68話「平和の値段」
王城。
財務室。
ダイヤが。
帳簿を眺めている。
「…………」
「陛下を」
「呼んでください」
◇
「金がない?」
「はい」
王の前に。
積まれる。
大量の帳簿。
「戦争の賠償」
「負傷兵への補償」
「遺族への補償」
「各地の復興」
「そして」
「先日の橋の修繕」
「…………」
王が。
帳簿を見る。
「戦争とは」
「終わってからも」
「金がかかるのだな」
「壊したものは」
「直さなければなりませんので」
ジョーカーが。
横から覗く。
「戦争中は」
「壊す方に」
「随分と使いましたからね」
「…………」
◇
ダイヤが。
別の書類を出す。
「問題はこちらです」
「北部の橋ですが」
「当初の見積もりより」
「費用が上がっています」
「なぜだ?」
「戦争の影響で」
「木材や鉄が」
「値上がりしています」
「…………」
王が。
数字を見る。
「高いな」
「ええ」
「この金額では」
「議会からも」
「反発が出るでしょう」
ジョーカーが。
首を傾げる。
「不思議ですね」
「何がだ?」
「戦争中は」
「これの何十倍もの金を」
「使っていたのに」
「誰も」
「高いとは」
「言いませんでした」
「…………」
「元々」
「高いと思っているものが」
「少しくらい高くなっても」
「気にならない」
「ですが」
「安いと思っていたものが」
「少し高くなると」
「途端に」
「高すぎると騒ぎ出す」
王が。
帳簿を見る。
「人とは」
「勝手なものだな」
「ええ」
ジョーカーが。
笑う。
「値段ではなく」
「思い込みと」
「比べておりますので」
「…………」
ダイヤが。
ため息をつく。
「皮肉で」
「橋は直りませんよ」
「残念です」
「私の得意分野なのですが」
◇
王が。
もう一度。
見積書を見る。
「橋は直す」
ダイヤが。
王を見る。
「よろしいので?」
「ああ」
「冬になれば」
「北部へ物資が届かなくなる」
「高くなったからと」
「放っておく方が」
「後で高くつく」
「…………」
ダイヤが。
頷く。
「では」
「そのように」
「それと」
王が。
帳簿を取る。
「王宮の支出を」
「もう一度見直せ」
「宴も」
「装飾も」
「今はいらん」
「承知しました」
ジョーカーが。
手を挙げる。
「念のため」
「確認なのですが」
「私のお給料は?」
「…………」
王が。
ジョーカーを見る。
「安いと思っていたものが」
「少し安くなっても」
「気にならんだろう?」
「…………」
ジョーカーが。
黙る。
ダイヤが。
小さく笑う。
「陛下も」
「皮肉が」
「お上手になられましたね」
「良い師がいるのでな」
「…………」
ジョーカーが。
ため息をつく。
「教育とは」
「恐ろしいものですね」




