73話「誰の声」
東部。
市場。
王と。
ジョーカーが歩く。
「評議会ではなく」
「民の話を聞く」
「承知しました」
◇
農夫。
「評議会には」
「賛成だ」
「俺たちの土地で」
「稼いだ金だろ?」
「東部のために」
「使ってほしい」
◇
商人。
「王国から離れる?」
「困るよ」
「商売相手は」
「王国中にいるんだ」
「東部だけで」
「何ができる」
◇
鉱夫。
「豊かになった?」
男が。
笑う。
「鉱山主はな」
「俺たちは」
「昨日も今日も」
「穴を掘ってるよ」
◇
王が。
歩きながら。
呟く。
「皆」
「言っていることが」
「違うな」
「当然でしょう」
ジョーカーが。
笑う。
「民の声というものは」
「不思議でして」
「…………」
「自分と同じ意見の民を」
「たくさん集めれば」
「民の声に」
「なるそうです」
「違う意見の者は?」
「少数意見と」
「呼べばよろしいかと」
「…………」
◇
道端。
一人の老人が。
座っている。
「王だろうが」
「評議会だろうが」
「わしには」
「どちらでもいい」
「なぜだ?」
老人が。
街を見る。
「決める奴が」
「変わるだけならな」
「…………」
王が。
黙る。
◇
再び。
街を歩く。
王が。
足を止める。
鉱石を運ぶ。
奴隷たち。
「…………」
「ニア」
「はい」
「余たちは」
「まだ」
「聞いていないな」
ジョーカーも。
奴隷たちを見る。
「ええ」
「一番」
「決める自由のない方々には」
◇
仕事を終えた。
一人の奴隷。
王が。
その男の前に立つ。
男が。
怯えて。
頭を下げる。
「顔を上げろ」
「…………」
男が。
ゆっくり。
王を見る。
「一つ」
「聞きたい」
「はい……」
王が。
少し迷って。
尋ねる。
「お前は」
「自由になりたいか?」
「…………」
奴隷が。
王を見る。
そして。
答える。
「いいえ」
「…………」
王が。
目を見開く。
ジョーカーも。
何も言わない。
「自由には」
「なりたくありません」
「なぜだ?」
「…………」
男が。
俯く。
「自由になったら」
「明日から」
「誰が」
「飯をくれるんですか?」
「…………」
「俺には」
「家も」
「金も」
「ありません」
王は。
答えられない。
男が。
再び。
頭を下げる。
「仕事に」
「戻っても?」
「…………」
「ああ」
男は。
鉱山へ。
戻っていく。
王と。
ジョーカーが。
その背中を見る。
「ニア」
「はい」
「自由とは」
「与えれば」
「それで終わりでは」
「ないのだな」
「…………」
ジョーカーが。
男の背中を見る。
「どうやら」
「自由にも」
「その後の生活が」
「必要なようですね」




