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王の愚者  作者: クロワ
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89/105

89話「仕事」

翌日。


東部評議会。


「…………」


王の前に。


ノアが。


座っていた。


「仕事」


「ない?」


「…………」


王が。


ノアを見る。


「本当に」


「それだけを」


「言いに来たのか?」


「ああ」


「飯が」


「ねえんだよ」


「…………」


「狩りも」


「畑も」


「やってるけど」


「人数多いし」


「全然」


「足りねえ」



王が。


少し考える。


「鉱山は?」


「嫌だ」


「農園」


「嫌だ」


「…………」


「選り好みできる」


「立場なのか?」


「自由なんだろ?」


「…………」


王が。


黙る。


「確かに」



ジョーカーが。


尋ねる。


「では」


「何が」


「できますか?」


「喧嘩」


「却下だ」


「まだ」


「何も言ってねえだろ」


「どうせ」


「そうだろう」


「…………」


ノアが。


考える。


「狩り」


「野営」


「山道なら」


「だいたい分かる」


「あと」


「人探すのも」


「結構得意」


「人探し?」


「ああ」


「奴隷が」


「隠されてる場所」


「ずっと」


「探してたから」



王が。


ノアを見る。


「昨日も」


「元奴隷を」


「助けたそうだな」


「ああ」


「連れ戻そうとしてた」


「…………」


「殺さなかったそうだな」


ノアが。


嫌そうな顔をする。


「お前が」


「うるせえから」


「そうか」



王が。


少し考える。


「なら」


「それを」


「続けろ」


「…………」


ノアが。


首を傾げる。


「それ?」


「人を探す」


「困っている者を」


「見つける」


「守る」


「…………」


「隠れて」


「奴隷を使う者がいれば」


「見つけろ」


「人買いがいれば」


「捕らえろ」


「元奴隷を」


「連れ戻そうとする者がいれば」


「止めろ」


ノアが。


王を見る。


「それ」


「今までと」


「あんま」


「変わんなくね?」


「一つ」


「大きく違う」


「何?」


「奪うな」


「…………」


ノアが。


黙る。


「殺すな」


「…………」


さらに。


黙る。


「燃やすな」


「…………」


「注文」


「多くない?」


「普通だ」



王が。


続ける。


「その代わり」


「仕事として」


「国が」


「金を払う」


「…………」


ノアが。


目を丸くする。


「金?」


「ああ」


「それで」


「食料を買え」


「…………」


「奪わなくても?」


「買え」


「…………」


ノアが。


少し考える。


「すげえな」


「働くって」


「何がだ」


「人から」


「奪わなくても」


「飯食えるんだな」


「それが普通だ」



「ただし」


王が。


言う。


「王国軍には」


「入れん」


「…………」


「お前たちは」


「東部の者だ」


「東部のことは」


「東部で決めたい」


「そう言っていた者たちも」


「多かった」


ノアが。


見る。


「東部に」


「自警団を作る」


「…………」


「王国軍とは」


「別の組織だ」


「東部を巡回し」


「人身売買」


「違法な拘束」


「略奪」


「暴力」


「そうしたものから」


「民を守る」



「民って」


「元奴隷?」


「違う」


王が。


答える。


「全員だ」


「…………」


ノアが。


黙る。


「奴隷だった者も」


「領主だった者も」


「農民も」


「商人も」


「子供も」


「…………」


「助けを求める者が」


「いるなら」


「同じように」


「守れ」


ノアが。


王を見る。


「元領主でも?」


「ああ」


「嫌だね」


「では」


「仕事はなしだ」


「…………」


ノアが。


黙る。


「飯も?」


「当然だ」


「…………」


「汚えな」


「交渉と言え」



しばらく。


ノアが。


考える。


「…………」


「まあ」


「困ってるなら」


「仕方ねえか」


「…………」


「ただ」


「嫌いな奴には」


「嫌いって」


「言うぞ」


「好きにしろ」


「助けたあと」


「悪口も言う」


「好きにしろ」


「…………」


「殴るのは?」


「駄目だ」


「厳しいな」



ジョーカーが。


二人を。


眺めている。


「何だ」


王が。


尋ねる。


「いえ」


ジョーカーが。


微笑む。


「昨日まで」


「国に追われていた方々が」


「今日から」


「国の治安を」


「守るとは」


「…………」


「世の中」


「何が」


「仕事になるか」


「分からないものですね」



数日後。


山中。


ノアが。


仲間たちを見る。


「ということで」


「仕事」


「もらった」


「…………」


「何すんの?」


「今までと」


「だいたい」


「同じ」


「…………」


「ただ」


「人から」


「飯奪ったら」


「怒られる」


「当たり前だろ」


「あと」


「人殺しても」


「怒られる」


「それも」


「当たり前だろ」



一人の男が。


尋ねる。


「で」


「俺たち」


「何て名前になるんだ?」


「…………」


皆が。


ノアを見る。


ノアも。


考える。


「奴隷」


「もう」


「いねえしな」


「…………」


男が。


笑う。


「じゃあ」


「奴隷解放戦線は」


「終わりか」


ノアが。


少しだけ。


黙る。


「ああ」


「…………」


「終わりで」


「いいんじゃねえの」



鎖を。


壊すために。


集まった者たちは。


その日。


初めて。


鎖のない場所で。


生きるための。


仕事を得た。

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