70話「王のいらない国」
王城。
会議室。
各地から。
報告が続く。
「南部の水路は」
「修繕が始まりました」
「西部への食料も」
「順次届いております」
王が。
頷く。
「東部は?」
「…………」
役人が。
書類を見る。
「特に」
「ありません」
「ない?」
「はい」
「支援の要請も」
「陳情も」
「届いておりません」
「…………」
王が。
首を傾げる。
「復興が」
「終わったのか?」
「いえ」
「そういうわけでは」
「ないのですが……」
◇
数日後。
東部へ送った。
役人が戻る。
「陛下」
「東部ですが」
「特に」
「問題はありませんでした」
「…………」
「どういうことだ?」
「壊れた橋は」
「近隣の村々が」
「人を出し合って」
「直しています」
「食料も」
「余っている村から」
「足りない村へ」
「融通しているようです」
「治安についても」
「各町が」
「人を出しています」
「…………」
王が。
少し笑う。
「なら」
「良いことではないか」
「王都から」
「何でも指示する必要はない」
ジョーカーが。
王を見る。
「随分と」
「立派なことを」
「言うようになりましたね」
「うるさい」
◇
役人が。
動かない。
「まだ」
「何かあるのか?」
「…………」
「王都から派遣した役人が」
「全員」
「戻されました」
「…………」
王の顔から。
笑みが消える。
「なぜだ?」
「必要ないと」
「言われたそうです」
「必要ない?」
「はい」
「自分たちのことは」
「自分たちで決めると」
「…………」
ダイヤが。
口を開く。
「税は?」
「今のところ」
「納められていません」
「軍は?」
スペードが。
尋ねる。
「兵を集めている様子は」
「ありません」
「武器も?」
「特には」
「…………」
スペードが。
腕を組む。
「反乱には」
「見えんな」
「はい」
「王国と戦う意思も」
「ないそうです」
王が。
眉をひそめる。
「では」
「何を要求している?」
「…………」
役人が。
答える。
「要求も」
「ありません」
「…………」
「王都に」
「何かをしてほしいとは」
「思っていないと」
◇
沈黙。
王が。
椅子にもたれる。
「ニア」
「はい」
「これは」
「何なのだ?」
ジョーカーが。
書類を取る。
「さて」
「反乱でしたら」
「分かりやすかったのですが」
「王を倒して」
「自分が王になる」
「…………」
「それなら」
「今までと」
「同じです」
王が。
ジョーカーを見る。
「だが」
「今回は違う?」
「ええ」
ジョーカーが。
笑う。
「彼らは」
「新しい王を」
「求めているのではありません」
「…………」
「王など」
「いらないと」
「言っているのです」
「…………」
王が。
黙る。
やがて。
立ち上がる。
「東部へ行く」
役人が。
驚く。
「陛下自らですか?」
「ああ」
「何も望まないという者に」
「何を望んでいるのか」
「王都で考えていても」
「分からん」
ジョーカーが。
笑う。
「お供いたしましょう」
「珍しいな」
「止めないのか?」
「ええ」
ジョーカーが。
帽子を直す。
「王のいらない場所へ」
「王が自ら向かう」
「…………」
「これほど」
「面白そうなものを」
「見逃す手は」
「ございませんので」




