78話「拾われなかった者たち」
東部。
山中。
古びた砦。
そこには。
男も。
女も。
子供もいた。
首輪の跡が残る者。
片腕を失った者。
戦争で。
家族を失った者。
彼らが。
奴隷解放戦線だった。
◇
荷車から。
食料が降ろされる。
「食料は?」
「近くの村から」
「奪ってきた」
一人の男が。
顔を曇らせる。
「だが」
「あの村の連中は」
「領主じゃない」
「普通の奴らだ」
「普通?」
青年が。
笑う。
「俺たちが」
「首輪をつけて」
「歩いてる横を」
「あいつらは」
「何年も」
「歩いてた」
「…………」
「子供が」
「売られるのも」
「鉱山から」
「死体が運ばれるのも」
「知ってた」
青年が。
食料袋を見る。
「それでも」
「見て見ぬふりをした」
「…………」
「俺には」
「領主だけが」
「俺たちを奴隷にしたとは」
「思えねえよ」
◇
「今日」
「解放した奴らは?」
「四十七人」
「二十人は」
「俺たちと来るそうだ」
「残りは?」
「ここを出たいと」
「行かせろ」
「いいのか?」
青年が。
男を見る。
「当たり前だ」
「自分の人生を」
「自分で決めるために」
「助けたんだ」
「…………」
「俺たちと来いなんて」
「命令したら」
「次の主人が」
「俺になるだけだろ」
◇
夜。
青年が。
一人。
焚き火を見ている。
仲間が。
隣に座る。
「王が」
「東部に来てるらしい」
「奴隷制度を」
「なくすつもりだと」
「…………」
青年が。
笑う。
「いつ?」
「数年かけて」
「変えていくそうだ」
「数年……」
青年が。
炎を見る。
「じゃあ」
「今日売られる奴は?」
「明日」
「鉱山で死ぬ奴は?」
「…………」
「そいつらには」
「あと数年」
「待てって?」
◇
「王と」
「話してみるか?」
「…………」
青年が。
懐から。
古びた徽章を取り出す。
「俺が」
「ガキだった頃」
「父親が」
「戦争で死んだ」
「母親も」
「その後」
「死んだ」
「…………」
「俺には」
「弟がいた」
「まだ」
「小さかった」
「食うものがなくて」
「拾ってくれるって奴を」
「信じた」
青年が。
小さく笑う。
「俺は」
「奴隷として売られた」
「弟も」
「別の場所に」
「売られた」
「…………」
「それっきりだ」
「生きてるのか?」
「さあな」
「名前すら」
「今も同じなのか」
「分からねえ」
「…………」
青年が。
徽章を握る。
「何度も」
「誰か助けてくれって」
「思ったよ」
「…………」
「でも」
「誰も来なかった」
◇
青年が。
立ち上がる。
「次は?」
仲間が。
地図を広げる。
「南の大農園」
「奴隷は?」
「百人以上」
青年が。
剣を取る。
「行くぞ」
「王様が」
「話し合ってる間に」
「俺たちは」
「一人でも」
「多く助ける」
「…………」
「自由は」
「いつか」
「もらうものじゃない」
砦の外へ。
歩き出す。
「自分で」
「奪い返すものだ」




