魔法使いと青の傷
それから2日ほど経った朝。相変わらず俺は馬車の中で、外の景色を眺めていた。
平原を走る。白く青い空に、太陽が強い光を放っている。
灰色のレンガの壁が見えた。
馬車が進むが、そのレンガの壁はどこまでも、何かを囲うようにして続いていた。
そのレンガの壁はとても高く、頑丈そうであった。
しばらく進むと、レンガの壁の中心に、鉄格子の門が見えた。
ここが。
ここが、あのベル王国。
門の少し手前でアニーは馬車を止め、戸を開いてくれた。
俺はアニーに手を引かれ、馬車を降りた。
「行こう」
「え、ああ」
アニーが早足で進んでいくから、小走りで追いかけるようについていった。
「え、でもさあ、入れないんじゃないの?」
「大丈夫。俺とお前なら入れる」
「え、本当に?」
すごく心配になってきた俺を見兼ねて、アニーは俺の方を振り返った。
「ちょっと、右の腕を捲ってみろよ」
俺は、腕を捲った。
ドクドクと脈打つ手のひらの下の脈の部分には、大きな稲妻の、青色の傷跡がある。
「こ、この傷は昔俺が誤って包丁でつけてしまった傷だって、お父さんが」
「違う」
「……へ?」
アニーは自身の右腕を捲った。
……俺と、同じ青い稲妻の傷があった。
「アニー、お前も同じ」
「この傷は、魔法使いの証拠なんだよ」
「魔法……使い?」
「ああ。この国は、魔法使いしか入れない国なのさ。魔法使いはこの世界に0.1%しか存在しない」
「なんで、お前そんなこと知って……」
「俺は元々この国の生まれだから」
「えっ、そうなの!?」
「ああ。……小さい頃、俺には傷がなかった。もちろん、魔法は使えたさ。むしろ、学校の中では1番くらい。でも、傷がないやつは、魔法使いとして認められないから、この国を出ていかなくちゃいけねーんだよ。ただ、傷の発現が他の人よりも遅かった、ただそれだけなのに」
「それで、俺と同じ国で、偶然、俺と同じ小学校に転校して……」
「そういうこと」
門が近づいてくる。入国審査はもうすぐだ。
「いつ、俺が魔法使いって気づいたの?」
「ちょっと前だよ。お前とシャルル国王をレミ王国に送り届ける時に、お前の脈に傷が見えた」
『ニュースをお伝えします。昨日、シャルル国王とベニ国王陛下は昨日、レミ共和国の大統領と会談をしました。友好関係を築こうとする国王とは対照的に、ベニ王子は……』
あの嫌なニュースが頭をよぎる。
「そっか、あの時に気づいて……」
「これから俺も、この国に住もうと思う」
「え!? 戻らないと、シャルル国王に……」
「ベル王国は、誰も攻め込まない国。その理由は、各国のトップはこの国の誰もが魔法を使えることを知っているから。そしてその魔法の中には、一国を滅ぼせる程の威力のものもあるとか」
「じゃあ、俺たち」
「ああ、一緒にこの国の住民になろうぜ! 俺がお前にたくさん魔法を教えてやるよ!」
「……いいね!」
俺たちは青い傷のある右手同士でグータッチをした。




