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王の愚者  作者: クロワ
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97/105

97話「住みたい町」

東部。


中心街。


人。


人。


人。


新しい店。


新しい宿。


新しい家。


通りには。


荷馬車が。


ひっきりなしに。


行き交っている。



「最高ですよ!」


若い男が。


王に笑う。


「仕事は」


「選べるし」


「店も増えた」


「昔は」


「遊ぶところなんて」


「何もなかったから」


隣の女も。


頷く。


「王都まで」


「行かなくても」


「欲しい物が」


「買えるようになりました」



王が。


町を見る。


「随分と」


「暮らしやすく」


「なったようだな」


「陛下!」


後ろから。


声。


「家賃を」


「どうにかしてください!」


「…………」



「去年の」


「倍ですよ!」


「人が増えて」


「家が」


「足りないんです!」


別の老人も。


「夜まで」


「うるさい!」


「昔は」


「日が暮れたら」


「静かな町だった!」


若者が。


振り返る。


「それが」


「よかったんじゃん」


「夜でも」


「店が開いてるし」


老人が。


睨む。


「それが」


「うるさいと」


「言っとるんだ!」


「…………」



ジョーカーが。


微笑む。


「同じ町でも」


「随分と」


「評価が」


「違うようですね」



老人が。


町を眺める。


「便利には」


「なったんだろうな」


「若い奴らには」


「…………」


「でもな」


「便利になることと」


「住みやすくなることは」


「同じじゃないんだよ」



若者が。


少し黙る。


そして。


「でも」


「昔が良かったって」


「じいさんたちは」


「言うけどさ」


「俺たちは」


「その昔の東部から」


「出ていくしか」


「なかったんだよ」


「仕事も」


「店も」


「何もなかったから」



王が。


二人を見る。


どちらにも。


答えない。



翌日。


東部。


中心街から。


離れた村。


「…………」


静かだった。


人通りも。


ほとんどない。



老人が。


畑の前で。


王たちに笑う。


「いいところだろ」


「静かで」


「昔と」


「何も変わらん」


王が。


辺りを見る。


「落ち着いているな」


「そうだろ」


老人が。


嬉しそうに。


頷く。



その時。


近くの店から。


男が。


看板を外している。


「何を」


「している?」


「店を」


「閉めるんです」


「なぜだ?」


「客が」


「いませんので」


「…………」



少し先。


農家の男が。


一人で。


畑を耕している。


「息子は?」


「町へ」


「行きました」


「娘も?」


「町です」


男が。


笑う。


「二人とも」


「仕事が」


「見つかったそうです」


「それは」


「よかったな」


「ええ」


少し。


間が空く。


「よかったです」



男が。


広い畑を見る。


「ただ」


「この畑」


「俺が」


「動けなくなったら」


「どうなるんでしょうね」


「…………」



村の広場。


使われていない。


祭りの道具。


王が。


見る。


「祭りは?」


老人が。


笑う。


「今年は」


「やらんよ」


「若い奴が」


「足りん」



ジョーカーが。


静かな村を見る。


「人が増えれば」


「増えすぎだと」


「怒られ」


「人が減れば」


「減りすぎだと」


「困られる」


「…………」


「陛下」


「国民の皆様を」


「均等に」


「並べてみては?」


「物ではない」


「やはり」


「駄目ですか」



王都へ戻る。


馬車の中。


王が。


地図を見る。


中心街には。


人が集まる。


周辺の村からは。


人が減っている。


「若者に」


「村へ戻れと」


「命じることは」


「できん」


「当然です」


「どこで暮らすかも」


「本人の自由ですので」



「だが」


「村に残りたい者まで」


「暮らせなくなるのは」


「違う」


ダイヤが。


地図を見る。


「では」


「人を戻すのではなく」


「距離を」


「縮めましょう」


「距離?」



地図に。


線が引かれる。


村から。


中心街へ。


「道路を」


「さらに整備します」


「乗合馬車も」


「増やす」


「村の作物を」


「町へ」


「運びやすくする」


「町で働く者が」


「周辺に住むことも」


「できるようにする」



「家が」


「足りない町には?」


「住宅を」


「増やします」


「ただし」


「どこにでも」


「建てるわけでは」


「ありません」


「農地まで」


「潰してしまえば」


「今度は」


「食料が足りなくなります」


王が。


ため息をつく。


「一つ」


「直すたびに」


「次が出るな」


「国とは」


「そういうものでしょう」



中心街。


新しい住宅が。


建ち始める。


郊外へ伸びる。


新しい道。


村と町を結ぶ。


乗合馬車。



若い男が。


村の家から。


馬車に乗る。


「町まで?」


「ああ」


「仕事」


「町なんだ」


「引っ越さないのか?」


男が。


笑う。


「家賃」


「高いからな」



別の若者は。


荷物を持って。


町へ向かう。


「戻らないの?」


母親が。


聞く。


「休みには」


「帰るよ」


「町で」


「やりたい仕事」


「見つけたから」


「そう」


「頑張って」



村では。


老人が。


縁側に座っている。


新しく通った。


乗合馬車を見て。


「騒がしく」


「なったな」


隣の老人が。


笑う。


「嫌か?」


「…………」


少し考える。


「まあ」


「町に行くのは」


「楽になった」



中心街では。


別の老人が。


新しい住宅地を。


眺める。


「昔とは」


「変わったな」


隣で。


孫が。


新しい店を。


指差している。


「じいちゃん!」


「あそこ」


「行こう!」


「…………」


老人が。


笑う。


「はいはい」



王が。


町と村を結ぶ。


道を見る。


「町へ行きたい者を」


「村に縛ることは」


「できん」


「村に残りたい者を」


「町へ移すことも」


「違う」


「なら」


「どちらに住んでも」


「暮らせるようにする」



ジョーカーが。


微笑む。


「住む場所まで」


「国に決められては」


「奴隷の頃と」


「あまり」


「変わりませんからね」


「…………」


王が。


道の先を見る。


「余が」


「決めるのは」


「民の住む場所ではない」


「民が」


「住みたい場所を」


「選べる国を」


「どう作るかだ」



町へ向かう者。


村へ帰る者。


同じ道を。


反対方向へ。


歩いていく。

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