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王の愚者  作者: クロワ
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83/106

83話「広がる火」

東部。


王とジョーカーが。


街へ戻る途中。


兵士が。


駆けてくる。


「陛下!」


「各地で」


「奴隷と領主の」


「衝突が起きています!」


「解放戦線か?」


「いえ」


「違います」



一つの農園。


雇われた用心棒。


その足元に。


奴隷が倒れている。


「何があった」


領主が答える。


「逃亡しようとしたので」


「止めただけです」


「殺してか?」


「…………」


「一人を許せば」


「全員が逃げます」


「秩序を」


「守るためです」



別の鉱山。


今度は。


領主が。


血を流して倒れている。


武器を持った奴隷が。


王を見る。


「仲間を」


「殺された」


「だから」


「俺たちも」


「やった」


「…………」


「殺されるまで」


「待てっていうのか?」



領主たちは。


反乱を恐れ。


用心棒を雇う。


奴隷たちは。


殺されることを恐れ。


武器を隠す。


王が。


呟く。


「どちらも」


「自分たちが」


「やられたからだと」


「言うのだな」


「ええ」


ジョーカーが。


笑う。


「人というものは」


「不思議ですね」


「殴られた話は」


「昨日のことのように」


「覚えているのに」


「自分が」


「殴った話になると」


「随分と」


「記憶が」


「曖昧になるようです」


「…………」


「皆様」


「やられたことは」


「積極的に」


「お話しくださるのですが」


「ご自身が」


「やったことについては」


「あまり」


「お話しになりませんので」


王が。


黙る。


ジョーカーが。


笑う。


「それでは」


「誰も」


「悪くありませんね」


「死体だけは」


「増えておりますが」



その時。


また。


兵士が駆けてくる。


「陛下!」


「西の農園でも」


「衝突が!」


遠くに。


煙が上がっている。


ノアは。


そこにはいない。


解放戦線も。


いない。


それでも。


火は。


広がっていく。


王が。


馬に乗る。


「行くぞ」


「このままでは」


「自由になる前に」


「東部が」


「壊れる」

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