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45-3・ぞうゲンジ~変化する刃~回転神鳥撃破

「参るっ!!」

「んぁっ!ァタシこそ、まいるっ!!」


 ゲンジ(紅葉)が巴薙刀を召喚して構えた。刃吾幻(幽姫)は、その構えを見て感心をしながら、日本刀を装備する。


「ほぉ・・・1週間前ほど無様ではないようだな」

「んへへっ!一生懸命、特訓したんだもんっ!」


 ゲンジが突進をして、刃吾幻の刀のアウトレンジから、突きと斬撃を程よく混ぜながら打ち込んだ!刃吾幻は日本刀を当てて的確に捌くが、衝撃が伝わって手が痺れる!


(まだ粗削りだけど、パワーが薙刀に伝わるようになったわね!

 だけどね、紅葉の才能を考えれば、この程度で満足されちゃ困るのよ!!)


 紅葉の母なのだから、娘の性格は手に取るように解る。刃吾幻は最初だけ打ち合ったが、回避と受け流しで対応をする。


(やっぱり、刃吾幻の正体は・・・紅葉の身近な人物)


 美穂は、ゲンジを見守りつつ刃吾幻の動きを観察をしていた。ゲンジの薙刀スキルは上達しているが、ゲンジの戦闘スタイルに合っていない。そして刃吾幻は、ゲンジ(紅葉)の性格を知り尽くした動きをしている。


(だからこそ、紅葉には事前に策は伝えてある) 


 薙刀1本では攻め抜けないと判断したゲンジが間合いを空け、Yスマホに『合体』と書いて、モニターに表示された使役妖怪の中から『ぞうさん』をタップした!火象が召喚されてゲンジと重なり、頭の両側に大きな耳が生えて、左手に象牙をモチーフにした剣が装備される!ゲンジ・ぞうフォーム(以下、ぞうゲンジ)にチェンジ完了!


「ぃっくぞぅ~~~~~っ!!!ぱぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!!!」


 ぞうゲンジは、右腕一本で軽々と巴薙刀の突きを繰り出す!刃吾幻が飛び退いて避けたら、ゲンジの右腕が伸びて、追いかけてきた!


「ふふっ!面白い攻撃ね。・・・だけど、面白いだけ」


 刃吾幻は伸びる右手を回避しながら距離を空け、左手甲からYケータイを外してガンモードに変形させて、ゲンジ目掛けて連射!ぞうゲンジは、飛んできた光弾を象牙ソードで弾き返す!


「今だっ!これが、ぞうフォームの弱点!」


 ぞうゲンジが防御に集中した結果、伸びる右手による攻撃が疎かになる!慌てて、右手に集中して攻撃を仕切り直そうとするが、その間に刃吾幻に懐に飛び込まれた!


「げげっ!」

「2刀流など、そなたには早すぎるのじゃ!」


 今度は、伸びる右手に意識を集中させていたので、左手の象牙ソードによる防御が疎かなってしまう!右手か左手のどっちかに集中するならまだマシだが、右手がミドルレンジで左手がショートレンジの2刀流など、バランスが悪すぎて使いこなせるわけが無い!

 ゲンジは半歩退いて回避を試みるが、刃吾幻の刀の一撃を喰らって弾き飛ばさた!


「中距離と近距離の2刀流など達人でも不可能。発想が浅いようじゃのう」


 ゲンジは立ち上がって、ぞうフォームを解除。巴薙刀を拾い上げて呼吸を整える。


「んんっ!ゃっぱ、イクサヒメゎ強ぃなぁ。フツーに戦ってもダメかぁ。

 でも・・・そろそろ使ってぃぃかなぁ~?」


美穂の作戦①・あえて侮らせる

 序盤は通常スペック(合体含む)のみで戦う。理由は侮らせる為。幽姫(刃吾幻)が紅葉の身近な人物なら、夜な夜な特訓に出かけていることはバレていると解釈するべき。一定の警戒をしているだろうから、あえて「特訓の成果はこの程度」と思わせる。


「んぉぉっっっっっ!!!」


 ゲンジが気合いを発したら、僅かの場の雰囲気が変わる。刃吾幻は、巴薙刀に妖気が充填されたことを感知した。


(・・・あら?武器強化を?チョット驚いたわね)


 ゲンジが巴薙刀を振り回して突っ込んできた!


「ぉりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ~~~~~~~~っ!!!!」

「武器が強化をされただけで、薙刀の腕が上がったわけではあるまいっ!」


 連続突きを繰り出すゲンジ!刃吾幻は冷静に軌道を見切って、最低限の動きで受け流しと回避で凌ぐ!初披露の技にもかかわらず、全く動じない!


