72話「今さら」
東部評議会。
沈黙の中。
一人の代表が。
ジョーカーを見る。
「随分と」
「奴隷を」
「気にされるのですね」
「…………」
「ですが」
「奴隷を使っているのは」
「東部だけではありません」
王が。
男を見る。
「王都でも」
「何十年も前から」
「使われてきた」
「今では」
「減ったそうですが」
「まだ」
「残っていますよね?」
「…………」
「他の地域にも」
「奴隷を使う土地はある」
男が。
笑う。
「なのに」
「なぜ今さら」
「東部だけを?」
「…………」
「我々が貧しかった頃には」
「誰も」
「気にしなかったのに」
◇
別の代表が。
口を開く。
「それに」
「我々が」
「奴隷を解放すれば」
「誰が」
「鉱山で働くのです?」
「誰が」
「農地を耕すのです?」
「そして」
「彼ら自身も」
「明日から」
「どこで暮らし」
「何を食べる?」
「…………」
「自由にする」
「その一言で」
「終わる話ではありません」
王が。
窓の外を見る。
働く。
奴隷たち。
「…………」
「そうだな」
評議会の者たちが。
王を見る。
「余の国は」
「今まで」
「これを許してきた」
「東部だけを」
「責めることはできん」
「…………」
「だが」
王が。
評議会を見る。
「今まで」
「許してきたからといって」
「これからも」
「許す理由にはならん」
「…………」
「これは」
「東部だけではない」
「王国全体の」
「問題だ」
◇
評議会を出る。
王と。
ジョーカー。
「珍しいな」
「何がでしょう?」
「随分と」
「静かではないか」
「…………」
ジョーカーが。
少し笑う。
「自分のことを」
「棚に上げて」
「皮肉を言うのは」
「得意なのですが」
「…………」
「国ごと」
「棚に上げるには」
「少々」
「重かったようです」
王が。
前を見る。
「ニア」
「はい」
「東部を」
「もう少し見るぞ」
「評議会ではなく」
「ここで暮らす」
「者たちをだ」
「…………」
「承知しました」
二人は。
東部の街へ。
歩いていった。




