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王の愚者  作者: クロワ
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67/108

67話「平和な悩み」

王城。


執務室。


山積みの。


書類。


王が。


一枚を手に取る。


「北部の橋が」


「壊れたか」


「はい」


ジョーカーが。


答える。


「冬までに」


「直さなければ」


「物資が届かんな」


王が。


次の書類を見る。


「南部は」


「水路の修繕……」


さらに。


次。


「西部では」


「食料不足」


「…………」


王が。


ため息をつく。


「戦争は」


「終わったのだよな?」


「ええ」


「では」


「なぜ」


「余の仕事は」


「増えている?」


ジョーカーが。


首を傾げる。


「当然では?」


「…………」


「戦争中は」


「壊すだけでしたから」


「直す方が」


「手間がかかるものです」


「…………」


「笑えんな」


「笑わせるつもりは」


「ございません」


◇


役人が。


入ってくる。


「陛下」


「北部の橋と」


「南部の水路」


「どちらを」


「優先いたしましょう」


王が。


地図を見る。


「北部だ」


「冬になれば」


「物資を運べなくなる」


「南部は」


「応急修理を」


「その間に」


「王都から西部へ」


「食料を回せ」


「ですが」


「王都の備蓄が」


「減ります」


「ああ」


「民が飢えている時に」


「倉庫を満たして」


「どうする」


「承知しました」


役人が。


頭を下げる。


◇


ジョーカーが。


王を見る。


「何だ」


「いえ」


「随分と」


「決断が早くなられたなと」


「余も」


「少しは学ぶ」


「それは」


「何よりです」


「…………」


「なぜ」


「残念そうなのだ」


「王様が悩まれませんと」


「私の仕事が」


「減りますので」


「お前は」


「余を悩ませるのが」


「仕事なのか?」


「今頃」


「お気づきで?」


「…………」


◇


王が。


次の書類を取る。


「今度は何だ」


「東部から」


「牛が逃げたそうです」


「…………」


王の手が。


止まる。


「牛?」


「はい」


「牛です」


「それも」


「余が考えるのか?」


「陳情が」


「届いておりますので」


「…………」


王が。


額を押さえる。


「橋」


「水路」


「食料」


「今度は牛か」


ジョーカーが。


笑う。


「良いことでは」


「ありませんか?」


「どこがだ」


「橋や」


「牛のことで」


「王様が悩める」


「…………」


「戦争中なら」


「それどころでは」


「ありませんでしたから」


王が。


少し黙る。


「……そうだな」


「ええ」


ジョーカーが。


山積みの書類を見る。


「物語でしたら」


「敵を倒せば」


「めでたし」


「めでたし」


「なのですが」


「…………」


王が。


次の書類を取る。


「現実は?」


「残念ながら」


ジョーカーが。


笑う。


「その後も」


「続くようですね」


「…………」


王が。


小さく笑う。


「次を寄越せ」


「はい」


ジョーカーが。


一枚。


差し出す。


「今度は」


「迷子の羊です」


「…………」


王が。


書類を受け取る。


「平和だな」


「ええ」


ジョーカーが。


笑う。


「実に」

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