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王の愚者  作者: クロワ
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95/107

95話「足りない人手」

東部。


農村。


「人が」


「足りません」


農場主が。


王たちを見る。


「奴隷が」


「いなくなってから」


「ずっとです」


◇


畑では。


数人の農民が。


汗を流している。


その横を。


公共事業へ向かう。


男たちが通る。


「道路工事」


「今日も募集してるぞ」


「日当は?」


「銀貨八枚」


農民の一人が。


手を止める。


「…………」


「ここより」


「高いな」


◇


農場主が。


慌てる。


「待て!」


「お前まで」


「辞めたら」


「どうする!」


「でも」


「同じ一日働くなら」


「高い方がいいだろ」


「…………」


「賃金を」


「上げてください」


ダイヤが。


言う。


「簡単に言うな!」


「上げた分」


「作物も」


「高くなる!」


◇


ジョーカーが。


微笑む。


「食料は」


「安く」


「お給料は」


「高く」


「農家にも」


「利益を」


「…………」


「皆様」


「なかなか」


「難しいご注文を」


「されるものですね」


◇


王が。


ダイヤを見る。


「どうする?」


ダイヤが。


畑を眺める。


「現在」


「何人で?」


「十人だ」


「それでも」


「足りん」


「では」


「減らしましょう」


「…………」


「は?」


◇


ダイヤが。


古い水路を指す。


「水を運ぶ者」


古い農具を見る。


「畑を耕す者」


荷車を見る。


「作物を運ぶ者」


「人が」


「足りないのでは」


「ありません」


「人がいなければ」


「回らない仕組みに」


「なっているのです」


◇


「水路を整える」


「新しい農具を」


「共同で購入する」


「道路を整えて」


「運搬を楽にする」


王が。


続ける。


「少ない人数で」


「同じ仕事が」


「できるようにするのか」


「はい」


「十人を」


「安く雇うのではなく」


「六人で回し」


「浮いた分を」


「六人の賃金に回す」


◇


農場主が。


腕を組む。


「だが」


「収穫期だけは」


「無理だ」


「どうしても」


「人がいる」


「なら」


ダイヤが。


答える。


「その時だけ」


「雇えばよいのです」


◇


数日後。


町の掲示板。


『収穫作業』


『三日間』


『一日のみでも可』


『日当――』


人々が。


集まる。


「一日だけでも?」


「ああ」


「俺」


「明日なら空いてる」


「俺は」


「三日いけるぞ」


◇


ノアも。


掲示板を見る。


「これ」


「一日だけでも」


「いいの?」


「ああ」


農場主が。


答える。


「じゃ」


「日当」


「もうちょい」


「上げて」


「高い!」


「じゃあ」


「別の仕事行く」


「待て!」


◇


王が。


その様子を見る。


「随分と」


「強気になったな」


ジョーカーが。


笑う。


「働く場所を」


「選べますので」


「雇う側だけが」


「条件を決めるわけでは」


「なくなったようです」


◇


収穫の日。


普段から働く。


六人。


そこへ。


一日だけ。


二日だけ。


三日だけ。


働く者たちが。


加わる。


畑から。


次々と。


作物が運ばれていく。


◇


夕方。


農場主が。


畑を見る。


「…………」


「十人」


「ずっと雇わなくても」


「回ったな」


ダイヤが。


帳簿を見る。


「必要なのは」


「一年中」


「十人では」


「なかったのでしょう」


「普段は」


「六人」


「忙しい時だけ」


「増やす」


「その分」


「普段から働く者には」


「今までより」


「高い賃金を払える」


◇


王が。


尋ねる。


「これで」


「食料も」


「以前の値段に戻るか?」


「戻りません」


「即答だな」


「奴隷を」


「使っていた頃の安さを」


「基準にしてはいけません」


「ですが」


「人件費が上がった分を」


「そのまま」


「価格に乗せるよりは」


「抑えられます」


◇


「人手不足だから」


「人を増やす」


「ではなく」


王が。


新しい水路を見る。


「少ない人数でも」


「回るようにする」


「はい」


ダイヤが。


頷く。


「人も」


「金も」


「無限では」


「ありませんので」


◇


その夜。


酒場。


例の男が。


酒を飲む。


「…………」


「うま」


隣の客が。


笑う。


「いつも」


「飲んでるだろ」


「いや」


男が。


もう一口。


「なんか」


「今日」


「めちゃくちゃ」


「うめえわ」


◇


店の前。


ノアが。


顔を出す。


「明日も」


「収穫」


「人いるって」


男が。


振り返る。


「日当は?」


「今日と同じ」


「行く」


「即答じゃん」


男が。


酒を飲む。


「働いた後の酒」


「こんな」


「うめえんだな」


ノアが。


笑う。


「酒のために」


「働くの?」


「いいだろ」


「俺が」


「何のために働くかは」


「俺の自由だ」


「…………」


「まあ」


「そうだな」


男が。


もう一口。


酒を飲む。


「うめえ」

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