイピアを抜刀して、背後の‘奴’に向かって切っ先を振り切った!ネメシスの行動を読んでいた“奴”は、素早く数歩後退して回避!同時に、漆黒で中央に禍々しい女神の紋章を象ったサマナーホルダを翳した!想定外の行動に戸惑い、ネメシスの動きが鈍る!


「なにっ!?オマエもサマナー!?」


 “美穂にソックリだが別の物”の全身が乳白色に包まれ、「変身」の掛け声と共にネメシスと同じシルエットのマスクとスーツがいくつも現れて重なり、ネメシスと同じ姿の異獣サマナーに姿を変えた!


「あたしと同じ?・・・イヤ、違う。何だオマエは?」


 形はネメシスと全く同じだが、本来なら白いはずのプロテクターが全て黒。そして、ソリッドフェイスの奥に、吊り上がった複眼が輝いている。


「ふふふっ!あたしは、オマエ!異獣サマナーエリス!」


 人間態だけでなく、変身後も美穂の模倣。エリスの全てが癪に障る!ネメシスは、レイピアを振り上げて、エリスに突進!エリスが抜刀したレイピアと、ネメシスのレイピアの刀身が交わる!

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