77話「奴隷解放戦線」
東部評議会。
議論は。
まだ続いていた。
「奴隷を労働者にすれば」
「鉱山の利益は――」
その時。
扉が。
勢いよく開く。
「報告!」
東部兵が。
駆け込んでくる。
「北東部の鉱山が」
「襲撃されました!」
「何!?」
鉱山主が。
立ち上がる。
「奴隷たちが」
「解放されています!」
「…………」
王が。
兵を見る。
「誰がやった?」
「奴らは」
「自らを――」
「奴隷解放戦線と」
「名乗っています」
◇
「奴隷解放戦線?」
王が。
聞き返す。
「はい」
「元奴隷」
「逃亡奴隷」
「戦争孤児」
「行き場を失った者たちが」
「集まった組織だと」
「…………」
「以前から」
「領主の農地や」
「鉱山を襲っていたようですが」
「ここ最近」
「急速に勢力を」
「拡大しています」
ジョーカーが。
静かに。
聞いている。
◇
「被害は?」
「鉱山主の屋敷が焼かれ」
「管理人が」
「数名殺されています」
「さらに」
「解放された奴隷の一部も」
「領主の屋敷や商店を」
「襲っていると」
「…………!」
鉱山主が。
王を見る。
「見たでしょう!」
「これが」
「奴隷を自由にした結果だ!」
「…………」
王が。
鉱山主を見る。
「違う」
「何が違う!」
「奴隷であったことと」
「人を殺していいことは」
「別の話だ」
「だが同じように」
「…………」
「奴隷を解放したことと」
「この者たちが罪を犯したことも」
「別の話だ」
鉱山主が。
黙る。
◇
兵が。
続ける。
「それと」
「彼らが」
「声明を出しています」
「読め」
兵が。
紙を開く。
「――我々は」
「自由を」
「お願いしない」
「…………」
「王にも」
「領主にも」
「許可を求めない」
「我々の人生は」
「我々自身のものだ」
「ゆえに」
「奪われた自由を」
「我々自身の手で」
「奪い返す」
部屋が。
静まり返る。
「…………」
兵が。
最後の一文を読む。
「すべての奴隷を」
「解放するまで」
「我々は」
「止まらない」
◇
評議会を出る。
王と。
ジョーカー。
「ニア」
「はい」
「どう思う?」
「…………」
ジョーカーが。
いつものように。
笑う。
「随分と」
「懐かしい方々が」
「現れましたね」
王が。
横を見る。
「懐かしい?」
「居場所をなくし」
「誰にも助けてもらえず」
「自分で逃げるしかなかった方々です」
「…………」
ジョーカーは。
笑ったまま。
前を見る。
「私と」
「よく似ております」
王は。
何も言わない。
少しして。
ジョーカーが。
続ける。
「ただ」
「一つだけ」
「違いますね」
「何がだ?」
「私は」
「逃げた先で」
「あなた方に」
「拾われました」
「…………」
「彼らには」
「それが」
「なかったのでしょう」
王が。
評議会の外を見る。
遠くから。
鐘の音が。
響いていた。




