94話「三ヶ月の猶予」
東部。
評議会。
王の前には。
積み上がった。
報告書。
物価対策。
生活支援。
道路整備。
鉱山整備。
自保への報酬。
「…………」
王が。
しばらく眺める。
「ジョーカー」
「はい」
「ダイヤを呼べ」
「王都から?」
「ああ」
「余には」
「もう」
「金の話が」
「分からん」
◇
数日後。
東部。
財務卿。
ダイヤが到着する。
机の上には。
大量の帳簿。
「…………」
「陛下」
「なんだ」
「私が」
「王都にいる間に」
「随分と」
「お金のかかる国に」
「されましたね」
「必要だった」
「必要なものほど」
「高いのですよ」
◇
ダイヤが。
報告書をめくる。
「物価を抑える」
「生活支援を続ける」
「道路を直す」
「鉱山も整備する」
「治安も守る」
「そして」
「税は増やすな」
「…………」
帳簿を閉じる。
「無理です」
「早いな」
◇
王が。
93話の報告書を渡す。
「これもだ」
働けるのに。
働かない者。
働けないと訴える者。
本当に。
働けない者。
「完全には」
「見分けられん」
「だろうな」
「どうする?」
◇
ダイヤが。
東部の地図を広げる。
「まず」
「働きたい者には」
「仕事を作ります」
「仕事を?」
「ええ」
地図を指す。
「道を作る」
「水路を直す」
「鉱山を整備する」
「人手が必要な場所なら」
「いくらでもあります」
◇
「それなら」
「仕事がない者にも」
「賃金を払える」
「そして」
「道が整えば」
「輸送費も下がる」
「鉱山が整えば」
「生産量も増える」
「働く者が増えれば」
「税を払う者も増える」
王が。
少し笑う。
「全部」
「繋げるのか」
「そのための」
「財務です」
◇
「では」
「働けるが」
「働きたくない者は?」
「働かなくても」
「構いません」
「…………」
「よいのか?」
「奴隷制を」
「廃止したのでしょう?」
「働くことまで」
「国が強制すれば」
「主人が」
「国に変わるだけです」
◇
「ただし」
「現金は」
「支給しません」
「最低限の」
「食料を」
「支給します」
「酒代まで」
「国庫から」
「出す必要はありません」
◇
ジョーカーが。
微笑む。
「例の」
「酒場の方には」
「悲しいお知らせですね」
「働いて」
「自分のお金で」
「飲んでいただきます」
◇
王が。
尋ねる。
「心の問題で」
「働けないという者は?」
「同じです」
「本当か」
「嘘か」
「見分けないのか?」
「見分けられますか?」
「…………」
王が。
黙る。
◇
「身体が健康でも」
「本当に」
「働けない者はいる」
「逆に」
「働けないと」
「嘘をつく者もいる」
「その心の中まで」
「国が完全に」
「見抜くことなど」
「できません」
「なら」
「無理に」
「見分けません」
◇
「理由を問わず」
「最低限の食料を」
「三ヶ月」
「支給します」
「三ヶ月?」
「ええ」
「休むのも」
「仕事を探すのも」
「その間は」
「本人の自由です」
◇
「三ヶ月を過ぎれば?」
「支給量を」
「徐々に減らします」
「急には」
「切らないのだな」
「ええ」
「自由になった者を」
「いきなり」
「放り出すつもりも」
「ありません」
「ですが」
「永遠に」
「養うつもりも」
「ありません」
◇
「病や」
「怪我で」
「明らかに」
「生活が難しい者は?」
「別です」
「病院や」
「共同施設で」
「生活できるようにします」
「治療」
「食料」
「衣服」
「必要なものは」
「国が用意する」
「現金は?」
「必要ありません」
「生きるために」
「必要なものを」
「支給します」
◇
その日の午後。
例の。
酒場の男。
役人の前。
「今月の金は?」
「今後」
「現金支給は」
「ありません」
「は?」
食料の袋を。
渡される。
「こちらを」
「…………」
「酒」
「買えないじゃん」
「道路整備の仕事なら」
「あります」
「嫌だ」
「水路整備は?」
「嫌だ」
「鉱山は?」
「もっと嫌だ」
「…………」
近くにいた。
ノアが。
男を見る。
「それ」
「働けないんじゃなくて」
「働きたくないだけじゃん」
「うるせえ!」
◇
役人が。
続ける。
「働くかどうかは」
「あなたの自由です」
「ですが」
「働けば」
「賃金が出ます」
男が。
食料袋を見る。
酒場を見る。
「…………」
「道路」
「日当いくら?」
ノアが。
笑う。
「働けんじゃん」
「酒飲みてえんだよ!」
◇
その夜。
王が。
ダイヤを見る。
「働かない自由は」
「認める」
「だが」
「その生活を」
「いつまでも」
「国が支えるわけではない」
「そういうことか」
「はい」
◇
ジョーカーが。
微笑む。
「では」
「働かない自由にも」
「三ヶ月の」
「期限が?」
「違います」
ダイヤが。
即答する。
「働かない自由には」
「期限などありません」
「…………」
「他人のお金で」
「生活する期間に」
「期限があるのです」
◇
王が。
帳簿を見る。
「なるほど」
「これなら」
「国庫も――」
ダイヤが。
別の帳簿を。
置く。
「では次に」
「道路」
「水路」
「鉱山整備の」
「予算について」
「…………」
さらに。
もう一冊。
「病院」
「共同施設」
「自保」
「物価対策も」
「ございます」
「…………」
王が。
ジョーカーを見る。
「代わってくれ」
「嫌でございます」
「即答だな」
「私は」
「道化師ですので」
ダイヤが。
帳簿を開く。
「では」
「陛下」
「国を良くするための」
「お金の話を」
「始めましょう」




