69話「神様の仕事」
大神殿。
長い。
人の列。
王と。
ジョーカーが。
その横を歩く。
「随分と」
「人が多いな」
「ええ」
ハートが。
答える。
「戦争が終わってから」
「また」
「増えまして」
◇
祭壇の前。
人々が。
次々と。
手を合わせる。
「今年こそ」
「豊作になりますように」
「商売が」
「上手くいきますように」
「娘に」
「良い縁がありますように」
「病気が」
「治りますように」
「…………」
王が。
人々を見る。
「皆」
「熱心なものだな」
「ええ」
ジョーカーが。
笑う。
「人は」
「困った時ほど」
「信心深くなるようです」
「…………」
「普段は」
「神様のことなど」
「忘れているのに」
「自分では」
「どうにもならなくなると」
「急に」
「思い出す」
王が。
ジョーカーを見る。
「随分と」
「都合がいいな」
「いえいえ」
ジョーカーが。
首を振る。
「神様も」
「喜んでおられるでしょう」
「なぜだ?」
「人が困らなくなれば」
「自分のことなど」
「誰も」
「思い出してくれませんから」
「…………」
ハートが。
ジョーカーを見る。
「ニア」
「ここが」
「神殿だということを」
「お忘れなく」
「もちろん」
ジョーカーが。
祭壇を見る。
「困った時だけは」
「思い出しております」
「…………」
◇
一人の男が。
強く。
手を合わせる。
「どうか」
「商売が」
「成功しますように」
王が。
小さく呟く。
「神に」
「頼むことなのか?」
「戦争中は」
「もっと凄かったですよ」
ジョーカーが。
笑う。
「勝たせてください」
「敵を倒してください」
「どうか」
「生きて帰してください」
「…………」
「人間が」
「自分で始めた戦争の」
「勝敗まで」
「神様のお仕事でした」
王が。
黙る。
ハートが。
口を開く。
「祈ることで」
「救われる者もいます」
「祈ること自体が」
「悪いわけではありません」
「もちろんです」
ジョーカーが。
頷く。
「願いが叶えば」
「神のおかげ」
「叶わなければ」
「神の試練」
「…………」
王が。
ジョーカーを見る。
「それでは」
「神は」
「絶対に間違えないな」
「ええ」
ジョーカーが。
笑う。
「間違いだったことに」
「しなければ」
「よろしいので」
「…………」
ハートが。
ため息をつく。
◇
夕暮れ。
人も。
少なくなった神殿。
一人の老人が。
祭壇の前へ。
静かに。
手を合わせる。
「…………」
やがて。
老人が。
立ち上がる。
ハートが。
声をかける。
「今日は」
「何を願われたのです?」
「何も」
「…………」
老人が。
笑う。
「息子が」
「戦争から」
「帰ってきましてな」
「今日は」
「お願いではなく」
「お礼を⋯」
老人が。
もう一度。
祭壇へ向かう。
「ありがとうございました」
深く。
頭を下げる。
そして。
神殿を出ていく。
「…………」
王が。
その背中を見る。
「ニア」
「はい」
「何も」
「言わないのか?」
「…………」
ジョーカーは。
祭壇を見る。
少しだけ。
笑った。
「ええ」
「今の方には」
「何も」