「ふぅんっっっ!!」


 刃吾幻は妖刀の刀身を輝かせてゲンジの巴薙刀を受け止めた!武器の破壊力が拮抗する!


「ふっ!武器に妖気を通すのが、そなただけの専売特許とでも思うたか?

 まだまだ甘いのう」

「んぁっっ!イクサヒメもできるんだ!?そっかぁ~・・・やっぱスゲーや!」

「ふふふっ・・・新たに取得したスキルを封じられて、もう降参か?他愛も無い」

「やっぱスゲーよ・・・ミホゎっ!!」

「・・・なにっ?この状況で、友人を称賛!?」


美穂の作戦②・更に侮らせる

 妖気による武器強化は幽姫にも出来る。1週間前の戦いで、幽姫はバルミィの光弾を刀で弾いた。ただの刀で光を弾くのは不可能なので、何らかの特殊な力が宿っている事は間違いがない。刃吾幻の武器強化が、ゲンジと同等かゲンジ以上かは不明だが、武器強化の概念を持っているのは確実なので、ゲンジの武器強化で制することは出来ない。

 だがそれでも、あえて「満を持して武器強化をする」ふりをする。目的は、「武器強化が切り札」とミスリードを誘い、次の「更なるミスリード」に繋げる為。


「んおぉぉっっ!!本番ゎ、これからだぁぁぁっっ!!」


 ゲンジは一足飛びに後退して、気勢を上げて素早く踏み込み、振り上げた薙刀を振り下ろした!刃吾幻は切っ先の位置を見極めて2歩ほど後退する!だが「回避した」と思った次の瞬間、切っ先から一回り大きい妖気の刃が発せられる!


「まさかっ!」


 刃吾幻の胸プロテクターに妖気の刃が叩き込まれて弾き飛ばされた!


「・・・くっ!」


 ゲンジと戦って、初めて地面に転がされた。直感で「回避」を選んだおかげでダメージは最小限で済んだが、「防御」をしていたら直撃を受けていただろう。


「ぉりゃぁぁぁぁぁぁ~~~~~~っ!!!!」


 刃吾幻が体勢を立て直す前に、ゲンジが間を詰めて薙刀の突きを放った!反射的に刀で弾こうとしたら、弾く前に切っ先から妖気の刃が伸びて着弾!体勢を崩したところに、石突の打突とキックを受けて再び転がされる!


「・・・くっ!まさかここまでっ!!」


 してやられた。「武器の妖気強化は、ゲンジ以外にも出来る」と見せつけて、ゲンジの出鼻を挫くつもりだったのに、奥の手を使われて刃吾幻の方がメンツを潰された。武器から妖気を飛ばすことなど、刃吾幻には出来ない。刃吾幻(有紀)の身近で、自力で武器から妖気を放出できる者など一人しか知らない。紅葉ゲンジが父親の才能を強く引いていることを、改めて実感する。


「んぉぉぉぉぉっっっっっっっっっっっっっ!!!!」

「見事っ!だけど、その厄介な武器を正面で対処するほど愚かではない!!」


 刃吾幻はゲンジの薙刀の狙いが定まらないように、フットワークを使って左右に反復移動をしながら、素早い動きで薙刀の攻撃範囲の内側に飛び込んできた!


「要は、薙刀の内側に入り込めば済むだけの話よっ!!

 これで、妖気の刃は機能しない!」

「んぁぁぁぁっっっっ!!!まだまだぁっっっっ!!!」


 刃吾幻が刀の射程圏まで間合いを詰めたのと同時に、ゲンジは更に内側まで刃吾幻の懐に飛びこんでいた!ほぼ密着状態!こんなに接近してしまったら、刃吾幻の刀の有効射程距離が消滅する代わりに、長物の薙刀は全く振れない!

 だがしかし、ゲンジの手には薙刀は無かった!束の真ん中で2本に分離され、右手にはシャフト先端が穂先で、左手には先端が石突きのトンファーが握られていた!


