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王の愚者  作者: クロワ
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78/105

78話「拾われなかった者たち」

東部。


山中。


古びた砦。


そこには。


男も。


女も。


子供もいた。


首輪の跡が残る者。


片腕を失った者。


戦争で。


家族を失った者。


彼らが。


奴隷解放戦線だった。



荷車から。


食料が降ろされる。


「食料は?」


「近くの村から」


「奪ってきた」


一人の男が。


顔を曇らせる。


「だが」


「あの村の連中は」


「領主じゃない」


「普通の奴らだ」


「普通?」


青年が。


笑う。


「俺たちが」


「首輪をつけて」


「歩いてる横を」


「あいつらは」


「何年も」


「歩いてた」


「…………」


「子供が」


「売られるのも」


「鉱山から」


「死体が運ばれるのも」


「知ってた」


青年が。


食料袋を見る。


「それでも」


「見て見ぬふりをした」


「…………」


「俺には」


「領主だけが」


「俺たちを奴隷にしたとは」


「思えねえよ」



「今日」


「解放した奴らは?」


「四十七人」


「二十人は」


「俺たちと来るそうだ」


「残りは?」


「ここを出たいと」


「行かせろ」


「いいのか?」


青年が。


男を見る。


「当たり前だ」


「自分の人生を」


「自分で決めるために」


「助けたんだ」


「…………」


「俺たちと来いなんて」


「命令したら」


「次の主人が」


「俺になるだけだろ」



夜。


青年が。


一人。


焚き火を見ている。


仲間が。


隣に座る。


「王が」


「東部に来てるらしい」


「奴隷制度を」


「なくすつもりだと」


「…………」


青年が。


笑う。


「いつ?」


「数年かけて」


「変えていくそうだ」


「数年……」


青年が。


炎を見る。


「じゃあ」


「今日売られる奴は?」


「明日」


「鉱山で死ぬ奴は?」


「…………」


「そいつらには」


「あと数年」


「待てって?」



「王と」


「話してみるか?」


「…………」


青年が。


懐から。


古びた徽章を取り出す。


「俺が」


「ガキだった頃」


「父親が」


「戦争で死んだ」


「母親も」


「その後」


「死んだ」


「…………」


「俺には」


「弟がいた」


「まだ」


「小さかった」


「食うものがなくて」


「拾ってくれるって奴を」


「信じた」


青年が。


小さく笑う。


「俺は」


「奴隷として売られた」


「弟も」


「別の場所に」


「売られた」


「…………」


「それっきりだ」


「生きてるのか?」


「さあな」


「名前すら」


「今も同じなのか」


「分からねえ」


「…………」


青年が。


徽章を握る。


「何度も」


「誰か助けてくれって」


「思ったよ」


「…………」


「でも」


「誰も来なかった」



青年が。


立ち上がる。


「次は?」


仲間が。


地図を広げる。


「南の大農園」


「奴隷は?」


「百人以上」


青年が。


剣を取る。


「行くぞ」


「王様が」


「話し合ってる間に」


「俺たちは」


「一人でも」


「多く助ける」


「…………」


「自由は」


「いつか」


「もらうものじゃない」


砦の外へ。


歩き出す。


「自分で」


「奪い返すものだ」

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