80話「遅すぎた王」
南西の鉱山。
王と。
ジョーカーが。
到着する。
地面には。
外された首輪。
その先に。
剣を持った青年。
「お前が」
「奴隷解放戦線の」
「指導者か」
「ああ」
「ノアだ」
ジョーカーと。
ノア。
二人は。
初めて。
顔を合わせる。
◇
ノアが。
王を見る。
「奴隷を」
「解放するらしいな」
「ああ」
「数年かけて?」
「…………」
ノアが。
笑う。
「じゃあ」
「今日売られる奴は?」
「明日」
「鉱山で死ぬ奴は?」
「そいつらには」
「あと数年」
「待てって?」
「売買と」
「家族を引き離すことは」
「すぐに禁止する」
「その上で――」
「遅えよ」
「…………」
「俺が」
「売られた時に」
「やってくれ」
「弟が」
「売られた時に」
「やってくれ」
ジョーカーが。
僅かに。
ノアを見る。
◇
王が。
口を開く。
「奴隷を」
「解放することは」
「止めん」
「だが」
「村を襲い」
「人から奪い」
「殺すことは」
「認めん」
ノアが。
笑う。
「王様が」
「それを言うのか?」
「この前の反乱で」
「何人死んだ?」
「その後の戦争で」
「何人死んだ?」
「…………」
「国のため」
「平和のため」
「そう言って」
「お前らは」
「何人に」
「人を殺させた?」
王は。
黙って聞く。
「それに」
「村の連中だって」
「俺たちが」
「首輪をつけてる横を」
「毎日歩いてた」
「子供が売られるのも」
「知ってた」
「それでも」
「何もしなかった」
「…………」
「そいつらに」
「罪はないのか?」
◇
「ある」
ノアが。
王を見る。
「この国が」
「奴隷を放置してきたことも」
「戦争で」
「多くの者を死なせたことも」
「正しかったとは」
「思わん」
「だが」
「余たちが」
「間違えたからといって」
「お前たちの間違いまで」
「正しくなるわけではない」
「…………」
ノアが。
小さく笑う。
「正しいかどうかなんて」
「どうでもいい」
「正しく」
「助けてもらえるまで」
「待ってた奴から」
「死んでいったんだ」
◇
王が。
ノアを見る。
「お前たちが」
「何をされたのか」
「何を変えるべきなのか」
「王都で」
「直接話せ」
「…………」
ノアが。
しばらく。
王を見る。
そして。
笑う。
「王都?」
「ああ」
「俺たちを」
「ずっと見なかった場所へ?」
「…………」
ノアが。
剣を担ぐ。
「嫌だね」
「話したければ」
「王様が」
「こっちに来い」
王が。
少し。
目を見開く。
ノアが。
背を向ける。
「俺たちは」
「もう」
「王様に呼ばれて」
「行く側じゃねえ」
「…………」
「次は」
「そっちが」
「来る番だ」
王と。
ジョーカーを残し。
ノアたちは。
解放された奴隷とともに。
鉱山を去っていく。




