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王の愚者  作者: クロワ
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69/108

69話「神様の仕事」

大神殿。


長い。


人の列。


王と。


ジョーカーが。


その横を歩く。


「随分と」


「人が多いな」


「ええ」


ハートが。


答える。


「戦争が終わってから」


「また」


「増えまして」


◇


祭壇の前。


人々が。


次々と。


手を合わせる。


「今年こそ」


「豊作になりますように」


「商売が」


「上手くいきますように」


「娘に」


「良い縁がありますように」


「病気が」


「治りますように」


「…………」


王が。


人々を見る。


「皆」


「熱心なものだな」


「ええ」


ジョーカーが。


笑う。


「人は」


「困った時ほど」


「信心深くなるようです」


「…………」


「普段は」


「神様のことなど」


「忘れているのに」


「自分では」


「どうにもならなくなると」


「急に」


「思い出す」


王が。


ジョーカーを見る。


「随分と」


「都合がいいな」


「いえいえ」


ジョーカーが。


首を振る。


「神様も」


「喜んでおられるでしょう」


「なぜだ?」


「人が困らなくなれば」


「自分のことなど」


「誰も」


「思い出してくれませんから」


「…………」


ハートが。


ジョーカーを見る。


「ニア」


「ここが」


「神殿だということを」


「お忘れなく」


「もちろん」


ジョーカーが。


祭壇を見る。


「困った時だけは」


「思い出しております」


「…………」


◇


一人の男が。


強く。


手を合わせる。


「どうか」


「商売が」


「成功しますように」


王が。


小さく呟く。


「神に」


「頼むことなのか?」


「戦争中は」


「もっと凄かったですよ」


ジョーカーが。


笑う。


「勝たせてください」


「敵を倒してください」


「どうか」


「生きて帰してください」


「…………」


「人間が」


「自分で始めた戦争の」


「勝敗まで」


「神様のお仕事でした」


王が。


黙る。


ハートが。


口を開く。


「祈ることで」


「救われる者もいます」


「祈ること自体が」


「悪いわけではありません」


「もちろんです」


ジョーカーが。


頷く。


「願いが叶えば」


「神のおかげ」


「叶わなければ」


「神の試練」


「…………」


王が。


ジョーカーを見る。


「それでは」


「神は」


「絶対に間違えないな」


「ええ」


ジョーカーが。


笑う。


「間違いだったことに」


「しなければ」


「よろしいので」


「…………」


ハートが。


ため息をつく。


◇


夕暮れ。


人も。


少なくなった神殿。


一人の老人が。


祭壇の前へ。


静かに。


手を合わせる。


「…………」


やがて。


老人が。


立ち上がる。


ハートが。


声をかける。


「今日は」


「何を願われたのです?」


「何も」


「…………」


老人が。


笑う。


「息子が」


「戦争から」


「帰ってきましてな」


「今日は」


「お願いではなく」


「お礼を⋯」


老人が。


もう一度。


祭壇へ向かう。


「ありがとうございました」


深く。


頭を下げる。


そして。


神殿を出ていく。


「…………」


王が。


その背中を見る。


「ニア」


「はい」


「何も」


「言わないのか?」


「…………」


ジョーカーは。


祭壇を見る。


少しだけ。


笑った。


「ええ」


「今の方には」


「何も」

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