↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王の愚者  作者: クロワ
PR
84/105

84話「許す資格」

西の農園。


王たちが。


到着する。


門は壊れ。


屋敷から。


煙が上がっている。


倒れた用心棒。


傷ついた奴隷たち。


その中央。


一人の領主が。


跪かされていた。



領主の前。


元奴隷の女が。


剣を握っている。


だが。


その手は。


震えている。


「この人は」


「私の夫を」


「殺しました」


「娘も」


「売りました」


領主が。


後ずさる。


「待て……!」


「金なら払う!」


「娘も」


「探してやる!」


女は。


剣を握ったまま。


動けない。


王が。


一歩。


前へ出る。


「もういい」


「剣を下ろせ」


「…………」


その時。


横から。


ノアが。


女の剣を取る。


「ノア……?」


次の瞬間。


剣が。


領主の胸を。


貫く。


「…………!」


領主が。


崩れ落ちる。



「ノア!」


王が。


睨む。


ノアは。


剣の血を払う。


「何だよ」


「なぜ」


「殺した」


「殺されるようなことを」


「してきたからだ」


「…………」


「夫を殺して」


「娘を売って」


「何年も」


「人を家畜みたいに」


「扱ってきた」


王が。


倒れた領主を見る。


「だから」


「殺していいと?」


「ああ」


ノアは。


迷わない。


「俺は」


「そう思ってる」



「復讐しても」


「失ったものは」


「戻らんぞ」


ノアが。


笑う。


「知ってるよ」


「そんなこと」


「俺たちが」


「一番」


「知ってる」


「…………」


「こいつを殺したって」


「死んだ奴は」


「帰ってこない」


「売られた家族だって」


「戻ってこない」


ノアが。


剣を見る。


「俺の弟も」


「どこにいるのか」


「生きてるのかすら」


「分からねえ」


「…………」


「だから何だ?」


王が。


ノアを見る。


「…………」


「忘れろ」


「許せ」


「前を向け」


「そう言う奴も」


「いるだろうな」


「でも」


「俺は」


「ごめんだ」


「全部奪った奴らを」


「許したふりして」


「何もなかったみたいに」


「生きるなんて」


「俺は絶対に嫌だ」



ジョーカーが。


小さく笑う。


「許しとは」


「随分と」


「気前のいいものですね」


「…………」


「傷ついていない方ほど」


「他人の許しを」


「簡単に」


「差し出されますので」


王が。


ジョーカーを見る。


「ああ」


「だから」


「余は」


「許せとは言わん」



ノアが。


王を見る。


「じゃあ」


「何が言いたい?」


「殺すなと」


「言っている」


「…………」


ノアが。


笑う。


「王様」


「お前」


「家族を」


「売られたことあるか?」


「鎖につながれて」


「殴られ続けたことは?」


「逃げようとして」


「身体を」


「切り落とされたことは?」


「…………」


ノアが。


一歩。


近づく。


「同じ目に」


「遭ってから」


「言ってみろよ」


「それでも」


「殺すなって」


「言えるのか?」



王は。


しばらく。


黙る。


「分からん」


ノアが。


僅かに。


眉を動かす。


「余は」


「お前ではない」


「同じ目に遭えば」


「余も」


「復讐を望むかもしれん」


「…………」


「だから」


「お前の憎しみを」


「間違いだとは」


「言わん」


「だが」


王が。


倒れた領主を見る。


「それでも」


「殺すことを」


「認めることはできん」


ノアが。


笑う。


「そうかよ」


血のついた剣を。


肩に担ぐ。


「なら」


「止めてみろ」


「俺たちは」


「正しいから」


「殺したいんじゃねえ」


「…………」


「憎いんだよ」


「俺たちから」


「全部奪った奴らが」


「殺したいくらい」


「憎いんだ」


「…………」


「俺たちは」


「止まらねえ」


ノアが。


王の横を。


通り過ぎる。


王は。


止めない。


ただ。


その背中を。


見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。