95話「足りない人手」
東部。
農村。
「人が」
「足りません」
農場主が。
王たちを見る。
「奴隷が」
「いなくなってから」
「ずっとです」
◇
畑では。
数人の農民が。
汗を流している。
その横を。
公共事業へ向かう。
男たちが通る。
「道路工事」
「今日も募集してるぞ」
「日当は?」
「銀貨八枚」
農民の一人が。
手を止める。
「…………」
「ここより」
「高いな」
◇
農場主が。
慌てる。
「待て!」
「お前まで」
「辞めたら」
「どうする!」
「でも」
「同じ一日働くなら」
「高い方がいいだろ」
「…………」
「賃金を」
「上げてください」
ダイヤが。
言う。
「簡単に言うな!」
「上げた分」
「作物も」
「高くなる!」
◇
ジョーカーが。
微笑む。
「食料は」
「安く」
「お給料は」
「高く」
「農家にも」
「利益を」
「…………」
「皆様」
「なかなか」
「難しいご注文を」
「されるものですね」
◇
王が。
ダイヤを見る。
「どうする?」
ダイヤが。
畑を眺める。
「現在」
「何人で?」
「十人だ」
「それでも」
「足りん」
「では」
「減らしましょう」
「…………」
「は?」
◇
ダイヤが。
古い水路を指す。
「水を運ぶ者」
古い農具を見る。
「畑を耕す者」
荷車を見る。
「作物を運ぶ者」
「人が」
「足りないのでは」
「ありません」
「人がいなければ」
「回らない仕組みに」
「なっているのです」
◇
「水路を整える」
「新しい農具を」
「共同で購入する」
「道路を整えて」
「運搬を楽にする」
王が。
続ける。
「少ない人数で」
「同じ仕事が」
「できるようにするのか」
「はい」
「十人を」
「安く雇うのではなく」
「六人で回し」
「浮いた分を」
「六人の賃金に回す」
◇
農場主が。
腕を組む。
「だが」
「収穫期だけは」
「無理だ」
「どうしても」
「人がいる」
「なら」
ダイヤが。
答える。
「その時だけ」
「雇えばよいのです」
◇
数日後。
町の掲示板。
『収穫作業』
『三日間』
『一日のみでも可』
『日当――』
人々が。
集まる。
「一日だけでも?」
「ああ」
「俺」
「明日なら空いてる」
「俺は」
「三日いけるぞ」
◇
ノアも。
掲示板を見る。
「これ」
「一日だけでも」
「いいの?」
「ああ」
農場主が。
答える。
「じゃ」
「日当」
「もうちょい」
「上げて」
「高い!」
「じゃあ」
「別の仕事行く」
「待て!」
◇
王が。
その様子を見る。
「随分と」
「強気になったな」
ジョーカーが。
笑う。
「働く場所を」
「選べますので」
「雇う側だけが」
「条件を決めるわけでは」
「なくなったようです」
◇
収穫の日。
普段から働く。
六人。
そこへ。
一日だけ。
二日だけ。
三日だけ。
働く者たちが。
加わる。
畑から。
次々と。
作物が運ばれていく。
◇
夕方。
農場主が。
畑を見る。
「…………」
「十人」
「ずっと雇わなくても」
「回ったな」
ダイヤが。
帳簿を見る。
「必要なのは」
「一年中」
「十人では」
「なかったのでしょう」
「普段は」
「六人」
「忙しい時だけ」
「増やす」
「その分」
「普段から働く者には」
「今までより」
「高い賃金を払える」
◇
王が。
尋ねる。
「これで」
「食料も」
「以前の値段に戻るか?」
「戻りません」
「即答だな」
「奴隷を」
「使っていた頃の安さを」
「基準にしてはいけません」
「ですが」
「人件費が上がった分を」
「そのまま」
「価格に乗せるよりは」
「抑えられます」
◇
「人手不足だから」
「人を増やす」
「ではなく」
王が。
新しい水路を見る。
「少ない人数でも」
「回るようにする」
「はい」
ダイヤが。
頷く。
「人も」
「金も」
「無限では」
「ありませんので」
◇
その夜。
酒場。
例の男が。
酒を飲む。
「…………」
「うま」
隣の客が。
笑う。
「いつも」
「飲んでるだろ」
「いや」
男が。
もう一口。
「なんか」
「今日」
「めちゃくちゃ」
「うめえわ」
◇
店の前。
ノアが。
顔を出す。
「明日も」
「収穫」
「人いるって」
男が。
振り返る。
「日当は?」
「今日と同じ」
「行く」
「即答じゃん」
男が。
酒を飲む。
「働いた後の酒」
「こんな」
「うめえんだな」
ノアが。
笑う。
「酒のために」
「働くの?」
「いいだろ」
「俺が」
「何のために働くかは」
「俺の自由だ」
「…………」
「まあ」
「そうだな」
男が。
もう一口。
酒を飲む。
「うめえ」




