75話「自由の値段」
王都。
会議室。
王の前に。
ハート。
ダイヤ。
スペード。
ジョーカー。
「奴隷制度を」
「なくしたい」
「…………」
ダイヤが。
口を開く。
「一斉にですか?」
「いや」
王が。
首を振る。
「それでは」
「別の者が苦しむ」
◇
ダイヤが。
資料を広げる。
「東部の農地と鉱山は」
「奴隷の労働に」
「大きく依存しています」
「突然解放すれば」
「生産が落ち」
「物価も上がる」
「そして」
「奴隷自身も」
「仕事と住居を失います」
「分かっている」
王が。
頷く。
「だから」
「少しずつ変える」
「まず」
「奴隷の売買を禁止する」
「家族を引き離すことも」
「認めない」
「その上で」
「奴隷を」
「賃金を受け取る労働者へ」
「変えていく」
◇
スペードが。
腕を組む。
「東部が」
「受け入れると思うか?」
「思わん」
「…………」
「だから」
「余たちも譲る」
王が。
地図を広げる。
「東部への」
「復興税を減らす」
「評議会による自治も」
「ある程度認める」
「王国も」
「街道や鉱山へ」
「金を出す」
ダイヤが。
顔を上げる。
「また」
「国庫からですか」
「…………」
「そう嫌そうな顔をするな」
「財務卿ですので」
◇
ハートが。
王を見る。
「それでも」
「反対する者は」
「いるでしょう」
「ああ」
「全員が納得するとは」
「思っていない」
王が。
東部の地図を見る。
「だが」
「東部が望む」
「決める自由は」
「認める」
「…………」
「ただし」
「他人の人生まで」
「決める自由は」
「認めん」
ジョーカーが。
少し笑う。
◇
ダイヤが。
ため息をつく。
「しかし」
「奴隷を労働者にすれば」
「当然」
「賃金が必要になります」
「住居」
「仕事」
「制度を管理する役人」
「すべて」
「金がかかる」
ジョーカーが。
首を傾げる。
「奴隷のままなら」
「無料だったのに?」
「…………」
王が。
ジョーカーを見る。
「それを」
「無料と呼ぶのか?」
「いいえ」
ジョーカーが。
笑う。
「払っていた方が」
「違っただけでしょう」
「…………」
「今までは」
「奴隷本人が」
「払っていただけです」
部屋が。
静かになる。
王が。
立ち上がる。
「なら」
「これからは」
「国も」
「東部も」
「払えばいい」
「…………」
「自由の値段を」
「本人だけに」
「払わせるな」
◇
王が。
東部の地図を取る。
「もう一度」
「東部へ行く」
「今度は」
「話を聞きにではない」
「…………」
「話を」
「つけに行く」




