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王の愚者  作者: クロワ
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63/104

63話「敗者の意地」

大国軍。


陣営。


二騎の馬が。


近づいてくる。


「止まれ!」


兵士たちが。


槍を構える。


「…………」


「王弟……?」


「なぜここに……」


王弟が。


馬を降りる。


その隣に。


ガレス。


「将軍に」


「伝えてくれ」


「戦争を」


「終わらせに来た」



天幕。


大国の将軍が。


王弟を見る。


「まさか」


「自分から戻ってくるとはな」


「…………」


「何の用だ」


「停戦を」


「申し入れたい」


「降伏か?」


「ああ」


王弟が。


まっすぐ。


将軍を見る。


「王国の敗北を」


「認める」


「占領した土地は」


「すべて返還する」


「賠償にも」


「応じる」


「…………」


将軍が。


口を開く。


「王国軍の」


「武装解除もだ」


「それは」


「受け入れられない」


「…………」


空気が。


変わる。


「敗者が」


「条件を選べると?」


「思っていない」


「だが」


「国を守る力まで」


「手放すつもりはない」


「…………」


王弟が。


続ける。


「私は」


「力を求めすぎた」


「強ければ」


「国を守れると」


「そう思っていた」


「…………」


「その結果」


「多くの者を」


「死なせた」


王弟が。


拳を握る。


「だが」


「国を守る力まで」


「必要ないとは」


「今でも思わない」


「…………」


将軍は。


黙っている。


「この戦争を」


「始めたのは」


「私だ」


「責任が必要なら」


「私が取る」


「捕らえるなら」


「構わない」


「殺すというなら」


「それも受け入れる」


「…………」


ガレスが。


黙って。


王弟を見る。


「ただし」


王弟が。


顔を上げる。


「兵と」


「民の安全は」


「保証してくれ」


「そして」


「王国の武装解除は」


「受け入れられない」


「…………」


長い。


沈黙。


将軍が。


王弟を見る。


国を奪い。


戦争を始め。


自分たちに敗れ。


捕虜となり。


それでも。


自ら戻ってきた男。


「…………」


「自分の命より」


「国の武器か」


「ああ」


「私が死ぬだけなら」


「一人で済む」


「だが」


「国が弱くなれば」


「次に死ぬのは」


「私ではない」


「…………」


将軍が。


小さく笑う。


「敗者のくせに」


「随分と」


「注文が多いな」


「すまない」


「だが」


「譲れない」


「…………」


将軍が。


目を閉じる。


この戦争で。


大国もまた。


多くの兵を失った。


そして。


目の前の敗者は。


逃げずに。


戻ってきた。


「…………」


「いいだろう」


王弟が。


顔を上げる。


「停戦を」


「受け入れる」


「武装解除も」


「求めない」


「…………」


「二度と」


「我が国へ」


「攻め込むな」


王弟が。


深く。


頭を下げる。


「ああ」


「約束する」



天幕を出る。


王弟と。


ガレス。


しばらく。


二人は。


黙って歩く。


「…………」


ガレスが。


口を開く。


「終わったな」


王弟が。


足を止める。


振り返る。


かつて。


勝つために。


進み続けた道。


「…………」


「ああ」


王弟が。


前を向く。


「帰ろう」


「おう」


二人は。


歩き出した。


勝って。


終わらせることは。


できなかった。


だから。


負けることで。


終わらせた。

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