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王の愚者  作者: クロワ
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80/108

80話「遅すぎた王」

南西の鉱山。


王と。


ジョーカーが。


到着する。


地面には。


外された首輪。


その先に。


剣を持った青年。


「お前が」


「奴隷解放戦線の」


「指導者か」


「ああ」


「ノアだ」


ジョーカーと。


ノア。


二人は。


初めて。


顔を合わせる。


◇


ノアが。


王を見る。


「奴隷を」


「解放するらしいな」


「ああ」


「数年かけて?」


「…………」


ノアが。


笑う。


「じゃあ」


「今日売られる奴は?」


「明日」


「鉱山で死ぬ奴は?」


「そいつらには」


「あと数年」


「待てって?」


「売買と」


「家族を引き離すことは」


「すぐに禁止する」


「その上で――」


「遅えよ」


「…………」


「俺が」


「売られた時に」


「やってくれ」


「弟が」


「売られた時に」


「やってくれ」


ジョーカーが。


僅かに。


ノアを見る。


◇


王が。


口を開く。


「奴隷を」


「解放することは」


「止めん」


「だが」


「村を襲い」


「人から奪い」


「殺すことは」


「認めん」


ノアが。


笑う。


「王様が」


「それを言うのか?」


「この前の反乱で」


「何人死んだ?」


「その後の戦争で」


「何人死んだ?」


「…………」


「国のため」


「平和のため」


「そう言って」


「お前らは」


「何人に」


「人を殺させた?」


王は。


黙って聞く。


「それに」


「村の連中だって」


「俺たちが」


「首輪をつけてる横を」


「毎日歩いてた」


「子供が売られるのも」


「知ってた」


「それでも」


「何もしなかった」


「…………」


「そいつらに」


「罪はないのか?」


◇


「ある」


ノアが。


王を見る。


「この国が」


「奴隷を放置してきたことも」


「戦争で」


「多くの者を死なせたことも」


「正しかったとは」


「思わん」


「だが」


「余たちが」


「間違えたからといって」


「お前たちの間違いまで」


「正しくなるわけではない」


「…………」


ノアが。


小さく笑う。


「正しいかどうかなんて」


「どうでもいい」


「正しく」


「助けてもらえるまで」


「待ってた奴から」


「死んでいったんだ」


◇


王が。


ノアを見る。


「お前たちが」


「何をされたのか」


「何を変えるべきなのか」


「王都で」


「直接話せ」


「…………」


ノアが。


しばらく。


王を見る。


そして。


笑う。


「王都?」


「ああ」


「俺たちを」


「ずっと見なかった場所へ?」


「…………」


ノアが。


剣を担ぐ。


「嫌だね」


「話したければ」


「王様が」


「こっちに来い」


王が。


少し。


目を見開く。


ノアが。


背を向ける。


「俺たちは」


「もう」


「王様に呼ばれて」


「行く側じゃねえ」


「…………」


「次は」


「そっちが」


「来る番だ」


王と。


ジョーカーを残し。


ノアたちは。


解放された奴隷とともに。


鉱山を去っていく。

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