「えっ!?なにぃぃっっ!!?」


 刃吾幻が警戒をしていたのは薙刀の挙動のみ。トンファーによる至近距離戦など全く想定していない。


美穂の作戦③・上手の上手を取る

 満を持して「武器強化」を発動することで、刃吾幻(幽姫)は「武器強化が切り札」とミスリードされる。刃吾幻にも武器強化が出来るなら、ゲンジ以上に使い熟して上手を取って格の違いを見せ付けようとする。そのタイミングで「妖気の刃」を発動させれば、刃吾幻は必ず動揺をする。薙刀の動きに警戒をさせ、薙刀の間合いを潰す為に踏み込んできたところで、超接近戦用の武器に持ち替えて真の切り札を叩き込む。

 なお、ぞうフォームのお粗末な二刀流は作戦ではなく、ゲンジ独自のチョイス。全く意味が無かったが「刃吾幻に二刀流は論外と思い込ませる」という意味では良い布石になった。


「ひっさぁ~~つ!!ミホの作戦その3っっっっっ!!!!」


 驚くほどセンスの無い名前の必殺技が発動!妖気で覆われたトンファーの一撃目が刃吾幻の刀を弾き、もう片方の手に握られた二撃目が刃吾幻の胸に炸裂!至近距離でのクリティカルヒットを喰らった刃吾幻は、為す術も無く弾き飛ばされて地面を転がった!


「んおぉぉぉっっっっっっっっ!!!!」


 倒された刃吾幻に突進をするゲンジ!


 ≪AXL!≫

「んぇぇっっ!?」


 だが、気が付いた時には、転がっていた場所には何も無く、刃吾幻は20mほど離れたところに立っていた。全身のプロテクターが展開しており、左手首にはストップウオッチ型のパーツが装着されている。


(・・・まさか、ここで使う事に・・・いや、使わされる事になるとはねえ)


 刃吾幻アクセルの超スピードを発動させて、ゲンジの攻撃範囲から退避したのだ。速さで勝負をされたら、せっかく編み出した「必殺・美穂の作戦その3」を当てる事が出来ない!


 見守っていた美穂の拳に力が籠もる。昨日は、トンファーを手に馴染ませる特訓に時間を費やした。予想通り、ゲンジは長柄武器よりも徒手空拳に近い武器の方が向いている。

 だが、ゲンジはトンファーを使い始めたばかり。まだスキルなど無く、「初見の意外性」でしか勝負できない。


(くそっ!ヒットをしたのは利き手ではない方の一発のみ!

 利き手の一撃目は防がれたか!)


 可能ならば、刃吾幻がスピードで勝負をしてくる前に、今の奇襲で押し切りたかった。出来る事なら信頼性の欠ける新必殺技に頼らず、作戦と確実に発動できる奥義で決着が付いてほしかった。だけど、一撃目は防がれ、追撃からは逃げられてしまった。素直に、刃吾幻の強さと咄嗟の判断力の高さを認めるしかない。


 刃吾幻アクセルは深呼吸して気を鎮め、力を溜めつつ、刀を一旦鞘に納めたのを逆手に持って構える。その姿が霞んだ次の瞬間には打音が響いて、ゲンジが悲鳴を上げながら弾き飛ばされ、ゲンジと入れ替わるようにして、抜刀をした刃吾幻アクセルが立っている。

 刃吾幻アクセルが超高速で攻撃をしたのだが、喰らったゲンジは言うまでもなく、離れて見ている仲間達さえ何が起きたか解らない。


「・・・ふぬぅぅぅっっ」


 ゲンジは、見えない一撃を喰らって飛びそうな意識を辛うじて保ち、根性を発して立ち上がる。


「ほぉ?まだ立ち上がるか?しぶといのう」


 刃吾幻アクセルは、ゲンジが構えたの待ってから突進をして刃の乱打を打ち込む!ゲンジは反射的に両腕でガードをした為、装備されたトンファーが刃吾幻アクセルの刃を受け止めた!


「防御を考えない紅葉が防御を・・・。良い武器を選んだわね。・・・だけど!」


 ゲンジの目の前から、再び刃吾幻アクセルが消えた!直後に、右薙、袈裟斬り、逆袈裟、左薙、ほぼ同時に峰打ちを打ち込まれ、更に、うなじに一撃を叩き込まれた!刹那の間に強烈な五連打を喰らったゲンジの視界が真っ暗になり意識が飛ぶ。



 紅葉の目の前に、十二単の紅葉が立っていた。紅葉を見て微笑んでいる。


「んぁっっ!?また、オマエかっ!?」

「当然ぢゃ、言ったであろう、オマエゎヮラヮ、ヮラヮゎオマエぢゃ。

 オマエの前から立ち去る事などできぬ」

「よくワカンネ~ってば!」



 刃吾幻の姿が目視できるようになった直後に、ゲンジの胸や腹で火花が散る!


「鬼道・四閃と、鬼道・霞旋風!

