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王の愚者  作者: クロワ
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72/104

72話「今さら」

東部評議会。


沈黙の中。


一人の代表が。


ジョーカーを見る。


「随分と」


「奴隷を」


「気にされるのですね」


「…………」


「ですが」


「奴隷を使っているのは」


「東部だけではありません」


王が。


男を見る。


「王都でも」


「何十年も前から」


「使われてきた」


「今では」


「減ったそうですが」


「まだ」


「残っていますよね?」


「…………」


「他の地域にも」


「奴隷を使う土地はある」


男が。


笑う。


「なのに」


「なぜ今さら」


「東部だけを?」


「…………」


「我々が貧しかった頃には」


「誰も」


「気にしなかったのに」



別の代表が。


口を開く。


「それに」


「我々が」


「奴隷を解放すれば」


「誰が」


「鉱山で働くのです?」


「誰が」


「農地を耕すのです?」


「そして」


「彼ら自身も」


「明日から」


「どこで暮らし」


「何を食べる?」


「…………」


「自由にする」


「その一言で」


「終わる話ではありません」


王が。


窓の外を見る。


働く。


奴隷たち。


「…………」


「そうだな」


評議会の者たちが。


王を見る。


「余の国は」


「今まで」


「これを許してきた」


「東部だけを」


「責めることはできん」


「…………」


「だが」


王が。


評議会を見る。


「今まで」


「許してきたからといって」


「これからも」


「許す理由にはならん」


「…………」


「これは」


「東部だけではない」


「王国全体の」


「問題だ」



評議会を出る。


王と。


ジョーカー。


「珍しいな」


「何がでしょう?」


「随分と」


「静かではないか」


「…………」


ジョーカーが。


少し笑う。


「自分のことを」


「棚に上げて」


「皮肉を言うのは」


「得意なのですが」


「…………」


「国ごと」


「棚に上げるには」


「少々」


「重かったようです」


王が。


前を見る。


「ニア」


「はい」


「東部を」


「もう少し見るぞ」


「評議会ではなく」


「ここで暮らす」


「者たちをだ」


「…………」


「承知しました」


二人は。


東部の街へ。


歩いていった。

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