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東渡りのジグ人 ~ある意味女難の相がある男の物語~ お前は予知の力を持つ悪魔の使い  作者: buchi
第3章  ジェルナン・ライカ殿

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第39話 貴族の御曹司でダメ坊ちゃまかと思ったら全然違ってた

 中庭に向かって並んで歩きながら、ガゼル殿は、青白い顔色でマスクをつけたジェルナン殿に話しかけてみた。


「ところで、ジェルナン殿は軍の作戦に参加したことはおありか?」


「ところで、先ほどは姫君の手前、お聞きできなかったが、ガゼル殿の軍に銃はおありかな?」


 ジェルナン殿は、ガゼル殿の質問を全く無視して話しかけてきた。ガゼル殿はかなり面食らった。


「銃?いや、数丁はあるが。まあ、あまり名誉ある武人の使うものではないと思っておるが」


「私は好きですね。うまく使えば、簡単に勝てますからな。とりあえず、リンゲルバルト殿を撃退しないと姫君をさらわれますのでね」


 ガゼル殿はますます戸惑ったが、ジェルナン殿との会話をつづけた。


「リンゲルバルト殿の目的は、姫君の拉致ですか」


「そのようです。姫君はさらわれたくないので、我々を呼んだようです」



 中庭に着くと、ガゼル殿の部下が中庭いっぱいに広がっていた。まだ何もしていなかったが、尼僧院と言う場所柄に相当わくわくしているようだった。好奇心いっぱいの様子で、きょろきょろしていた。


 ジェルナン殿は笑い出した。


「ガゼル殿、これを抑えるのは大変ですな。早めに別な基地を探さないと、統制が取れなくなりますよ。場所がよろしくない。もっとも、ここには若い尼僧などはいなさそうだが」


「僧院育ちの男の発言とは思えない発言ですな」


 ガゼル殿は答えた。


「どこでも一緒ですよ。明日は戦闘だと伝えてくださいませんか。それと、最初の小競り合いで銃をぶち込みたい。銃を使える者を紹介していただければ、お手伝いが出来ます」


「お手伝い?」


 ガゼル殿は自分の兵に手出しさせてたまるものかと断る気満々でこの若造の顔を見た。


「リンゲルバルト殿は銃を持っているし、遠方から撃ち込んでくることは請け合いです。そうなるとなかなか手ごわい。私は最新式の銃を持ってきました。使い方を教えて進ぜましょう。これで応戦できるというものです。この連中にわたくしのことは紹介していただけるのでしょうな?」


「ええ」


 ガゼル殿は、どうも思っていたのと勝手が違ってきたので、調子が悪そうだったが、ジェルナン殿に促されて、高貴な家柄の僧院から出てきたばかりの貴公子を兵士共に紹介した。


 親分がいまいち乗り気でないのは兵士共にもよく伝わった。彼らとて、坊さんや高貴の家柄のヘナチョコ貴公子など、侮蔑の対象以外の何者でもなかったので、できることならお知り合いになるのも遠慮したい所だった。


「ジェルナン・ライカだ」


 ジェルナンことリョウは一歩前に出た。

 兵士達は、リョウのマスクを異様と思ったらしいが、そのほかにも陽光の下に金糸銀糸が輝く豪華な僧服に反発を感じたらしかった。こんななりで、どうやって戦うつもりだろう。こんな格好でじゃらじゃら傭兵の前に出てくる貴族の御曹司など、蹴飛ばしてやりたいくらいだった。


「僧院に長らくいたが、軍を知らぬわけではない」


 ひとりの兵士が、突然笑い声を立てた。これを合図に、兵士共は聞こえるように失笑して見せた。

 

 リョウは、僧服を脱いだ。中からは、兵士たちが見たことのない形の銃が出てきた。彼は、笑った兵士の頭に狙いをつけた。


「帽子を取れ」


 リョウは言った。よく通る声で、中庭の全員の耳に届いた。


「そ、そんなものは当たらないぞ。止めるんだ。殺す気か」


「これは新型銃だ。帽子をうえにあげろ。出来るだけ体から離せ。心配ならな」


 指さされた兵士は非常におびえていたが、言われるままに帽子を高々と上げた。

 銃の命中率が安定せず、危険なことは皆が知っていた。


 マスクの男が狙いをつけ、狙われた兵士は命はないものと覚悟した。


 銃声が響き、帽子はすっ飛んだ。


「取って来い、だれか」


 リョウは怒鳴った。

 帽子は拾われ、真ん中に穴が開いている様子を皆が確認した。


「俺は銃使いだ。剣じゃない。お前らの中で銃を使ったことのある者はいるか?」


 数名が手を上げた。


「よし、最新式の銃を貸そう。明日、実戦で使う。これは当たるぞ。今のを見たろう?リンゲルバルトの軍は必ず銃を使ってくる。こちらも使わないと命が危ない。よろしいかな?ガゼル殿。あなたに銃をお貸しすることになるが」


「あ、結構だ」


 ガゼル殿は、かなりビックリした様子だった。リーア姫の前と様子が違っている。今のこの男はてきぱきとしゃべるし、動きが早かった。


「リンゲルバルト殿も銃を持っている。剣の切っ先が届く前に、殺されるのは遠慮したい」


 ガゼル殿は、落ちていた僧服に目をやった。

「ジェルナン殿、服はどうするのだ」


 ジェルナン殿は古びた豪華な僧服を見た。

 彼はため息をついて僧服を拾うと、適当にそれを肩に引っ掛けた。


「僧服が好きではないのだな」


 ガゼル殿をはじめとした傭兵は、僧院出身のこの男が、どうやら僧侶稼業と全くウマが合わなさそうだということだけは理解した。


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