 ・・・そこそこ名のある者さえ、この技で葬・・・」

「んぁぁぁぁっ!イっタイなぁ、もうっ!!」


 根性で足を大きく前に出して、転倒を防ぐゲンジ!


「うそおっ!?!?」


 その光景を見た刃吾幻は思わず素に戻ってしまった。峰打ちとは言え、完全に叩き伏せるつもりで攻撃をしたのに耐え凌がれた。


(驚いたわね。

 今の紅葉ゲンジ、いつもとは比較にならないほど鋭い妖気を発したわ)


 荒く呼吸を繰り返すゲンジ。意識のうちの半分は、まだ“十二単の紅葉”の前にいた。目の前に刃吾幻が居るのを認識しているけど、マスクの下の紅葉の目は虚ろで“十二単の自分”と対峙していた。


「負けるもんかぁっ!!」


 ゲンジの体の中で大きな鼓動が1つ脈打つ!紅葉の虚ろだった目が、片側は光沢のある瞳、もう片側が炎のような赤色の瞳、オッドアイに変化!毛細血管が広がって全身に血が駆け巡ったように感じる!


「んんっ!これって、ローリングウルティマバスターを発動させた時と同じ感覚?

 よくワカンナイけど、いけそうな気がするっ!」


 紅葉の前から“十二単の紅葉”の幻想が消え、ゲンジが刃吾幻アクセルを睨み付ける!


「ぃっくぞぉぉっっっっ!!!覚悟しろ、イクサヒメっ!!」


 力強く構え、左手甲にセットされたYスマホ画面に「めい鳥」と書き込む!左掌をかざして、八卦先天図を射出してダッシュで通過!冥い大鳥に変化したゲンジが大空に飛び上がり、大きく旋回をして急降下を開始!刃吾幻アクセルに向かって突っ込んでいく!


「この期に及んで、冥鳥じゃと!?愚かな!勝負を投げたか!?

 まだ、妖気を帯びたトンファーの方がマシ!

 弱点が丸出しの冥鳥など、わらわには通用せぬ!」

「んぁぁぁっっっっっっ!!!バカにするなぁっっ!!

 ただのウルティマバスターぢゃないもんっ!!」


 次の瞬間、冥鳥の発する妖気が倍に跳ね上がり、突進力はそのままの勢いで、嘴と尾を軸にして回転を始めた!ローリングウルティマバスター発動!錐揉み状態に成った冥鳥が、刃吾幻目掛けて突っ込んでくる!


「!!!!!!!!!!!!!」


 刃吾幻(有紀)は内心で娘の成長を素直に称賛した。冥鳥に回転を加える事で、丸出しの弱点を克服した。武器の妖気強化、トンファーによる奇襲、そして回転冥鳥。たった1週間で、良くもここまで成長をした。


「直撃を受ければ、いくら私でも、ただでは済まないわね」


 ワザと負けてあげるのなら、ハナからライバルキャラなど演出する必要は無い。莫大な妖力と引き替えに冥鳥を回転させる発想は褒めたいが、残念ながら刃吾幻には通用しない。そして、この先、ゲンジが戦わなければならない敵は刃吾幻よりも強い。

 まだ現役で戦える有紀が幼い娘と世代交代をした理由は、紅葉の潜在能力が先代(有紀)より優れているから。そして刃吾幻(有紀)の力では、やがて出現する強敵には対抗できないから。有紀は、未成年の娘を戦場に駆り出す事を酷と承知した上で、紅葉の成長を促す為に自らは一線を引いて現役を託した。


「勝たせてあげたい・・・だけど!!」


 刃吾幻アクセルは母としての私情を押し留め、冥鳥を見上げてタイミングを見極めながら構えた。


「・・・・ハアアッ!!」 ≪AXL!≫


 冥鳥目掛けて飛び上がる刃吾幻!アクセル発動!0.1秒を体感10秒間(100倍速)で移動できる刃吾幻アクセルからすれば、冥鳥の高速回転は止まっているのと変わらない。アクセルの世界では、冥鳥の背中は弱点のままなのだ。


「んぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」


 ゲンジでは視認できない蹴りが着弾!冥鳥を維持できなくなって、突進速度のまま地面に激突!


≪TIMEOUT≫


 直後に、タイムリミットを迎えて地面に着地した刃吾幻アクセルが、溜まった熱を放出してから元の形態に戻る。


「紅葉っ!?」×3 「ク~チャン!」 「紅葉ちゃん!」


 その場に居る刃吾幻以外の全員が、ローリングウルティマバスターが発動した時点でゲンジの勝利を確信した。

 だが、刃吾幻には通用しなかった。


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