67話「平和な悩み」
王城。
執務室。
山積みの。
書類。
王が。
一枚を手に取る。
「北部の橋が」
「壊れたか」
「はい」
ジョーカーが。
答える。
「冬までに」
「直さなければ」
「物資が届かんな」
王が。
次の書類を見る。
「南部は」
「水路の修繕……」
さらに。
次。
「西部では」
「食料不足」
「…………」
王が。
ため息をつく。
「戦争は」
「終わったのだよな?」
「ええ」
「では」
「なぜ」
「余の仕事は」
「増えている?」
ジョーカーが。
首を傾げる。
「当然では?」
「…………」
「戦争中は」
「壊すだけでしたから」
「直す方が」
「手間がかかるものです」
「…………」
「笑えんな」
「笑わせるつもりは」
「ございません」
◇
役人が。
入ってくる。
「陛下」
「北部の橋と」
「南部の水路」
「どちらを」
「優先いたしましょう」
王が。
地図を見る。
「北部だ」
「冬になれば」
「物資を運べなくなる」
「南部は」
「応急修理を」
「その間に」
「王都から西部へ」
「食料を回せ」
「ですが」
「王都の備蓄が」
「減ります」
「ああ」
「民が飢えている時に」
「倉庫を満たして」
「どうする」
「承知しました」
役人が。
頭を下げる。
◇
ジョーカーが。
王を見る。
「何だ」
「いえ」
「随分と」
「決断が早くなられたなと」
「余も」
「少しは学ぶ」
「それは」
「何よりです」
「…………」
「なぜ」
「残念そうなのだ」
「王様が悩まれませんと」
「私の仕事が」
「減りますので」
「お前は」
「余を悩ませるのが」
「仕事なのか?」
「今頃」
「お気づきで?」
「…………」
◇
王が。
次の書類を取る。
「今度は何だ」
「東部から」
「牛が逃げたそうです」
「…………」
王の手が。
止まる。
「牛?」
「はい」
「牛です」
「それも」
「余が考えるのか?」
「陳情が」
「届いておりますので」
「…………」
王が。
額を押さえる。
「橋」
「水路」
「食料」
「今度は牛か」
ジョーカーが。
笑う。
「良いことでは」
「ありませんか?」
「どこがだ」
「橋や」
「牛のことで」
「王様が悩める」
「…………」
「戦争中なら」
「それどころでは」
「ありませんでしたから」
王が。
少し黙る。
「……そうだな」
「ええ」
ジョーカーが。
山積みの書類を見る。
「物語でしたら」
「敵を倒せば」
「めでたし」
「めでたし」
「なのですが」
「…………」
王が。
次の書類を取る。
「現実は?」
「残念ながら」
ジョーカーが。
笑う。
「その後も」
「続くようですね」
「…………」
王が。
小さく笑う。
「次を寄越せ」
「はい」
ジョーカーが。
一枚。
差し出す。
「今度は」
「迷子の羊です」
「…………」
王が。
書類を受け取る。
「平和だな」
「ええ」
ジョーカーが。
笑う。
「実に」




