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王の愚者  作者: クロワ
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94/105

94話「三ヶ月の猶予」

東部。


評議会。


王の前には。


積み上がった。


報告書。


物価対策。


生活支援。


道路整備。


鉱山整備。


自保への報酬。


「…………」


王が。


しばらく眺める。


「ジョーカー」


「はい」


「ダイヤを呼べ」


「王都から?」


「ああ」


「余には」


「もう」


「金の話が」


「分からん」



数日後。


東部。


財務卿。


ダイヤが到着する。


机の上には。


大量の帳簿。


「…………」


「陛下」


「なんだ」


「私が」


「王都にいる間に」


「随分と」


「お金のかかる国に」


「されましたね」


「必要だった」


「必要なものほど」


「高いのですよ」



ダイヤが。


報告書をめくる。


「物価を抑える」


「生活支援を続ける」


「道路を直す」


「鉱山も整備する」


「治安も守る」


「そして」


「税は増やすな」


「…………」


帳簿を閉じる。


「無理です」


「早いな」



王が。


93話の報告書を渡す。


「これもだ」


働けるのに。


働かない者。


働けないと訴える者。


本当に。


働けない者。


「完全には」


「見分けられん」


「だろうな」


「どうする?」



ダイヤが。


東部の地図を広げる。


「まず」


「働きたい者には」


「仕事を作ります」


「仕事を?」


「ええ」


地図を指す。


「道を作る」


「水路を直す」


「鉱山を整備する」


「人手が必要な場所なら」


「いくらでもあります」



「それなら」


「仕事がない者にも」


「賃金を払える」


「そして」


「道が整えば」


「輸送費も下がる」


「鉱山が整えば」


「生産量も増える」


「働く者が増えれば」


「税を払う者も増える」


王が。


少し笑う。


「全部」


「繋げるのか」


「そのための」


「財務です」



「では」


「働けるが」


「働きたくない者は?」


「働かなくても」


「構いません」


「…………」


「よいのか?」


「奴隷制を」


「廃止したのでしょう?」


「働くことまで」


「国が強制すれば」


「主人が」


「国に変わるだけです」



「ただし」


「現金は」


「支給しません」


「最低限の」


「食料を」


「支給します」


「酒代まで」


「国庫から」


「出す必要はありません」



ジョーカーが。


微笑む。


「例の」


「酒場の方には」


「悲しいお知らせですね」


「働いて」


「自分のお金で」


「飲んでいただきます」



王が。


尋ねる。


「心の問題で」


「働けないという者は?」


「同じです」


「本当か」


「嘘か」


「見分けないのか?」


「見分けられますか?」


「…………」


王が。


黙る。



「身体が健康でも」


「本当に」


「働けない者はいる」


「逆に」


「働けないと」


「嘘をつく者もいる」


「その心の中まで」


「国が完全に」


「見抜くことなど」


「できません」


「なら」


「無理に」


「見分けません」



「理由を問わず」


「最低限の食料を」


「三ヶ月」


「支給します」


「三ヶ月?」


「ええ」


「休むのも」


「仕事を探すのも」


「その間は」


「本人の自由です」



「三ヶ月を過ぎれば?」


「支給量を」


「徐々に減らします」


「急には」


「切らないのだな」


「ええ」


「自由になった者を」


「いきなり」


「放り出すつもりも」


「ありません」


「ですが」


「永遠に」


「養うつもりも」


「ありません」



「病や」


「怪我で」


「明らかに」


「生活が難しい者は?」


「別です」


「病院や」


「共同施設で」


「生活できるようにします」


「治療」


「食料」


「衣服」


「必要なものは」


「国が用意する」


「現金は?」


「必要ありません」


「生きるために」


「必要なものを」


「支給します」



その日の午後。


例の。


酒場の男。


役人の前。


「今月の金は?」


「今後」


「現金支給は」


「ありません」


「は?」


食料の袋を。


渡される。


「こちらを」


「…………」


「酒」


「買えないじゃん」


「道路整備の仕事なら」


「あります」


「嫌だ」


「水路整備は?」


「嫌だ」


「鉱山は?」


「もっと嫌だ」


「…………」


近くにいた。


ノアが。


男を見る。


「それ」


「働けないんじゃなくて」


「働きたくないだけじゃん」


「うるせえ!」



役人が。


続ける。


「働くかどうかは」


「あなたの自由です」


「ですが」


「働けば」


「賃金が出ます」


男が。


食料袋を見る。


酒場を見る。


「…………」


「道路」


「日当いくら?」


ノアが。


笑う。


「働けんじゃん」


「酒飲みてえんだよ!」



その夜。


王が。


ダイヤを見る。


「働かない自由は」


「認める」


「だが」


「その生活を」


「いつまでも」


「国が支えるわけではない」


「そういうことか」


「はい」



ジョーカーが。


微笑む。


「では」


「働かない自由にも」


「三ヶ月の」


「期限が?」


「違います」


ダイヤが。


即答する。


「働かない自由には」


「期限などありません」


「…………」


「他人のお金で」


「生活する期間に」


「期限があるのです」



王が。


帳簿を見る。


「なるほど」


「これなら」


「国庫も――」


ダイヤが。


別の帳簿を。


置く。


「では次に」


「道路」


「水路」


「鉱山整備の」


「予算について」


「…………」


さらに。


もう一冊。


「病院」


「共同施設」


「自保」


「物価対策も」


「ございます」


「…………」


王が。


ジョーカーを見る。


「代わってくれ」


「嫌でございます」


「即答だな」


「私は」


「道化師ですので」


ダイヤが。


帳簿を開く。


「では」


「陛下」


「国を良くするための」


「お金の話を」


「始めましょう」

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