64話「帰る場所」
王城。
玉座の前。
王弟が。
剣を外す。
そして。
兄の前へ。
跪いた。
「兄上」
「約束通り」
「王位を」
「お返しします」
「…………」
王が。
弟を見る。
「本当に」
「いいんだな」
「ああ」
「この国の王は」
「私ではない」
王弟が。
顔を上げる。
「兄上だ」
「…………」
王は。
剣を受け取る。
再び。
王が。
王国へ戻った。
◇
その日の夕方。
王城を出る。
二人の姿があった。
王と。
ジョーカー。
「こちらへ来るのも」
「久しぶりですね」
「ああ」
森の中。
草木をかき分ける。
その先に。
古びた。
小さな小屋。
「…………」
王が。
足を止める。
「まだあったか」
「意外ですね」
「クラブが」
「何度も直していたからな」
「そうでしたね」
◇
――昔。
「おい!」
「ニア!」
「そっち持て!」
「重いです」
「男だろ!」
「あなたより」
「小さいんですよ」
「二人とも!」
幼い王が。
笑っている。
三人で。
木を運ぶ。
三人で。
壁を作る。
三人で。
秘密基地を作った。
◇
小屋の隣。
新しい墓が。
一つ。
建っている。
そこに。
刻まれた。
クラブの名。
王が。
墓の前へ座る。
「…………」
「結局」
「お前が」
「一番先だったな」
ジョーカーも。
隣へ座る。
「昔から」
「せっかちな方でしたから」
「そうだったな」
「…………」
風が。
木々を揺らす。
王が。
秘密基地を見る。
「ここでは」
「誰が王になるとか」
「そんな話」
「しなかったな」
「ええ」
「…………」
「三人とも」
「馬鹿なことしか」
「しておりませんでした」
王が。
少し笑う。
「戻れたらな」
「…………」
ジョーカーが。
墓を見る。
「戻れませんよ」
「分かっている」
「ですので」
ジョーカーが。
立ち上がる。
「帰りましょう」
王も。
立ち上がる。
「ああ」
「また来る」
二人が。
歩き出す。
墓だけが。
秘密基地の隣に。
残った。
◇
翌日。
王城。
大広間。
そこには。
王弟がいた。
剣も。
王冠も。
ない。
ただ一人の。
罪人として。
「王弟殿下」
「…………」
「王位簒奪」
「国王暗殺未遂」
「反逆」
「そして」
「大国との戦争」
次々と。
罪状が。
読み上げられる。
王弟は。
何も言わない。
傍聴する者たちの中には。
家族を失った者もいる。
「死刑にしろ……」
小さな声。
「息子を返せ……」
王弟が。
僅かに。
目を伏せる。
やがて。
問われる。
「以上の罪について」
「異議はありますか」
「…………」
王弟が。
顔を上げる。
玉座には。
兄がいる。
その隣には。
ジョーカー。
「ない」
「すべて」
「私がやったことだ」
「…………」
王が。
弟を見る。
兄としてではなく。
王として。
そして。
裁判が。
始まった。




