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王の愚者  作者: クロワ
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96/105

96話「よそ者」

東部。


鉱山。


「人が」


「集まりません!」


鉱山主が。


机を叩く。


「賃金は」


「上げた!」


「それでも」


「坑道に入る者が」


「足りない!」



ダイヤが。


募集条件を見る。


「危険手当は?」


「ありません」


「怪我をした場合は?」


「本人の――」


「補償は?」


「…………」


「ありません」


「勤務時間は?」


「日の出から」


「日暮れまで」


「…………」


ダイヤが。


紙を置く。


「私でも」


「働きませんね」


「財務卿が」


「鉱山で働くわけ」


「ないだろ!」


「そういう話では」


「ありません」



安全な坑道への。


補強。


新しい道具。


勤務時間の短縮。


負傷した場合の。


補償。


そして。


危険手当。


募集条件が。


変わる。


少しずつ。


人が集まった。


それでも。


まだ。


足りない。



鉱山主が。


言う。


「国外から」


「呼ぶのは」


「どうでしょう」


「国外?」


「王国より」


「貧しい国なら」


「ここで働きたい者は」


「いるはずです」


王が。


考える。


「本人が」


「望んで来るのであれば」


「構わん」


鉱山主が。


少し笑う。


「それなら」


「賃金も――」


「同じだ」


「…………」



「王国の者と」


「同じ条件で」


「雇え」


「ですが」


「向こうの国なら」


「もっと安い賃金でも――」


ノアが。


口を挟む。


「なんで?」


「…………」


「外国人だと」


「腹減らねえの?」


「いや」


「そういう意味では――」


「じゃあ」


「同じでいいじゃん」



王が。


続ける。


「同じ仕事には」


「同じ賃金」


「同じ安全基準」


「辞める自由も」


「帰る自由も」


「認める」


「借金を理由に」


「縛ることも」


「認めん」


「奴隷の代わりを」


「国外から」


「連れてくるのではない」



しばらくして。


東部に。


国外から。


多くの労働者が。


やって来た。


鉱山。


運搬。


建設。


人手不足は。


少しずつ。


解消していった。



その一方。


町では。


聞き慣れない言葉が。


増えた。


見慣れない料理。


違う服。


違う習慣。


「最近」


「よそ者」


「多くないか?」


「夜も」


「騒いでるし」


「治安だって」


「悪くなるんじゃ」


「ないのか?」



王が。


役人を見る。


「犯罪は」


「増えているのか?」


「いえ」


「今のところ」


「大きな変化は」


「ありません」


住民が。


言う。


「でも」


「怖いんだよ」


「急に」


「知らない奴らが」


「増えたんだぞ」


王が。


少し考える。


「不安に思うなとは」


「言わん」


「町が」


「急に変わったのだ」


「戸惑う者も」


「いるだろう」


「だが」


「まだ起きてもいない罪で」


「人を罪人には」


「できん」



数日後。


酒場。


怒鳴り声。


机が倒れる。


国外から来た。


鉱山労働者が。


王国の男を。


殴り倒す。



翌朝。


町中に。


話が広がった。


「ほら見ろ!」


「やっぱり」


「危険じゃないか!」


「外国人を」


「追い出せ!」


「こんな奴ら」


「入れるからだ!」



王が。


現場へ来る。


「殴った者は?」


「捕らえました」


「被害者は?」


「命に別状は」


「ありません」


「なら」


「法に従って」


「裁け」



住民が。


声を上げる。


「一人だけじゃない!」


「また」


「同じことが」


「起きるかもしれない!」


「全員」


「帰せ!」


王が。


振り返る。


「なぜだ?」


「同じ国の」


「奴らだからだ!」


「…………」


王が。


少し考える。


「では」


「王国民が」


「一人」


「人を殴れば」


「王国民を」


「全員」


「国外へ」


「追い出すのか?」


「それは……」


「違うだろ」


「余には」


「同じに見える」



国外から来た。


別の男が。


前へ出る。


「俺」


「何も」


「してない」


片言の。


王国語。


「毎日」


「鉱山」


「働いてる」


「税金も」


「払ってる」


「でも」


「あいつが」


「人殴ったから」


「俺も」


「悪い?」


誰も。


答えない。



だが。


別の住民が。


言う。


「じゃあ」


「何も問題ないって」


「言うのか?」


「夜中まで」


「騒ぐ奴もいる!」


「ゴミの捨て方も」


「違う!」


「言葉だって」


「通じない!」


「俺たちが」


「我慢しろって?」


王が。


首を振る。


「それも」


「違う」



王が。


国外の労働者たちを見る。


「ここで暮らすなら」


「この町の決まりは」


「守ってもらう」


「言葉が分からぬなら」


「教える」


「決まりを知らぬなら」


「伝える」


「守らぬ者には」


「王国民と」


「同じように」


「注意し」


「必要なら」


「罰する」



「そして」


王が。


住民を見る。


「お前たちにも」


「同じことを」


「求める」


「国外から来たというだけで」


「罪人として」


「扱うことは」


「認めん」



ジョーカーが。


微笑む。


「難しいものですね」


「人手が」


「足りない時には」


「来てほしい」


「…………」


「来ていただいたら」


「増えすぎだ」


「働いてほしい」


「…………」


「ですが」


「できれば」


「自分たちの」


「近くには」


「住んでほしくない」


「ジョーカー」


「はい」


「少し」


「黙れ」


「失礼しました」



鉱山主が。


小さく言う。


「でも」


「やっぱり」


「国外の者を」


「増やしすぎるのは――」


ノアが。


振り返る。


「じゃあ」


「お前」


「坑道入る?」


「…………」


「嫌だ」


「町の奴らは?」


「嫌がってる」


「でも」


「鉱山は」


「動かしたい?」


「…………」


「そりゃ」


「動かしたい」


ノアが。


笑う。


「難しいな」


「お前ら」



王が。


町を見る。


王国の者。


国外から来た者。


同じ道を。


歩いている。


「受け入れるなら」


「都合のいい時だけ」


「人手として」


「見るわけには」


「いかんな」


ダイヤが。


頷く。


「人を」


「輸入するわけでは」


「ありませんので」


「暮らす者が」


「増えるのです」



その日の夕方。


鉱山。


王国の男と。


国外から来た男が。


並んで。


坑道から出てくる。


二人とも。


泥だらけ。


「明日も?」


片言で。


尋ねる。


「明日も」


「…………」


王国の男が。


ため息をつく。


「行きたくねえな」


国外の男も。


笑う。


「俺も」


二人で。


笑う。


少し離れたところ。


ノアが。


それを見る。


「結局」


「同じじゃん」


ジョーカーが。


微笑む。


「ええ」


「働きたくないという点では」


「大変」


「仲良くなれそうですね」

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