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王の愚者  作者: クロワ
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74/109

74話「自由の先」

翌日。


東部。


王と。


ジョーカーは。


再び。


奴隷たちの元を訪れる。


一人の女が。


洗濯物を運んでいる。


王が。


声をかける。


「少し」


「話を聞いてもいいか?」


「…………」


女が。


王を見る。


「何でしょう」


「お前は」


「自由になりたいか?」


「…………」


女が。


眉をひそめる。


「当たり前でしょう」


◇


「昨日」


「同じ質問をした男は」


「自由になりたくないと」


「言っていた」


「自由になれば」


「食べていけないと」


「そういう人も」


「いるでしょうね」


女が。


洗濯物を置く。


「でも」


「私は」


「自由になりたい」


「なぜだ?」


「…………」


女が。


少し黙る。


「娘が」


「いるんです」


「三年前」


「別の領主に」


「売られました」


「…………」


「夫も」


「鉱山が見つかった時」


「人手が必要だからと」


「別の町へ」


「それから」


「一度も」


「会っていません」


王が。


黙る。


「私たちは」


「どこで働くかも」


「どこで暮らすかも」


「誰と暮らすかも」


「決められない」


「…………」


女が。


王を見る。


「自由になりたいかなんて」


「聞かないでください」


「なりたいに」


「決まってるでしょう」


「…………」


「貧しくてもいい」


「せめて」


「誰と生きるかくらい」


「自分で」


「決めたい」


◇


帰り道。


王が。


口を開く。


「昨日の男は」


「奴隷のままでいいと言った」


「今日の者は」


「自由になりたいと言った」


「ええ」


「同じ奴隷でも」


「答えは違うのだな」


ジョーカーが。


笑う。


「当然でしょう」


「奴隷である前に」


「一人の人間ですので」


「…………」


少し歩いて。


ジョーカーが。


続ける。


「ちなみに」


「私も」


「親の名前も」


「顔も」


「知りません」


「…………」


王が。


ジョーカーを見る。


「兄弟が」


「いるのかどうかさえ」


「知りませんね」


「…………」


それでも。


ジョーカーは。


笑っている。


「奴隷というものは」


「自分の人生を」


「決められないだけでは」


「ございません」


「自分の人生に」


「誰がいたのかさえ」


「知らないことも」


「ありますので」


「…………」


王は。


しばらく。


何も言わない。


やがて。


前を向く。


「王都へ戻るぞ」


「よろしいので?」


「ああ」


「聞くべき声は」


「聞いた」


「…………」


「今度は」


「余が」


「決める番だ」


ジョーカーが。


王を見る。


そして。


笑う。


「承知しました」


二人は。


王都へと。


歩き出した。

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