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王の愚者  作者: クロワ
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70/105

70話「王のいらない国」

王城。


会議室。


各地から。


報告が続く。


「南部の水路は」


「修繕が始まりました」


「西部への食料も」


「順次届いております」


王が。


頷く。


「東部は?」


「…………」


役人が。


書類を見る。


「特に」


「ありません」


「ない?」


「はい」


「支援の要請も」


「陳情も」


「届いておりません」


「…………」


王が。


首を傾げる。


「復興が」


「終わったのか?」


「いえ」


「そういうわけでは」


「ないのですが……」



数日後。


東部へ送った。


役人が戻る。


「陛下」


「東部ですが」


「特に」


「問題はありませんでした」


「…………」


「どういうことだ?」


「壊れた橋は」


「近隣の村々が」


「人を出し合って」


「直しています」


「食料も」


「余っている村から」


「足りない村へ」


「融通しているようです」


「治安についても」


「各町が」


「人を出しています」


「…………」


王が。


少し笑う。


「なら」


「良いことではないか」


「王都から」


「何でも指示する必要はない」


ジョーカーが。


王を見る。


「随分と」


「立派なことを」


「言うようになりましたね」


「うるさい」



役人が。


動かない。


「まだ」


「何かあるのか?」


「…………」


「王都から派遣した役人が」


「全員」


「戻されました」


「…………」


王の顔から。


笑みが消える。


「なぜだ?」


「必要ないと」


「言われたそうです」


「必要ない?」


「はい」


「自分たちのことは」


「自分たちで決めると」


「…………」


ダイヤが。


口を開く。


「税は?」


「今のところ」


「納められていません」


「軍は?」


スペードが。


尋ねる。


「兵を集めている様子は」


「ありません」


「武器も?」


「特には」


「…………」


スペードが。


腕を組む。


「反乱には」


「見えんな」


「はい」


「王国と戦う意思も」


「ないそうです」


王が。


眉をひそめる。


「では」


「何を要求している?」


「…………」


役人が。


答える。


「要求も」


「ありません」


「…………」


「王都に」


「何かをしてほしいとは」


「思っていないと」



沈黙。


王が。


椅子にもたれる。


「ニア」


「はい」


「これは」


「何なのだ?」


ジョーカーが。


書類を取る。


「さて」


「反乱でしたら」


「分かりやすかったのですが」


「王を倒して」


「自分が王になる」


「…………」


「それなら」


「今までと」


「同じです」


王が。


ジョーカーを見る。


「だが」


「今回は違う?」


「ええ」


ジョーカーが。


笑う。


「彼らは」


「新しい王を」


「求めているのではありません」


「…………」


「王など」


「いらないと」


「言っているのです」


「…………」


王が。


黙る。


やがて。


立ち上がる。


「東部へ行く」


役人が。


驚く。


「陛下自らですか?」


「ああ」


「何も望まないという者に」


「何を望んでいるのか」


「王都で考えていても」


「分からん」


ジョーカーが。


笑う。


「お供いたしましょう」


「珍しいな」


「止めないのか?」


「ええ」


ジョーカーが。


帽子を直す。


「王のいらない場所へ」


「王が自ら向かう」


「…………」


「これほど」


「面白そうなものを」


「見逃す手は」


「ございませんので」

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