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王の愚者  作者: クロワ
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82/105

82話「奪う者の都合」

砦。


一台の荷車が。


戻ってくる。


積まれているのは。


パン。


野菜。


穀物。


王が。


それを見る。


「どこから?」


「近くの村だ」


ノアが答える。


「奪ったのか?」


「ああ」


「…………」



王が。


ノアを見る。


「奴隷には」


「自分の人生を」


「自分で決めさせる」


「そう言ったな」


「ああ」


「なら」


「なぜ」


「村人の物は」


「お前たちが決めて」


「奪う?」


「…………」


ノアが。


王を見る。


「村の連中は」


「知ってた」


「俺たちが」


「殴られてることも」


「子供が」


「売られてることも」


「全部な」


一人の男が。


口を開く。


「俺は昔」


「あの村に」


「逃げ込んだ」


「助けてくれって」


「頼んだ」


「…………」


「次の日」


「領主に」


「引き渡されたよ」



その時。


砦の入口。


一人の少女が。


立っている。


「食べ物を」


「返してください」


「…………」


「弟が」


「三日」


「何も」


「食べてません」


ノアが。


少女を見る。


「俺たちも」


「食わなきゃ」


「死ぬ」


少女が。


答える。


「私たちも」


「食べなきゃ」


「死にます」


「…………」


静かになる。



王が。


口を開く。


「領主にも」


「都合はあった」


ノアが。


睨む。


「鉱山を動かすため」


「金を稼ぐため」


「だから」


「奴隷が必要だった」


「お前は」


「それを許さない」


「…………」


王が。


荷車を見る。


「なら」


「これは」


「何だ?」


ノアは。


しばらく黙る。


「俺たちの」


「都合だよ」


「…………」


「分かってる」


「俺たちが」


「奪ってることくらい」


「でも」


「食わなきゃ」


「死ぬんだよ」


ノアが。


王を見る。


「じゃあ」


「俺たちが」


「また」


「我慢すればいいのか?」


王は。


答えない。



ノアが。


少女を見る。


そして。


荷車から。


袋を一つ取る。


少女へ渡す。


「持ってけ」


「…………」


少女は。


袋を抱え。


砦を出ていく。


王が。


その背中を見る。


ノアが。


呟く。


「綺麗に」


「生きられるなら」


「とっくに」


「そうしてる」


王は。


荷車を見る。


奴隷から。


奪った者。


奪われた者から。


奪われた者。


その間に。


食料だけが。


積まれていた。

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